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断罪されなかった私の周りの居心地の悪い人々  作者: フィノ


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断罪されなかった私の周りの居心地の悪い人々 中

 口を結びジャスパーの言葉を待つ。何が間違いだった?王子に付き従い、学友として接してほしいと言われ語らい、共に学びつつも礼儀は弁える。その中で王子がリューシャに心惹かれていたのは分かる。


 婚約者であるアイリーンは私から見て、どこ得体のしれない女性だった。品行方正で美しい。ただ、感情を出すことも少なく、他の令嬢たちと話す中でも、中心ではなく一歩引いた位置から相槌を打ちながら話を聞く。


 蝶よ花よ、社交界なら中央に置かれるバラよ・・・。女性とは常に目立ちつつも、男性を支えるものではないのか?その点、リューシャは確かに礼儀には疎い、しかし王子のためにと手作りで菓子を作るなど・・・。


「先ずは、だ。そもそもリューシャ嬢へ嫌がらせ。コレの噂の出どころは?」


「リューシャ本人による証言及び、複数者からの目撃情報から。」


「なるほど・・・、幼稚な手だ。」


「なっ!確かに目撃したと言う証言が!」


「だから幼稚なのだ。目撃した・・・、なにを目撃した?なにを証拠として、誰がその証拠を持ってきて見せた?外傷は?危害を加える現場に居合わせた者はなぜ動かない?相手はリーデンバーグ家だそ?」


「だからその圧力で握りつぶせるのでしょう!名門貴族、それが弱小貴族に圧力をかければ白も黒く、黒も白くなります。」


「なら、なぜその複数者は弱味を握ったとして、その事実を脅しとして使わない?」


「それは・・・、貴族としての意に反するからでしょう。」


「なら今回の件は正当性があると?誰も止めない、誰も脅さない、今他の部屋で尋問されている者の証言が重なり出せば・・・。」


 コンコン・・・。


「失礼します。隊長・・・、これを。」


「あぁ、ありがとう。・・・、よかったなひよっこ。」


 渡された資料集に目を落とし、獣が獲物を捕捉するかのように忙しなく動く・・・。よかった?ならやはり、私や王子は間違っていなかったのか?しかし、よかったと言ったその顔は無罪を知らせるものではなく、底意地の悪さを滲ませる。なら、確認せねば・・・。


「よかった?やはり!」


「あぁ、目撃した・・・。それは聞いたに入れ替わり、尋問されている者の中で、直接見たと言うものは今のところいない。それに、危害を加えられた言う教科書・・・、王子殿下が保管されていたが、複数ページが刃物で切られる、或いは貫かれている。切るなら分かる、しかし、貫くのは並の女性には無理だ。現物は見たのだろう?」


「それは・・・、一気に体重をかければ・・・。」


「それをどこでする?教室でか?教科書を置いて帰る様ななまくらに用はない。それに、ないなら先に盗難事件として騒ぐ。複数の証言、噂、目撃、そのどれもが自作自演。地盤はどんどん砂になっているぞ?第1騎士団団長の息子殿?」


「・・・。」


「そもそもだな、私たちは人ではなく国に剣を捧げているのだ。それを履き違えた時点で、私なら即刻騎士としての地位を剥奪して叩き出す。」


「その血縁があるから、私の罪は裁かれないと?」


「違う。アイリーン嬢が誰を追及し咎人にするかは決める。名誉を傷付けられた公爵家、その本人だけが処遇を決めていい。」


 その時点で私は既に咎人として、公爵家から見られているのだろう・・・。いや、俺だけではなく俺の家も。尋問後に父に呼ばれ、謹慎と言う名の軟禁生活を送るが・・・。その生活は長く続かなかった。


「父上・・・。」


「ザイール・・・。先にいうが私はお前が大嫌いだ。いや、大嫌いになった。」


「それは・・・。」


「リーデンバーグ家より『今回の件でのこと、なにもせずにけっこう。』そう1文が送られてきた。」


「・・・、なにもしない?」


「そうだ。咎人でもなく、罪を裁くでもなく、なにもしない、だ。これほどの屈辱は初めてだ!戦い情けをかけられる以上の屈辱だ!分かるかザイール!」


「ち、父上!」


 頬を殴られ、よろめいたところに更に父の拳が腹に刺さる。屈辱・・・、そうか・・・。アイリーン嬢にとって、私は・・・、私たちは咎人にさえなる権利がないと言うのか・・・。


「わ、私は剣を・・・。」


「置くな!耐えろ!なにもするな、だ。始末しろでもなく、やめさせろでもなく、そのままやらせろ、だ!どの場に出ても私達は笑われる、陰口も叩かれる!だが・・・、だがな・・・。それは正統なものだ・・・。」


 屈辱に耐えて涙を見せる父・・・。騎士を辞し、剣を折ることさえ許されない私・・・。そして、それさえも罰ではない・・・。



________________________

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



「そうですか。」


 打ち合いが激しかった。木剣でも刃をつぶした剣でもいいのですが、激しくやりすぎれば治療費に修繕費にとお金がかかりますね。なら、木剣に厚手の布を巻・・・。いえ、槍でしょうか?


