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ニートな女神がログインしました。  作者: 唯一信
第1階層―始まりの街―
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ニートな女神と初めての旅立ち

もう1話分欲しかった。しかしそうすると逆に書くことが足りなくなる可能性が高かった。

という思いを感じ取ってくれた方、まさにその通りです。

 店の奥から戻ってきたおじさんの手には分厚い紙の束があった。

 そして説明。まず、この始まりの街にはプレイヤーが購入できる物件は15件ほどあるという。

 おじさんはまずこの街の全体図が書かれた地図をカウンターの上に広げて見せてくれた。


「物件を購入するにあたって、多くの方は場所を重要視されます」

「場所?」

「はい。たとえば、よく岩場のフィールドに行くという方はこの街の北門の近くにあるこの物件。あるいはよくクエストをこなすという方は冒険者ギルドの近くにある物件、など」

「なるほど、つまり冒険の拠点としての家ってことですか?」

「ええ、そういうことになります」


 ふむ。まあゲーム攻略を一番に考えていたりするプレイヤーはたしかにそういう条件で選ぶものもいるだろうか。


「あとは、お値段。部屋数と広さ。窓の配置やそこから見える景色なども、重要視される方が多いです」

「それはまあ、現実世界の物件探しと同じか。あ、じゃあ値段は?」

「はい。お高いものからお安いものまで。ただ、やはり高い物件の方が色々と好条件ではあります」

「この街で、一番高くて良い物件だといくらですか?」

「それですと、ええっと。これですね」


 と、不動産屋のおじさんが見せてきた一枚の紙きれにはその物件の情報が書かれていた。

 その物件はこの街のほぼ中央よりにあって部屋数は3つだが1つはすごく広い。

 窓もたくさんあって光も差し込むだろうし景色もいいと言う。


 VRゲーム内では、排泄の必要がないのでトイレは存在しないが。

 しかし風呂とシャワーがついているのはリアリティーの追求かあるいは趣味嗜好の問題か。


 それで、問題のお値段だが5万ゴールドだった。あれ、意外と安いのか?

 なんて思うのはすでに私が銀行に預けている分と合わせても20万ゴールド以上のお金を持っているからで、この街のプレイヤーでそれほどの金を持っている者はまずいないだろう。

 半分、いやその10分の1である2万ゴールドでも十分に金持ちな方だと思うし。


 そして、私が逆に一番安い物件はと聞くとなんと5000ゴールドだった。

 場所はこの街の最も南端、南門のすぐ近くで部屋は1つで狭いしおまけに窓が1つしかない。

 さらにはその窓も、向かいに別の建物があるために光もさしこまず完全に不良物件だった。


「値段も条件もピンキリ、か」

「実際にその物件まで行ってお部屋の中などを見て回ることも可能ですが」

「内覧ね。うーん。……いや、今日はいいです」

「そうですか。……わかりました。ではまた何かあればぜひお越しになってください」

「はい。そうします」


 うん。まあおそらくだけどもうここには2度と来ないと思うな。

 というか私は、最初からこの街に家を買うつもりなんてなかった。

 いや別にこの街が悪いってわけじゃないんだよ。ただ、まだ第1階層だし、これから先の階層がどんなところでどんな街があって。それを見てから考えてもいいと思ってるだけであって。

 そうだな、本格的に家を買うのは第4階層を突破してからでもいいかも。

 第5階層まで行くと、プレイヤーの持てる家の数が2つまでになるらしいから、そうなった時に1つどこかそれまでの階層で訪れた街の中で気に入ったところに家を買ってみるくらいの気持ちで。

 別にゲームの攻略上、プレイヤーが絶対に家を購入する必要もないわけだし。


 私は色々と教えてくれた不動産屋のおじさんにお礼を言うと店を出た。


「でも、この街って始まりの街って言うだけあってとくに何もないんだよね。景色も悪くはないけどそこまで……」


 最も安い物件であっても5000Gもする。ゲーム序盤では大金だろう。普通のプレイヤーからしたら私のようにお金があるプレイヤーでもやっぱり即決でこの街に家を買うことは少ないはず。

 そう考えるとあの不動産屋。大丈夫なんだろうか、その、生計とか色々。


 これはこの先の階層もそうらしいのだが基本的に不動産屋は1つの街に1つしかない。

 それは、そもそも家なんて頻繁に買い替えるものでもないし値段も高いために滅多ににプレイヤーが買いに訪れることもないから店にプレイヤーが押し寄せて混むということもないだろうと見越した上でのことらしかったけど。


