贅沢をしようと街へ出た
第7話「宇宙人の贅沢」
岡根財団・ロビー。
銀色のスーツを着た人物は、深々と一礼した。
「初めまして。」
スタッフは恐る恐る尋ねる。
「……宇宙人ですか?」
「はい。」
「え、認めるんですか。」
「はい。」
「もっと隠してくださいよ!」
男は名刺を差し出した。
銀河連邦観光局 営業二課
スタッフが二度見する。
「営業!?」
「はい。」
「宇宙にも営業あるの!?」
「ノルマもあります。」
「夢がない!」
審査室。
AI岡根が腕を組む。
「名前は?」
「ゼータ星人、ガルムです。」
「年齢は?」
「地球換算で四百十二歳。」
「見た目三十代なのに!?」
「睡眠をよく取ります。」
後ろで修が小さくガッツポーズをした。
「睡眠派が増えた。」
岡根が本題を聞く。
「君の贅沢は?」
ガルムは即答した。
「何もしませんでした。」
「またそのタイプ!?」
スタッフが叫ぶ。
「説明してください!」
ガルムはモニターに映像を映す。
そこには銀河中を飛び回る宇宙船。
毎秒、何億もの仕事。
「私は観光局員です。」
「忙しそうだな。」
「四百年間、休みゼロです。」
「ブラック企業じゃないか!」
「先月、初めて一週間休みました。」
「それが贅沢?」
「はい。」
「何をした?」
ガルムは少し照れくさそうに答えた。
「……昼まで寝ました。」
修が立ち上がる。
「同志!」
「同志!」
二人は固い握手を交わした。
スタッフがツッコむ。
「寝るだけで国際交流しないでください!」
その頃、SNSでは異変が起きていた。
「#史上最高の贅沢」
トレンド一位。
しかし投稿内容は……
「今日はスマホを三時間見ませんでした。」
「家族とご飯を食べました。」
「昼寝しました。」
「散歩しました。」
スタッフが驚く。
「みんな急に質素になってます!」
岡根は笑う。
「面白い。」
「金持ちが派手になって、一般人が地味になると思っていた。」
「逆でしたね。」
一方。
世界一の浪費家・神崎レオンは悩んでいた。
「俺、本当に欲しいものって何だ……。」
執事が聞く。
「新しい島をご購入になりますか?」
「いらない。」
「ではジェット機を。」
「いらない。」
「お城は?」
「掃除が大変。」
執事はメモを閉じた。
「坊っちゃまが正常になってきました。」
その夜。
修の部屋。
ピンポーン。
ドアを開けると……
ガルムが立っていた。
「こんばんは。」
「宇宙人!」
「眠れません。」
「なんで俺ん家に来たの!?」
「昼寝のコツを教えてください。」
「弟子入り!?」
修は少し考え、
「まず、スマホを遠くに置きます。」
ガルムは真剣にメモを取る。
「なるほど……。」
「次に、カーテンを閉めます。」
「なるほど……。」
「最後に。」
「はい!」
「考えるのをやめます。」
ガルムは感動した。
「地球には哲学がある!」
「いや、ただ眠いだけです。」
翌朝。
ガルムは人生……いや、宇宙人生で初めて八時間熟睡した。
「最高だ……。」
その顔を見た岡根は、大笑いした。
「君は一週間の休暇を、一秒も無駄にしなかったようだな!」
すると突然、財団本部の大型モニターに赤い警告が表示された。
【緊急速報】
「岡根タマルの隠し遺産が発見されました。」
スタッフ全員が凍りつく。
「隠し遺産!?」
岡根本人も目を丸くする。
「えっ?」
「私も知らない。」
スタッフ全員。
「知らないんかーい!」
第8話へ続く。




