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史上最高の贅沢  作者: 諏訪貴信


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16/18

贅沢は三日で飽きる

第16話「恋愛疑惑と贅沢裁判」


翌朝。


ニュース速報。


『世界一の大富豪と世界第二位の富豪、熱愛か!?』


キャンプ場に静寂が流れる。


岡根が画面を見つめる。


「……誰だ。」


マリアも画面を見つめる。


「……誰でしょうね。」


テレビでは昨日の映像が繰り返されていた。


『違う!』


『違う!』


二人が同時に叫ぶシーン。


コメンテーター。


「息がぴったりですね。」


別のコメンテーター。


「長年連れ添った夫婦のようです。」


岡根。


「編集が悪い!」


スタッフ。


「素材は本物です。」


SNSでは、


#岡根マリア結婚


が世界一位。


ひまりがスマホを見せる。


「すごいよ!」


修がのぞき込む。


「ファンアートまである……。」


ガルムが首をかしげる。


「まだ結婚していないのに?」


スタッフ。


「インターネットは早いんです。」


そこへ、財団の顧問弁護士が現れた。


「失礼します。」


全員が振り返る。


「法律上、確認したいことがあります。」


岡根。


「何だ?」


「もし、お二人が結婚された場合……。」


マリア。


「しません。」


「まだ最後まで聞いてください。」


「はい。」


「財産はどうなりますか?」


スタッフ全員が興味津々。


弁護士は計算を始める。


「岡根家の資産と天城家の資産を合算すると……。」


電卓がエラーを出した。


Error


弁護士。


「計算できません。」


スタッフ。


「電卓が負けた!」


一方その頃。


神崎レオンは真剣な顔をしていた。


「この騒ぎ……。」


修。


「どうした?」


「贅沢選手権の趣旨から外れてきてません?」


全員が黙る。


確かにそうだった。


最近は、


恋愛疑惑。


送金ミス。


宇宙人。


熊太郎。


話題ばかりが先行している。


岡根は焚き火の前に立った。


「諸君。」


全員が集まる。


「ここで一つ、特別審査を行う。」


スタッフ。


「今度は何です?」


岡根はホワイトボードを出す。


そこには大きく書かれていた。


『贅沢裁判』


修が読む。


「裁判?」


「そう。」


「被告は誰です?」


岡根は自分を指差した。


「私。」


「え?」


「私が、本当に贅沢な人生を送ったのか。」


キャンプ場が静まり返る。


「今日は全員が裁判官だ。」


マリアが笑う。


「面白い。」


神崎もうなずく。


「被告が自分。」


ゴロウ。


「初めて見る裁判じゃ。」


ガルムは宇宙タブレットを開く。


「銀河法にも前例がありません。」


岡根は椅子に座る。


「では始めよう。」


修が手を挙げた。


「質問です。」


「どうぞ。」


「岡根さん。」


「うん。」


「人生、楽しかったですか?」


岡根は即答できなかった。


初めてだった。


世界中を動かした男が、言葉に詰まったのは。


笑いの絶えないキャンプ場に、静かな風が吹き抜ける。


マリアはその横顔を見つめ、学生時代のことを思い出していた。


「あなた、昔からそうだった。」


「?」


「人を勝たせるのは得意なのに、自分が幸せかどうかは後回し。」


岡根は苦笑した。


「……バレてたか。」


ひまりが小さく手を挙げる。


「はい!」


「どうした?」


「難しいことは分からないけど。」


「うん。」


「岡根さん、今は楽しそう!」


その一言で、場の空気がふっと和らぐ。


岡根は大笑いした。


「はっはっは!」


「そうか!」


「私は死んでからの方が笑っているじゃないか!」


スタッフ全員も笑い出す。


修が肩をすくめる。


「すごい人生ですね。」


そのとき、AI秘書が静かに告げた。


「残り期間まで、あと七日。」


笑い声が少しだけ止まる。


相続レースも、いよいよ終盤へ。


そして岡根は静かに立ち上がった。


「よし。」


「最後の審査を始めよう。」


全員が息をのむ。


「テーマは――」


岡根はゆっくりと笑った。


「『誰かを、心から笑顔にしろ。』」


賞金も、点数もない。


ただ、その笑顔だけを見て岡根が最後の相続人を決める。


修は思わずつぶやいた。


「……これ、一番難しいかもしれない。」


最終章・第17話「最後の贅沢」へ続く。

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