贅沢しても贅沢しても青い山
第12話「プロ無職、伝説の味噌汁を作る」
午前五時三十分。
キャンプ場。
チュン、チュン……
鳥のさえずりが響く。
修は寝袋の中で幸せそうに眠っていた。
「……あと五分。」
その声と同時に。
ガンガンガンガン!
鍋を叩く音が山中に響く。
「朝じゃーーーーっ!!」
ゴロウだった。
修が飛び起きる。
「びっくりした!」
ガルムも宇宙語で悲鳴を上げる。
「※自動翻訳
『惑星が爆発したのかと思いました。』」
朝食当番。
プロ無職・ゴロウ。
エプロン姿。
「今日は味噌汁じゃ。」
スタッフがメモを取る。
「具は何ですか?」
「冷蔵庫を見て決める。」
「キャンプ場です!」
「冷蔵庫ありません!」
「そうじゃった。」
結局。
近くの畑で分けてもらった大根。
キャンプ場に生えていた三つ葉。
豆腐。
「普通ですね。」
「普通が一番じゃ。」
神崎レオンが近づく。
「最高級松茸、持ってきました。」
「入れよう。」
「えっ!?」
「一本だけ。」
神崎が驚く。
「全部じゃなくて?」
「全部入れたら松茸汁になる。」
「味噌汁を守るんですね。」
修は火を見ている。
ガルムは味噌を見ている。
「これが……」
「味噌です。」
「生命体ですか?」
「違います。」
「発酵ですか。」
「正解。」
「地球、奥深い。」
十分後。
完成。
湯気が立ちのぼる。
全員が一口飲む。
……
ゴロウが聞く。
「どうじゃ?」
修。
「実家。」
「はい?」
「実家の味がする。」
神崎。
「僕、実家より実家です。」
ガルム。
「帰省したことはありませんが、帰省した気分です。」
スタッフ。
「コメントが全部変!」
そこへ、ひまりが小さく手を挙げる。
「おかわり!」
「はいよ。」
「もう一杯!」
「はいよ。」
「もう一杯!」
「三杯目!?」
ひまりは笑う。
「おいしい!」
ゴロウは照れくさそうに頭をかいた。
「ただの味噌汁じゃ。」
朝食が終わり、岡根が立ち上がる。
「さて。」
全員が注目する。
「最後の審査を始める。」
「えっ?」
「もう?」
「ルールは簡単だ。」
スタッフがボードを持ってくる。
そこには大きく一行。
『十万円を、今日中に一番贅沢に使え。』
修が固まる。
「急にお金!」
神崎が目を輝かせる。
「ようやく僕の出番!」
ガルムは計算を始める。
「地球通貨、十万円……。」
ゴロウは財布を開く。
「十万円なんて見たことない。」
ひまりは父親を見上げる。
「お父さん、十万円ってお菓子何個?」
父親。
「考えるな。」
スタッフはざわつく。
「ついにお金を使う審査だ!」
しかし岡根は意味深に笑った。
「ただし――」
全員が息をのむ。
「一円も自分のために使ってはいけない。」
神崎が固まる。
「え?」
修も固まる。
「え?」
ガルムも固まる。
「え?」
ゴロウだけが笑った。
「なるほどのう。」
岡根はニヤリと笑う。
「さあ、本当の『贅沢』を見せてもらおう。」
こうして、物語はコメディの中に少しだけ人情を織り交ぜた、新たな審査へと進んでいく。
第13話「十万円の使い道」へ続く。