「さて、お次は道具屋に行って昨日手に入れたのとこれまでの素材アイテムを売って」


 あ、そうだ。素材アイテムと言えば。あのドラゴンを倒した時の報酬の金の宝箱の中にもなんか色々と入ってたんだよね。

 えっと、竜の鱗×30。竜の爪×10。竜の牙×10。竜の角×5……か。

 うん、これはまあきっと貴重な素材アイテムだろうし、売ったら高そうだけど売るのはやめておこう。

 にしても、装備品の方はドラゴン〇〇だったのに、素材アイテムの方は竜の〇〇っていう名前なのもちょっと不思議だなとは思ったんだけど。


 ――それから1時間後――


 私はアルムとジェシーの親子で経営している道具屋へと行き素材アイテムの売却を済ませた。

 この第1階層で手に入るドロップ品の中で売値が一番高いのは実はただのゴブリンが落とす銅貨袋だったりして、1個100Gで売れるのはやはりそれが店に売って金に換える用のアイテムだからか。

 きっとこの先の階層では、銀貨袋とか金貨袋とかいうアイテムを落とすモンスターもいてそれらのアイテムはさらに高額で売れるのだろう。


 そして私はアルムとジェシーの2人にもいったんのお別れを言った。

 2人ももう慣れているようで寂しそうな顔をしてはいるようだったが笑顔で送り出してくれた。

 ただ、最後にアルムさんが。


「あ、そうだ。この前買ってくれたお店キットなんだけど。まだ在庫が残ってるんだ。あと何セットか買って行かない?」

「いえ、1つで十分です」


 というか、きっとお店を開いて売る商品を売ることのできるアイテムって、この先の階層にもっといいやつが絶対にあるだろう。

 あんなブルーシートと木の看板のセットじゃなくもっとちゃんとしたやつが。

 それを手に入れたらここで買ったお店キットは捨てるかなんて考えていた私にとって、最後の申し出を受け入れるわけはなく。


「そうか、それは残念だ」


 そんなことを言ったアルムさんに私は何も言えなかった。

 うん、もうおそらくあのお店キットをこの店に買いにくるプレイヤーはいないと思うので在庫も全部処分していいんじゃないでしょうか、という言葉は飲み込んだ。


「じゃあ、またいつかこの街に戻ってきた時は、ここにも来ます」

「ええ、その時はまたよろしくね。お元気で!」

「はい」


 と、最後にジェシーさんと言葉を交わすと私は道具屋を出た。

 そして私はそのまま冒険者ギルドへ向かった。


 ギルドにたどりつくと私はまず銀行に行ってお金を預けた。

 12万ゴールドを預けて預金金額はこれで22万ゴールド。多分だけど第2階層に行っても第2階層にある街で一番良い不動産物件でも即決で買えるだけの金額ではあるだろう。まあ買わないけどね。

 でもきっと買えない物はほとんどないに違いない。

 銀行の受付のお姉さんももはや何も言わずに冷静かつ淡々と受付してくれた。

 一応念のためにこの銀行で預けたお金は先の階層の銀行でも引き落とせるのですよねと確認してみたら、ええそうですよ。ご心配なくと言われたので安心した私。


 冒険者ギルドの方の受付のお姉さんは……まあ、あの人には別れの挨拶とか別にしなくてもいいか。

 お世話になったと言うほどのこともないし、そもそも私はこの街のギルドで受けられるクエストは全制覇したのでもうこの場所に来ることは、絶対とは言えないけどないだろうからね。


 さて、これでこの街でやるべきことはもう全部やったと思う。

 それでこれから岩場を抜けて迷宮ダンジョンの入り口へ行き、神殿内のワープゲートからあのボス部屋の中に戻ってそこにある青色のワープゲートに入ればもう第2階層だ。


 だけど、私はその前に最後に草原フィールドへと向かった。

 この第1階層なら、草原フィールドが一番のお気に入りっていうのは前にも言ったっけ?

