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史上最高の贅沢  作者: 諏訪貴信


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14/18

贅沢もできないこんな世の中は

第14話「経理、大パニック!」


岡根財団・経理室。


電話。


電話。


電話。


電話。


プルルルルルル!!


経理担当・丸山は、すでに魂が半分抜けていた。


「はい、岡根財団です……。」


「え? 十万円が振り込まれた?」


「はい、間違いです……。」


「え? もう使った?」


「……はい?」


全国で大混乱。


ある人は冷蔵庫を買った。


ある人は母親を旅行へ連れて行った。


ある学生は大学の学費を払った。


ある夫婦は十年間我慢していた結婚指輪を買った。


丸山は頭を抱えた。


「返してくださいとも言えない……。」


岡根はニュースを眺めて笑っていた。


「面白い。」


丸山が叫ぶ。


「どこがですか!」


「人間は突然お金を渡されると、本性が出る。」


「経理の本性は泣きそうです!」


修たちもニュースを見ていた。


神崎レオン。


「返金してもらいます?」


修は首を振る。


「もう生活のために使った人もいる。」


ゴロウもうなずく。


「返せと言われても困る人もおる。」


ひまりが聞く。


「じゃあ、どうするの?」


誰も答えられなかった。


そのとき。


AI岡根が立ち上がる。


「私が責任を取る。」


スタッフ全員が注目する。


「不足分は。」


「はい。」


「私の財産から補填する。」


丸山が安心した、その瞬間。


「……あ。」


「どうしました?」


「それ全部、相続予定だった。」


シーン……


スタッフ。


「自分のお金じゃない!」


岡根。


「しまった。」


その日の夜。


世界中のSNSでは、


#岡根財団ありがとう


というハッシュタグが一位になっていた。


「助かりました。」


「学費が払えた。」


「母が泣いて喜びました。」


「人生で一番ありがたい間違い。」


丸山はスマホを見ながら涙ぐむ。


「怒ってる人……いませんね。」


岡根は静かに言った。


「失敗が、人を幸せにすることもある。」


すると、財団のAIシステムが突然しゃべり始めた。


「報告します。」


スタッフ。


「どうした?」


「今回の送金ミスにより。」


「うん。」


「全国の幸福度が0.003%上昇しました。」


「そんな機能あるの!?」


「さらに。」


「まだある?」


「経済効果、約二十三億円。」


神崎が笑う。


「十万円って、回るんですね。」


岡根は腕を組む。


「金は、貯めるより巡った方が面白い。」


そのとき。


キャンプ場の空に、大きなヘリコプターが現れた。


ババババババ……


全員が見上げる。


ヘリからスーツ姿の女性が降りてくる。


秘書が驚いた。


「あなたは……!」


女性は名刺を差し出した。


『世界富豪ランキング 第2位』


全員が息をのむ。


女性は岡根を見て微笑んだ。


「初めまして。」


「私は、生前の岡根タマルさんに、一度だけ勝った女です。」


岡根のAIが、初めて少しだけ真剣な表情になる。


「……君が来たか。」


スタッフがざわつく。


「知り合いなんですか?」


女性は静かに言った。


「ええ。」


「私も、この相続レースに参加します。」


修が思わずつぶやく。


「今さら!?」


女性は不敵に笑う。


「本当の勝負は、ここからですよ。」


キャンプ場に、今までとは違う緊張感が流れた。


第15話「世界第2位の女」へ続く。

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