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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第2階層―GREEN―
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ニートな女神と初めての守護者

守護者と書いてガーディアンと読む。

『草原の守護者』のクエストは最大で6人パーティで挑むことができるらしい。

 6人で挑むことができるというのは、つまり6人いてもクリアできるかどうかという難易度のクエストだということのようにも思えるけど、少なくともそんなクエストにソロで挑もうなんていう愚か者はいないはずだ。私を除いて。

 しかしそんな私もなにも自ら愚か者になりたいわけじゃない。このクエストをより安全にクリアできる方法があるというならもちろん私だってそっちを選ぶ。つまりはパーティを組むことだ。


「えっと、その話をする前にナポリさんたちはギルドに何の用があったんですか?」


 私がナポリさんの質問に質問で返すと、どうやらナポリさんたちは沼地のモンスター討伐や素材採集のギルドクエストを受けて、それをクリアしたので今戻ってきたところなのだという。

 なるほど、それでマッドゴーレムを倒した話をしていたのか。


「あ、じゃあ先に受付で報告を済ませてきてからでいいですよ。私は、ギルドの二階で待ってるんで」

「わかったわ。ほら課長、行きましょう」

「ああ、そういうことなら」


 そうして麺類トリオがギルドの受付でクエストの報告と報酬を受け取っている間に私はギルドの2階の歓談スペースへと足を運ぶ。

 階段を上ったところから少し離れたところにある4人かけのテーブル席を見つけるとその席の1つに座って3人が上がってくるのを待った。

 そうして報酬を受け取り終わった3人が2階へ上がってきたところで私は3人を手招きして呼んだ。


「あ、こっちです」


 3人は私を見つけると私の元へやってきて残った3つの椅子にそれぞれ腰を降ろした。


「へえ、2階ってこんな風になってたんだ」

「そういや俺たち1度もここ使ったことなかったな」


 どうやら麺類トリオの3人はギルド2階の歓談スペースに来たのは初めてだったよう。

 そういえば私も第1階層の始まりの街の冒険者ギルドの2階には行ったことあるけどもこの街のギルドの2階スペースに来たのは今が初めてだったな。

 私はそこでふと2階フロアを見渡したが、私たち以外にも何組かのパーティや、あるいは単なるプレイヤー同士が何やら話をしているのが見えた。

 この歓談スペースのテーブルと椅子には実は特殊な仕組みが施されていて、テーブルを囲んで椅子に座った状態だとそこでのプレイヤー同士の会話は周囲のプレイヤーに聞こえなくなるらしい。

 だから重要な秘密などについて話をする際も、それを関係のないプレイヤーに盗み聞きされる恐れはないとのこと。


「誰かさんのせいで事前に作戦とか何も立てずに行きあたりばったりで攻略してるせいでね」


 ナポリさんがそう言うとパス太はそしらぬ顔をしてそれを無視した。

 おいおい、いきなり喧嘩はやめてくれよ。


「まあ、いいけど。……あ、ごめんね玲愛ちゃん。それでさっきの話なんだけど。……あれ、さっき私何の話してたんだっけ?」

「この子が攻略どこまで進んだのか、だろ?」

「ああ、そうそう。そうだった。それで玲愛ちゃんの方はどうなの?、もうダンジョン攻略に突入した?」


 ナポリさんがそう聞いてきたのは普通は序盤の階層は迷宮のボスを倒したらすぐに次の階層へどんどん進んでいくプレイヤーが多いからこそのものなんだろう。

 だから私がすでに第2階層の迷宮のボスを倒したと言った時には驚かれた。


「ええ!?、もうボス倒しちゃったの?」

「あ、はい」

「そう……でもそれでまだこの階層に留まっているってことは、えっと、今日ここにいたことも含めるとクエスト巡りでもやっているってところかしら?」

「はい、そうです。あの、実は私……あ、今から私が話すことはあの、竜鱗の乙女の正体が私であるということと同じで他言無用でお願いしたいのですけど」


 そう前置きしてしてから私はパス太たちに告げた。

 私が第1階層の始まりの街にあった冒険者ギルドのクエストは、ギルドクエストと住人クエストの両方ともすべてクリアしてクエストコンプリートしているということ。

 そして第2階層のこのフローリアの街の冒険者ギルドで受けられるクエストについても、ギルドクエストの方についてはもう全部1度はクリアしたこと。


「「「え!?」」」


 いや、うん。まあそう反応も予想通りだったんだけどね。

 3人はそれぞれ衝撃を受けたのちにまず絶句、そしてそこからの質問ラッシュ。

 取り分け第1階層のあのボスクエスト、『カラスの群れとゴミの山』もクリアしたということについてはかなり詳しく突っ込まれたので、私もできる限り覚えている範囲内でそのことについては詳しく教えた。 その他のクエストについてもいくつか質問があったけどそれにも全部丁寧に答えた。