 しばらくは来ることもないだろうから最後にちょっとね。


 <第1階層:草原>


 それで私はその草原で思いもよらぬ人物と遭遇することになった。

 それは草原に出てから歩いて10分ほどのところ。何もないところでただ一心不乱に剣を振っていたプレイヤーを見つけ、よく見たらそれはローズだった。

 私は、まだ朝早いこの時間帯にたった一人でログインしてこんなところで何をしているのかと思ったのだがよく考えれば見てわかる通り、剣の稽古だろう。


「あら、もしかして玲愛さんですか?」

「あ、うん。おはよう、ローズ」

「おはようございます。朝、お早いんですね」

「いや、うんまあ。今日はちょっと早く起きちゃったから。そっちこそ」

「私も同じです。なんだか早くに目が覚めてしまって」

「それで、ゲームの中で剣の素振りを?」

「ええ。寮内では一応中庭もあるんですけど。朝早くにはちょっと、ね」


 ああ、まあそうだろうか。

 それで誰かが起きてしまったらさすがに悪いと。でも、ということは朝以外なら現実でも割と剣術の練習をしてるということなんだろう。


「李ちゃんから聞いたよ。ローズは剣道部なんだって?」

「まあ、李ったら。勝手に私のことを話したんですか?」

「え、ああうん。ちょっとだけね。リアルでの学校、部活の話になって」

「それにしても、ゲーム内でリアルのことを、しかも他人のリアルをべらべらと話すなんて」

「あー、まあそれについては同意だけど」


 たしかに私も、誰かに勝手にそれされたら怒るかもしれない。個人情報だしね。


「他には何か聞きましたか?」

「あ、うん。ローズは本当はフェンシングがしたいって話は聞いた。それだけ」

「そうですか。これは起きたらきつく叱っておかなければなりませんね」

「いや、やめてあげてよ。せめて、軽い注意くらいにしてあげて。私も、本当はだめだと思いつつも色々聞いちゃったからさ」

「あら、そうなんですか。それならばまあ今回のことはそこまで咎めないことにしておきましょう。相手は玲愛さんだったようですし」

「うん。私だけ」


 そしてローズと私は、2人で草原の草の上に腰をおろした。


「それにしても、玲愛さん。いつ李とそんな話をしたんですか?」

「つい昨日のことだよ。それでPVP、えと、決闘のやりかたを教えてもらったんだ」

「あら、それじゃあ李と戦ったんですか?」

「うん。1戦だけ」

「勝敗は……きくまでもありませんね」

「いや、まあ。うん」


 その言い方だとちょっと李ちゃんがかわいそうな気もするけど。

 そりゃあ私が勝ちはしたけど、でも李ちゃんだって十分強かったと思うし。

 とくにVITがすごい高い私に防御無視の貫通攻撃を当てて来た時には焦った。

 あるいは私があのまま何もできずに攻撃を受け続けていたら私が負けている可能性もあったんだし。


「李は、どうでしたか。あの、玲愛さんから見て強かったですか?」

「うん。とても。私も初めての決闘だったって言うのもあったけど李ちゃんは普通に強かったよ。苦戦させられた」

「そう…………ですか」


 私がそう言うとローズは少しの間だけ黙り込んで何かを考えているようだった。

 そしていきなり立ち上がったかと思うと私に向ってこう言ってきた。


「玲愛さん。では、今。私とも決闘をしていただけませんか?」

「え?」

「私も、実はあなたと一対一で戦ってみたかったんです。同じ、剣士として」

「剣士って。うん、まあ時間はまだあるからいいけど。そっちは大丈夫なの?」

「大丈夫です。それに、あまりお時間はとらせません。5分で済みますわ」

「え?」

「決闘に制限時間を設けるのです。5分。それまでに決着がつかなければ引き分け」

「ああ、うん。それならいいよ」


 ということで私はその後でローズから申請された決闘を受けた。

 そしてその決闘のルールについてだがそれが驚きのものだった。


 まずは制限時間は5分。それは今ローズが説明してくれた通りだった。

 そして、お互いに魔法およびスキルの使用を全面的に禁止とある。これはつまりローズは、私と純粋に剣での打ち合いを申し込んできているという意味で間違いはない。

 決闘の種類は初撃決闘。つまり最初に相手に一太刀を浴びせた方が勝ちという、まさに剣術の試合形式のものだった。

 ただ、ローズはさらにそこで盾の装備も禁止してきた。これは他の要素は一切なしに剣だけで試合をしたいというローズの思いを明確に表していた。


「……わかったよ。剣だけで戦おうってことね」

「ええ」

「ただ、先に言っておくけど私はローズと違って剣道なんてやってないし、剣を握ったのもこのゲームが初めてだよ?」

「ええ」

「……そう、それでも私と戦いたいのね」


