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史上最高の贅沢  作者: 諏訪貴信


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贅沢をするために生まれてきた

第3話「世界一高い離婚」


岡根財団・受付。


女性はサングラスを外し、胸を張った。


「応募します。」


受付嬢が書類を見る。


「お名前は?」


「九条レイカ。」


「職業は?」


「元・世界一のお嫁さんです。」


「そんな職業あるんですか?」


「昨日までありました。」


審査室。


AI岡根が質問する。


「君の贅沢は?」


レイカは涼しい顔で答えた。


「離婚です。」


スタッフ全員が同時にメモを止めた。


「理由をどうぞ。」


「慰謝料として三兆円を払いました。」


「払ったの!?」


「はい。」


「もらう側じゃなくて!?」


「夫が好きだったので。」


「意味が分からない!」


レイカは続ける。


「彼は普通の教師でした。」


「ほう。」


「私と結婚してから毎日テレビ、雑誌、SNS。」


「うん。」


「自由がなくなってしまった。」


「……。」


「だから自由を買ってあげました。」


スタッフが少しだけ感動しかける。


しかし。


「なお彼は慰謝料を全部返そうとしてます。」


「え?」


「受け取り拒否です。」


「なんで!?」


「『そんな金いらないから普通に友達でいよう』って。」


シーン……


AI岡根が笑った。


「面白い男だ。」


その頃。


世界ではさらにカオスになっていた。


ニュース速報。


『富豪、南極に温泉旅館を建設』


岡根。


「寒そう。」


「いや温泉ですよ!」


「外が寒い。」


「そこ!?」


別の富豪。


「私はオーロラを買いました。」


「どうやって?」


「スポンサーになりました。」


「所有権は?」


「ありません。」


「帰れ。」


さらに。


「世界一高い猫カフェを作りました!」


「猫は?」


「一匹です。」


「店員の方が多い!」


岡根財団のスタッフは疲弊していた。


「応募件数……」


「何件?」


「五百万件です。」


「増えすぎ!」


「AIでも処理しきれません!」


岡根は腕を組む。


「私もAIなんだけど。」


「あなたも限界あるんですね!」


その夜。


修は相変わらず寝ていた。


スマホが鳴る。


財団からの通知。


『二次審査進出、おめでとうございます。』


修は画面を見て五秒考えた。


「……あとで見よう。」


そのまま寝た。


翌朝。


スタッフ会議。


「佐々木修さんが通知を未読のまま十五時間経過しています。」


「えぇ!?」


「普通、飛び起きますよね?」


AI岡根は静かに笑った。


「……彼は本当に寝ることを優先している。」


スタッフが頭を抱える。


「この大会、一番やる気がない人が一番有力候補なんですけど!」


そのとき、財団の自動ドアが開いた。


「失礼します。」


現れたのは、ボサボサ頭にジャージ姿の老人。


受付嬢が尋ねる。


「応募ですか?」


老人はうなずいた。


「史上最高の贅沢をしてきた。」


「どんな贅沢です?」


老人は真顔で答えた。


「五十年間、一度も働かなかった。」


受付嬢は思わず叫んだ。


「それ、ただの無職です!」


老人は胸を張る。


「違う。プロ無職じゃ。」


財団の奥から、AI岡根の大笑いが響いた。


第4話へ続く。

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