贅沢をするは我にあり
第13話「十万円の使い道」
朝九時。
キャンプ場。
スタッフが参加者全員に封筒を配る。
「中に十万円入っています。」
修は封筒を持って固まる。
「現金って、こんなに重かったっけ……。」
神崎レオンは笑う。
「僕には軽すぎる金額ですね。」
ゴロウが横から一言。
「わしには人生で一番重い。」
神崎は何も言えなくなった。
AI岡根がルールを説明する。
「制限時間は夕方五時。」
「はい。」
「自分のために使うのは禁止。」
「はい。」
「寄付だけでもダメ。」
「え?」
「考えろ。」
「急に難しくなった!」
修の場合
修は町へ下りた。
駅前。
ベンチで困っている老夫婦。
「どうしました?」
「スマホが壊れて、バスの乗り方が分からなくてね。」
修は二時間かけて目的地まで案内した。
帰り道。
「……まだ一円も使ってない。」
スタッフが隠れてメモする。
「時間だけ使ってる。」
神崎の場合
「十万円なんて半端だな……。」
悩んだ末、商店街へ。
古びたおもちゃ屋に入る。
「全部ください。」
店主が驚く。
「全部!?」
神崎は首を振る。
「違います。」
「?」
「今日来た子ども全員に、好きなおもちゃを一つずつ。」
店主は目を丸くした。
昼過ぎ。
店は子どもたちの笑い声でいっぱいになった。
神崎も一緒に遊んでいる。
スタッフ。
「本人が一番楽しそう。」
ゴロウの場合
ゴロウは市場へ。
大量の野菜を買う。
「今日は炊き出しじゃ。」
近所のお年寄りが集まる。
「またゴロウさんの豚汁だ!」
「無料!?」
「今日は岡根さんのおごりじゃ。」
スタッフ。
「勝手にスポンサー名を使わないでください。」
ガルムの場合
宇宙人ガルムは本屋にいた。
「子ども向け図鑑を十冊ください。」
店員が聞く。
「プレゼントですか?」
「はい。」
「なぜ図鑑を?」
ガルムは真顔で答えた。
「宇宙へ持ち帰るので。」
「え?」
「地球の子どもたちが何に興味を持つか、銀河連邦の教材にします。」
店員。
「スケールが大きい……。」
ひまりの場合
ひまりは父親と相談していた。
「十万円あるよ。」
「うん。」
「どうする?」
ひまりはしばらく考え、
近所の公園へ向かった。
壊れたブランコを見上げる。
「これ、直せないかな。」
父親は笑った。
「十万円じゃ足りないかもしれない。」
「じゃあ。」
ひまりは大きくうなずいた。
「足りるところまで!」
夕方五時。
全員がキャンプ場へ戻る。
岡根が静かに聞く。
「さて。」
「一番贅沢に使えた者はいるかな。」
スタッフが結果をまとめようとした、その時だった。
神崎が封筒を差し出す。
「岡根さん。」
「どうした。」
「二千円、余りました。」
修も言う。
「僕も三百円。」
ガルム。
「私は百四十円。」
ゴロウ。
「五円。」
ひまり。
「百円!」
全員が余らせていた。
スタッフが首をかしげる。
「使い切らなかったんですか?」
修は笑う。
「無理に使う必要、ないですから。」
その一言を聞いた岡根は、大きくうなずいた。
「そうだ。」
「贅沢とは、お金を使い切ることではない。
必要な分だけ使い、残せる余裕を持つことでもある。」
スタッフは感心して拍手した。
……その直後。
経理担当が真っ青な顔で駆け込んできた。
「岡根様!」
「どうした?」
「大変です!」
「何が?」
「参加者百人に配るはずが……」
「うん。」
「ゼロを一つ間違えて、千人に十万円ずつ振り込んでしまいました!」
一同。
「総額一億円のミスーーーっ!?」
岡根は少し考え、
ニヤリと笑った。
「……まあ、それも贅沢か。」
経理担当は絶叫した。
「笑い事じゃありません!」
第14話「経理、大パニック!」へ続く。