 私はローズが定めた条件をすべて飲んだ上で決闘を受けた。

 ただ、きっとこの条件での戦いなら私は負けるだろうと思った。

 私の剣の動きは、最近洗練されてきたとはいえまだまだ初心者のそれだ。

 素人とは呼べないレベルであってもリアルの剣道の経験者に勝てるとは到底思えない。

 しかし、ローズだってそんなことは承知の上のはず。今だって確認したし。

 それでも私と戦いと言うのはきっとローズなりに何か考えがあってのことなんだろう。

 私はその考えはまるで見当もつかなかったけれど、でも別に付き合ってあげる分にはとくに異論はなかった。


「お互いに、全力を出し切って」

「わかってるよ。ここまでされて手を抜いたりはしないから安心して」


 そしてローズは決闘開始のボタンを押した。決闘開始までは15秒。

 その間に私たちは20メートルほどの距離を開けて剣を構える。

 私は剣を白金の剣に変えたおいた。ドラゴンソードは少しだけリーチが短い剣だったから。

 私たちはお互いの顔を見つめあいながら決闘開始の合図を待つ。


 全力で、と言ったからにはローズももちろん技とか出し惜しみもせずに使ってくるだろう。

 ゲーム上の、スキルとしての剣技ではなく純粋に剣術の動作としての技を。

 それに私がどこまで対応できるかがこの決闘の重要なところだ、と私は思う。


 そしてついに、私とローズの決闘が始まった。

 視界の右端には制限時間を示すカウントが5分から1秒ずつ減っていく。

 それ以外は通常の冒険、戦闘となんら変わりはない。


「行きますよ!」

「おう!」


 と言って、ローズがまず私に向ってくる。

 私はその場を動かずに剣を構えて待っているのだけど、しかし。


「(あれ?)」


 私はそこでローズの動きが思っていたほど速くはないことに気づいた。

 少なくとも、昨日戦った李ちゃんよりは遅い。きっとローズは、レベルアップで手に入れたスキルポイントを敏捷にはあまり多く割り振ってないのかもしれない。

 ローズはあのパーティでの前衛であり敵の攻撃を引き付ける壁役だからそれも無理はないのかもしれない。


 さらに、もとから私の方がレベルが上でありそこに装備品の効果が上乗せされている。

 なのでたとえスキルを全部禁止された状態でも私の方がまだ速い。

 そして剣同志の戦いに置いては速さとは力以上に重きを置かれる要素でありつまりは……


 キーン!、ズバシャ!


 勝負は一瞬で終わった。ローズの一太刀目を私は難なく受け止めるとそれを弾き返し、そしてそのままローズの胴体に向って剣をひと薙ぎしてそれが命中した。

 初撃決闘であるためその時点で決闘は私の勝ちでありよって決闘は終わった。

 あまりにもあっけないその結果に私は何も言えなかった。え、もう終わり?

 後に残されたのはなんとも言えない表情をした私と、そして負けたのにどこか満足そうに納得した顔をしているローズだった。


「見事でした。なるほど、まさかここまでの開きがあったなんて」

「え、でも今のは」

「わかってます。私はただ、知りたかっただけです。このゲームの中での、レベル。そして敏捷の値がどれだけの意味をなすものなのかを」

「それじゃあ」

「もちろん。レベルが上でおそらく敏捷の値も上である玲愛さんに、あえてこの決闘を挑んだ意味はそれだけというわけではないです。ただ、もう少し頑張れるかななんて、思ってはいたんですけど」

「その、なんかごめんね」


 私はそう言って悲しそうな顔をしたローズにそう言うと、ローズは首を横に振った。


「いえ、謝らないで下さい。最初にお互い全力でと言ったのは私ですし。だから玲愛さんも手を抜かずに私に反撃してきたのでしょう」

「うん、そうだけど」

「それに、私はやっぱり速さはあまり追求しない方が良いと思いましたし」

「え、なんで?」

「ふふふ。私たちのパーティでは私は前衛で、壁役だからです。もちろん速さを全面的に捨てるわけではないですけど、素早い敵には李が対応してくれますから」

「そっか。お互いちゃんとフォローし合っているんだね」

「ええ。たまに李とマロンが暴走するので私とラフィアは苦労しっぱなしですけどなんとか」

「ふふふ。なんとなくそれ、わかる気がする」


 そうして、それからはローズとお互いのことについて色々話した。

 ローズは、実は小学生の時はフェンシングを習っていたということ。

 しかし中学に上がってローズ達の通う学校には剣道部はあったがフェンシング部はなかったこと。

 そして、寮に入ったためそれまで習っていたフェンシングもやめてしまったので、代わりに剣道部に入ったはいいが、最初はフェンシングの癖が抜けなくて大変だったことなど、主にローズの話を聞いていただけだったけど。


