表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
史上最高の贅沢  作者: 諏訪貴信


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/10

贅沢をせずに何をする

第4話「プロ無職、現る」


岡根財団・特別審査室。


ジャージ姿の老人は、堂々と椅子に腰掛けた。


「名前は?」


「田村ゴロウ、七十八歳。」


「職業は?」


「プロ無職。」


「だからその職業は何なんです!」


受付嬢のツッコミは、もはや反射神経だった。


AI岡根が興味深そうに聞く。


「五十年間、働かなかったと言ったな。」


「うむ。」


「生活は?」


「畑。」


「はい?」


「近所のおすそ分け。」


「はい?」


「町内会。」


「はい?」


「犬の散歩。」


「仕事じゃないんですか?」


「頼まれただけじゃ。」


「働いてるじゃないですか!」


老人は首を振る。


「違う。」


「?」


「困ってる人がおったから手伝っただけじゃ。」


スタッフ全員が黙った。


「収入は?」


「ゼロ。」


「年金は?」


「最低限。」


「趣味は?」


「昼寝。」


「佐々木修とキャラかぶってる!」


その頃。


修はコンビニでアイスを買っていた。


「百十円です。」


財布を見る。


小銭がない。


「……贅沢しよう。」


店員が期待する。


「一万円札ですね?」


「いえ。」


修は静かに言った。


「百五十円のアイスにします。」


「四十円!」


「人生初の四十円贅沢です。」


「スケール小さっ!」


ニュース速報。


『佐々木修、四十円の贅沢』


SNSは大炎上。


「共感できる。」


「わかる。」


「むしろ好感度上がった。」


「俺も今日やる。」


財団スタッフは頭を抱えた。


「全国で高いアイスが売り切れてます!」


岡根は吹き出した。


「経済効果が出てるじゃないか。」


その頃、別の応募者。


「百億円で金のトイレットペーパーを作りました!」


岡根。


「使った?」


「もったいなくて使えません。」


「贅沢失格。」


「えぇ!?」


「使わない贅沢は、ただの展示品だ。」


スタッフが集計する。


「現在の人気ランキングです!」


1位 佐々木修(四十円アイス)


2位 プロ無職


3位 三兆円離婚


「世界おかしくなってません?」


岡根は静かに笑う。


「ようやく"金額"から離れ始めた。」


その日の夜。


修のアパート。


ピンポーン。


ドアを開けると、スーツ姿の男女が十人。


「佐々木修さんですね。」


「はい。」


「本日から密着取材です。」


「え。」


「二十四時間です。」


「え?」


「寝顔も撮ります。」


「帰ってください。」


「スポンサーが…」


「帰ってください。」


バタン。


修は鍵を閉めた。


布団に潜る。


「……静かに寝るのも贅沢なんだよな。」


その一言を、ドアの外で偶然聞いていたAI岡根の移動端末が、ピコンと光った。


「……ほう。」


初めて、岡根の評価欄に一つだけ印が付く。


◎「静けさを守る贅沢」


スタッフがざわつく。


「初評価だ!」


「ついに審査が動き始めた!」


その瞬間、財団本部のエレベーターが開く。


現れたのは、真っ白なタキシードを着た青年だった。


「初めまして。」


彼は優雅に一礼する。


「私は世界一の浪費家です。」


スタッフが顔を見合わせる。


「……嫌な予感しかしない。」


青年はにっこり笑って言った。


「今朝だけで、一兆円使ってきました。」


AI岡根は身を乗り出した。


「そのレシート、見せてもらおうか。」


第5話へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