「あ、ごめんなさいね。質問攻めにしちゃって」


 そして質問がなくなったところでようやく我に返ったナポリさんがそう言うと、ペペさんとパス太も同様に謝罪してきた。私はそれについてはもちろん許した。だって普通はそうなるだろうからね。


「いえ、別に大丈夫です。それでですね、さっき言わなかったことでこの階層の住人クエストの方なんですけども」


 私がそう口を開くとペペさんがうなずいてそれに答えた。


「ああ、ギルドクエストの方は全部クリアしたと聞いたが。ということは住人クエストはまだ全部クリアしていないということだな」

「ええ、その通りです。とは言ってもその……」

「む?、なんだ?」

「いえ、この階層の住人クエストで私がクリアしていないのは後1つだけなんですけど」


 私がそう言ったら3人はまたフリーズした。ああ、もう。早く回復してくれ。

 本題を話す前に先に言っておいた方がいいかなと思ったから言ったけどこれは裏目に出たかな。

 そこから回復した3人にまたこの階層の住人クエスト、特に私がすでにクリアした2つのボスクエストについての質問が来ると思っていたら来なかった。

 いや、きっと質問したいのは山々だったんだろうけどもう第1階層のクエストのこととかについて散々質問攻めにして、しかもたった今そのことを謝ってくれたばかりだったからね。さすがにその直後にまた質問攻めとかは、ないよね。


「えっと、ちょっと待ってくれよ。一旦落ち着こう。……えー、あー、うん。そうだね。今聞いた話が本当か嘘かということはひとまず置いておこう。それでその話をなぜ今僕たちに?」


 パス太が珍しくリーダーらしさを発揮して話を先に促してくれた。グッジョブ、パス太。


「えっと、はい。それでここからが本題と言うか、少し皆さんにお願いしたいことがあって」


 私がそう言うとそこで勘の鋭いペペさんが私の言葉を遮って言った。


「ちょっと待て。そのお願いっていうのはもしかしてまた前みたいにパーティを組むって話か?」

「え、どうしてわかったんですか?」

「いや、今の話の流れからしてもしかするとと思ってな。その、先に1つ聞きたいんだが君がまだクリアしていないっていうこの階層の住人クエストって……」


 おお、本当に鋭いなペペさんは。その通りだよ。


「はい。クエスト名は『草原の守護者』。この階層の最高難易度のクエストで、かつボスクエストですね」


 私がそう答えるとそこでナポリさんもパス太もようやく理解したらしい。私のお願いがなんであるのかということが。


「えーっと、それってつまりあれよね。そのクエストをクリアするのが1人じゃ無理そうだから私たちの力を借りたいっていう?」


 ナポリさんの的確な質問に私は首を縦に振った。


「あ、もちろん無理なら断ってくれていいです。ただ、引き受けてくれるのでしたらたとえクエストが失敗に終わったとしても相応の対価はお支払いしますし、それにクエスト中のアイテム支援も」


 私は慌ててそう付け加えたけどナポリさん、そしてペペさんとパス太の2人もそれぞれ難しい顔をして考え込んでしまった。うーん、やっぱりダメかな?


「あの……」


 私がさらに何かを言おうと口を開きかけたところでパス太が驚きの一言を発した。


「うん、よし。やろう」


 ……え?