 私はそんなローズにリアルのことなどもちろん言えるはずもないので、今までのゲーム中で得た情報などを提供してあげた。始まりの街には数量原点だけど装飾品を売っている隠れた名店と言われる武器屋があることとその場所。その店は他の武器屋よりも良い武器が売っていることを教えたら素直に喜ばれて今度パーティメンバー全員で行ってみることにしますと言われた。


「そういえば玲愛さん。さっきお会いした時にも気づきましたがその装備……」

「ああ、うん。前のやつから変えたんだ」

「とても強そうな装備ですね」

「強いよ。強すぎてなんかもう装備の実力に私がついていけてないと思うくらい」


 だって物理攻撃で受けるダメージを半分にしてくれるってどう考えてもチートだからね。

 だけど、この先また新しい装備に変えた時がちょっと怖いんだよな。この装備に慣れていたせいで逆に敵の攻撃を甘く見て大ダメージを受けたりしそうだから。私の場合は。


「あの、もし差し支えなければでいいのですけど。その装備はどうやって?」

「あー、うん。実は私さ、もうこの階層のダンジョンを突破したんだ。それでまあ、ボスを倒したら報酬に宝箱が出てきて。それでその中に入ってた」

「え、じゃあもしかしてもう第2階層に行くんですか?」

「うん。今日この後にね。あ、でもまだローズ達に先払いでもらった代金分のアイテムは納入してないから連絡をもらえればそれを渡すためにこっちに戻ってくるけど」

「あ、はい。…………そう、ですね」


 私は、昨日は李ちゃんに言わなかった情報をローズには教えた。

 理由は、まあなんとなく。ローズはリーダーだし、なんとなくローズなら言っても大丈夫かなって思ったんだ。

 そしてその後も少しだけ話をした後でローズが、では私はこれでと言ってその場でログアウトした。

 ローズは、最後に私に第2階層の攻略を頑張って下さいと言ってきたけれど、私はそれに少しばかりの悲しみというか、そんなのを感じた。

 きっと、私とローズ達の間にあるレベル的、実力的な差を改めて聞かされたからだと思うのだけどこればかりはもうどうしようもない。

 なので私もローズに、そっちも頑張ってねとしか言えなかった。ただ、最後にローズと握手を交わして、ローズは何も言わなかったけれどその握手からはいつか必ず追いついてみせるからその時は本当に一緒にパーティを組んで戦いましょうという思いが感じ取れた。

 だから私はそれを受けてローズの顔を見ると無言で大きく頷いた。


 そうしてローズはログアウトして草原には私だけが残された。

 最後に、ローズと会って話して戦えたことは良かったことのように思う。


「さて、それじゃあ行きますか」


 草原から始まりの街に戻って、岩場を抜けて迷宮の入り口である神殿へ。

 神殿内の緑色のワープゲートを通ってボス部屋へと戻ってきた。そして今、私は第2階層へと続く青いワープゲートに向かって一歩を踏み出したのだった。


 私の冒険はまだまだ始まったばかりだ。


第1階層編はこれにて本当に終了となります。

が、次回は1話分だけ本編のこれまでの内容を整理するために第1階層編で玲愛が取得したスキルと魔法などの一覧表を作る……予定でした。


が、しかしその前になんとさらに1話分使ってゴッドワールド・オンラインというゲームについてのこれまでの本編内で説明した設定や、RPGゲーム初心者の方のための用語解説等をするためのものを入れたいと思います。

これには本編内のゲームシステムについての補足説明な意味合いのものですので、そんなことはもう知っている、今さらかよ、という方は飛ばしてくれて全然オーケーです。


というか、その後の玲愛のスキル一覧についても記憶力に自信がある方なら読み飛ばしてくれてもまったく問題はないのですが。


ただ、というわけですので本編の内容が再開するのに少しだけ間が空きます。

本編の内容的に次回は、まず第2階層の最初のフィールドから始まります。

そこで登場する新しいモンスター、新しい街、新しい人物との出会い等、まだまだこの物語は盛りだくさんで更新していくのでどうぞご期待下さい。

あ、もちろん神界でのアストレアの生活にもピックアップしていきますのでそれもよろしく。


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