「やろうって、課長!?」

「いや、この階層で最高難易度のクエストなんてもしクリアできたら僕たちの名前も他のプレイヤーたちに広まって会社の良い宣伝になるかもしれないし」


 あ、一応会社の宣伝とか本気でやってたんだ。

 私はてっきりそういう口実を作ってただゲームで遊んでるだけだと思ってた。


「ですが課長、クリアできる保証はどこにもないんですよ?」


 自分から誘っておいて難だけど、ペペさんのいうことは至極まっとうな意見だと思う。


「大丈夫だよ。玲愛さんが一緒なんだから。だって玲愛さんはつまりこの階層の他のボスクエストはもうクリアしているだよね?」

「はい」

「ほら、それなら大丈夫だって。アイテム支援もしてくれるって言ってくれてるんだし」


 ほう、パス太はずいぶん私のことを買ってくれてくれているようみたいだな。

 まあ前回、クイーンビーに挑む際に耐麻痺の指輪を貸して上げたしな。でも、そういえば私アイテム支援するとか言っちゃったけど今回のクエストでは何を支援すればいいんだろうか。

『草原の守護者』クエストで登場するクエストボスのことについて私は何も知らないから現段階で支援できそうなものといえばちょっと性能のいいポーションと聖水くらいのものなんだけど。


「でも課長、噂に聞くところによるとそのクエストに出るクエストボス、この階層の迷宮ボスよりも強いって話ですよ?、そりゃあ玲愛ちゃんはもう迷宮ボスも倒してるから良いだろうけど、私たちが玲愛ちゃんと一緒に戦ったところで足手まといになるだけなんじゃないですか?」


 うん、ナポリさん、それ私の方も思ったよ。

 果たしてパス太たちは今の私と一緒にパーティを組んでクエストボスに挑んだ時に戦力になるのかという疑念ね。でも、そこは実際にやってみないとわからない部分だしな。


「うーん、たしかに言われてみるとそうか。でも、せっかく玲愛さんの方から誘ってくれてるから僕はこの話、受けてもいいと思うんだけど。別に事前に銀行にお金預けておけばこのゲーム内でモンスターにやられて死ぬことのデメリットってそこまでないし」


 おお、パス太お前今いいこと言ったぞ。


「うーーーーん、まあ、それもそうね。……うん、わかった。それなら私も賛成にするわ。ただし挑むのは1回だけね。まあどのくらい善戦できるかにもよるけど1回やってみてそれでボスに手も足も出ずにコテンパンにやられてしまうようならそこでおしまい。それでいい?」

「はい。それはもちろんです」


 よし、これでナポリさんの賛同も得られた。残るはペペさんだ。


「俺も2人が賛成したのなら別に断る理由もない、が。そうだな、それなら先に交換条件というわけでもないが君に1つだけ聞きたいことがあるんだが、いいか?」


 うん?、聞きたいことってなんだろうか。


「はい。全然大丈夫です。どうぞ」

「ああいや、今回のこのクエストに関わることではなくてだな。その、俺の勘違いかもしれないんだが」

「なあにペペさん。嫌にもったいつけるわね」


 そうだよ、なんかその言い方だとこの後とんでもない質問が来そうで怖くなるよ。


「ああいや、じゃあ聞くが。君の今その身に着けている装備は、どこで入手したんだ?」

「え?」

「俺は武器屋に行った時には、自分が装備しないであろう武器や防具についても一応売ってるものは全部一通り目を通すんだ。それに普段から街ですれ違う他のプレイヤーの装備とかもよく見ているからわかるんだが、君が今身に着けてるその、黄緑色のマントとフードは見たことがない」


 お、おおお。さすがだな。

 いや、私も東也に似たようなこと言われたから気づく奴はいるんだろうとは思っていたけど。


「それでさっき君がすでに第2階層の迷宮のボスを倒したという話を聞いて納得してしまったというか。君はその、あのドラゴンもソロで撃破しただろう?、だからもしかしてと思ってだな」


 ここまで勘が鋭いともはや探偵とかやれるレベルなんじゃないだろうか。

 でも、どうしよう。ここで下手に嘘をついたり誤魔化してもペペさんには見破られそうだし、これから一緒にパーティ組んでクエストやる前にメンバーに嘘つくとか絶対に空気悪くなりそうだし。

 あれ、もしかしてだからこそこのタイミングでその質問してきたわけ?

 私が絶対に嘘とかつかず正直に答えるだろうことを見越して?


 ……いや、怖いわ!


 怖い、けどももう時すでに遅しか。ここはもう言ってしまっていいだろう。


「はい。ペペさんのお察しの通りです。今私が着てるこの装備は……」


 その後で3人がまたフリーズしたことは言うまでもないだろう。

 もはや伝統芸となりつつあるな、それ。

 ああ、それともちろんそのことについても、私が第2階層の迷宮ボスであるマダムバタフライもドラゴン同様にソロで撃破したという事実は他言無用にお願いしておいた。


 けれども、プレイヤーの中にはやっぱりペペさんのように勘の鋭い人がいて、そういうプレイヤーにはたとえ何の変哲もない無地の黄緑色のマントとフードであっても見ただけでそれがレアな装備品であるということはばれる可能性があるんだな。

 この階層にペペさんと同じくらい洞察力に優れたプレイヤーがどのくらいいるのかは知らないけども、この分だとまたすぐにばれて噂が広がるのも時間の問題かもしれない。


 ああ、嫌だな。これで竜鱗の乙女の他にもう1つ別の通り名とか付いたりしたら本当に嫌だ。

 これからはやっぱり街中では別の、カモフラージュ用のいたって普通の装備をつけることにしようかな。事実他のプレイヤーもそうしてる人は少なくないって聞くし。

 だけどもフィールドに出て街に入ったりする度に装備品の変更するのってだるいんだよね。


「……はぁ。早く先の階層に行きたい」


 第5階層あたりになってくると、プレイヤーの見た目や装備などにも徐々に変化が見られ始めるという話も聞いたけど、そこまで行くのはまだまだ遠いよ。


 おっと、話が脱線してしまったか。

 それでその後のことだけど、私たちは4人、席を立つなりそのままギルドの1階へと降りてギルドの住人掲示板に貼ってあった『草原の守護者』の依頼書を手に取った。

 そして私と麺類トリオはその場でパーティ登録を済ませてからギルドの受付へ。

 そうしてパス太、ナポリたん、ペペロンチーノ、私での4人パーティが『草原の守護者』のクエストに挑戦することになったわけだ。


「クエストの始まりは依頼主に会って話を聞いてからだから、その前に各自で装備やアイテムの準備とかしておこう。だから、30分後にまたギルド前に集まろう」


 パス太のその提案によって私たちは1度解散した。


 で、私の方の準備はもうすでに整っていたのだけど問題はやはり他の3人の方だろう。

 おそらく麺類トリオの3人の現在のレベルは前聞いた時から少し上がってると仮定しても16か17、良くて18くらいだろうか。

 対して私のレベルは今26で、しかも各種チートなスキルが搭載されている。

 やはり私と他の3人との間には強さに差がある。それが実際のクエストでの戦闘にどこまで影響を及ぼすのかはわからないけど不安材料はできるだけ少なくしたいところ。


 いや、最悪3人が少々足を引っ張ったとしてもクエストボスとの戦いで全員が死ぬことなく無事にクエストを終えられるなら私としては良いほうだと思う。ではそのために私には何ができるか?


「あー、やっぱりアイテム支援だろうな。でも回復アイテムを渡すだけじゃちょっと心もとないし。って考えるとやっぱりあれが一番かな」


 私は1つのアイテムに当たりをつけると街の北東門へと向かった。目指すのははもちろん沼地だ。


 ――それから30分後――


 私は目的のアイテムを2つ手に入れるとそこで急いで街へと戻った。

 そうして冒険者ギルドの前までやってくると時間はちょうど解散してから30分後というところで他の3人はもう集まっていた。


「あ、来た来た。玲愛ちゃーん!」


 私は3人の姿を見つけるなり駆け足で3人の元へ向かった。


「遅かったわね。そんなに準備するものがあったの?」

「ああ、まあ、はい」


 私はナポリさんの質問には適当にそう返した。いや、まあそれについては詳しく話していたらまた3人がフリーズしてしまう可能性もあったからね。


「よし、全員揃ったようだしそれじゃあさっそく依頼主のところに話を聞きに行こうか。確認なんだけど皆もうこのクエストは受けるってことでいいね?」


 パス太の最終確認に私たちは全員頷いた。


「よし。じゃあ行こう」


 そしてパス太を先頭にして私たちのボスクエスト攻略は今始まった。

 あ、ちなみにパス太が先頭なのはこの4人パーティのリーダーがパス太だから、という理由ではもちろんなく単にいつものノリだった。

 別に頼まれたのなら私がリーダーでも良かったんだけど、というか普通はパーティで一番強いプレイヤーがリーダーを務めるものなのだろうけどね。私は麺類トリオの3人パーティに入れさせてもらっている扱いだからそれも当然だろう。

 戦闘に関しては前回のクイーンビー戦と同じように私は基本自由に攻撃や援護をしていいと言われたのでそれで行くことに。まあボスの攻撃方法や状況に応じて臨機応変に対応するつもりだ。


 それでまず私たち4人はこのボスクエストの依頼主であるフローリアの街の牧草地帯フィールドへ通じる西門のすぐ近くにある家に住んでいる依頼人のおじいさんの元へ。

 以下、そのおじいさんから聞いた話の簡単なまとめ。


 その昔、この第2階層の地にはある強大な力を持った魔物が暴れまわっていた。

 しかしある時、守護者と呼ばれる存在がどこからともなくこの地に現れると、暴れまわっていた魔物を見事に仕留めた。しかし完全に魔物の魂を鎮めることができず、最終的に守護者はその身と引き換えに魔物をこの地に封印することにした。

 それからこの地に平和が訪れたが、残された当時の人々は守護者への感謝の気持ちを忘れないように牧草地帯のある場所に石碑を建てて守護者を奉った。

 ちなみに石碑のある場所は守護者が魔物の魂を封じ込めた場所の真上らしい。


 うん、それだけでもうなんとなく私たちは想像がついたんだけどね。今回のクエストの内容に。


 おじいさんの話の続き。


 しかし最近になってその守護者の石碑というのが理由はわからないが壊れてしまった。

 するとどういうわけかその石碑の周囲に強い魔物(=モンスター)が大量に出現するようになって牧草地帯を荒らしまわっているという。

 このままだと牧草地帯にある牧場や、このフローリアの街にも重大な被害が出るかもしれないのでその大量に発生したモンスターの殲滅と、発生した原因の調査が今回の主なクエスト内容。


「うーん、それはまあ十中八九あれよね。その昔の封印とやらが弱まってるみたいな感じの?」

「ああ、きっとその守護者を奉った石碑というのが壊れた影響だろうな」

「僕はてっきりこのクエストのボスは守護者って呼ばれてるモンスターなんだと思ってたけど、話を聞く限りだとそうでもないのかな?」


 麺類トリオはおじいさんの話を聞いて口々にそう言ったけど私もまあ同意見だ。

 おそらくはこのクエストのクエストボスというのはその昔暴れまわっていたという強大な力を持った魔物なんだろうな、ということは簡単に予想がつく。

 そしてそのボス戦の前にまず、牧草地帯で大量発生したというモンスターを倒す必要があるのだろうということも。


「ちなみにおじいさん。その、昔に封印されたっていう魔物について、何か詳しいことは知っていますか?、その、見た目とか特徴とか」


 私が依頼主のおじいさん(名前はセイジュさん)に尋ねるとセイジュさんは首を横に振ってからこう答えた。


「いいえ。魔物の方については詳しいことは何も」


 うん?、魔物の方については?


「えっと、じゃあ守護者って呼ばれた存在については詳しく知っているんですか?」


 私がさらにそう尋ねたらセイジュさんは今度は首を縦に振って教えてくれた。


「はい。それならば知っております。なんでも守護者様は、上半身は人間だったようなのですが下半身が馬のものだったと、それと弓の名手であったとも伝えられています」

「え?、それって……」


 あれ、私それ聞いたことあるぞ。たしか前に下界の神話を調べていた時にどっかの神話に登場してた。

 えっと、たしか名前は……


「ケンタウルス。半人半馬で弓矢の扱いが上手いっていうギリシャ神話に登場する怪物ね」


 ナポリさんがそう言ったことで私も思い出した。そうだ、ケンタウルスだ。

 12星座のうちの1つ、いて座の姿がたしかその怪物の姿だったんだよな。


実は階層毎の最難関と呼ばれるボスクエストに登場するボスモンスターは、全部下界(現実世界)の神話や各地の伝承等に登場する怪物です。

第1階層のボスクエスト『カラスの群れとゴミの山』に登場したヤタガラスも、元は日本神話に登場する怪物であるということは、ヤタガラスのモンスター紹介欄にも書きました。

そして今話の本編内最後に明らかになったケンタウルスというのもまたギリシャ神話に登場する怪物であると説明しましたが、『草原の守護者』クエストのクエストボスはケンタウルスではありません。

しかしクエストボスもまた神話に登場するモンスターなので何が出てくるかご注目ください。

……なお筆者はそのボスについて個人的にはヤタガラスよりも強いのではないかと考えています。

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