 馬上で使え、剣よりも長く、鉄の穂先を付けずとも、箒の柄を斜めに切って突く。男の方はなぜか剣を求められますが、槍と剣では製造コストそのものにやはり違いがあります。


「ザイール卿。」


「な、なんでしょうか?」


「槍は使われないのですか?」


「槍は使いますが・・・。」


「なら、槍を主に使ってください。」


「アイリーン・・・。」


「なんでしょうか?王子殿下。」


 体格のいいザイールが槍を扱えるなら、そのまま後輩に教えることもできる。今いる騎士から扱いを伝授してもらえば、後継者がいなくなることもなくなる。第一騎士団、団長の息子。騎士団長は歳を取れば替えなければなりませんが、ザイールはまだ若く団長から教えられた事も多いでしょう。だから、残したのですから。


「いや・・・、ザイール。槍を使ってくれ。」


「分かりました・・・。」


 なにを思ったのかは知りませんが、鉄の消費が抑えられればそれだけ防具に回せます。戦での最大の敵、それは国民が死ぬことです。今日勝っても明日食べるものがなければ飢える。その飢えをなくすためには1年から数年待つ必要があります。


「・・・、食事にしないか?」 


「そうですね。昼の鐘もなり、そのような時刻でしょう。」


 先に私が歩き王子が後から付いてきます。当然ですね。私が死んでも代わりはいる。王子が死んでも弟がいる。そして、国として必要なのは王子です。王位継承、その権利を持たれているのですから。


 席につき、毒見役が食べた食事に手をつける。味気なくともその、その毒見役が食べどころの周辺のみを・・・。一口ごとに今死ぬのか?次に死ぬのか?或いは、食べ終えて生き残るのか?そう考えれば味など些事です。


「もうよろしいのですか?」


「ええ。残った物は全て配給としていつも通りに。」


「アイリーン・・・、食が細くないかい?」


「激しく体を動かすわけではありませんから。」


 そもそもコルセットでガチガチに固められていれば、入るものも入らない。子供の自分は確かに食べる事が嫌いではありませんでしたが、それを好むほどにはなれなかった。ただ、ワインやブランデーと言うものはいつか、口元を濡らす程度ではなく思いっきり煽ってみたいですね。


「それは・・・、そうなのだが・・・。」


「太く豪華に食べるのもまた、王族の務めだろう?」


「太くは叶いませんが、豪華には食べていますよ。これだけの料理を前に摘むのは少量。そして、満たされれば不要とする。これは選んだものしか食べないと言う、王族としてのあり方でしょう?あぁ。そこの侍女。」


「は、はい!」


「料理長に今日もよいお味でしたと伝えてください。」


「それは・・・、そうなのだが・・・。」


 残して豚の餌、それは流石にもったいない。少なくとも、私が食べた後に毒を盛る必要制はなく、下賜しても死ぬことはない。まぁ、先に毒を盛ってそれを私が食べなかった。その可能性は捨て去れませんが・・・。


「だが?」


「子を生むならもっとこう・・・、栄養!そう!栄養を摂らなければならないだろう?」


「栄養ですか・・・、分かりました。次からはミルクで作ったボリッジも食卓に乗せましょう。」


「ボ、ボリッジ・・・。ブリオッシュとかは?」


「リビュー様。それは菓子です、食事ではありません。」


 ドロドロとしてうまくもなく、口に張り付いて少しの塩気と鶏の出汁のみの味が広がる麦粥。確かに栄養はありますが、食べなくていいなら食べたくないものですね。ただ、食料難を考えるなら舌を肥えさせるだけではなく、好みを消して悪食になる方が持ちこたえられる。


「菓子・・・、確かに菓子なのだが。お茶会も女性ならやるだろう?他の貴族との茶会・・・。」


 そこまで言ってリビューがしまったと言う顔をする。別にどうでもいいのですが、婚約破棄と言う喜劇の演目を演じて以降、私と積極的に関わろうと言う若い貴族は少ない。とりわけ、取り潰されたクライス家。リューシャ・クライスの末路がそうさせるのでしょう。


 あの家だけはリューシャが側室でない限り、取り潰さなければなりません。そう考えていましたが、私が判断するよりも先に国王陛下が直々に取り潰して、さっさと領地を私の家へ渡してしまいました。


 それは暗にこれ以上騒ぐなと言う無言の圧力。それと同時に、これで手打ちにしてほしいと言う合図。公爵家はその領地を受け取り、取り潰された家のものは農奴となり、最後にリューシャは国外追放となる。まぁ、そう言う密約で話が進んだのですが・・・。



________________________

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 



『出して!私はクライス!リューシャ・クライスよ!これは何かの間違い!リビュー王子ならきっと!私は王妃となり国母となってこの国を!』


「リーデンバーグ公爵家令嬢。ここから先、口を開くことを許す。」


「仰せのままに、国王陛下。」


 尋問が終わり、加担した貴族の名も、ありもしない罪の潔白も示され、それと同時に貴族の緩みを締め直すために、いくつかの家が潰される中、私は仄暗い地下牢の木の扉にある覗き窓から、中のリューシャを見ました。


 既にドレスは破れ、叫ぶ声は枯れ、ボサボサの髪は老婆を思わせますね。まぁ、側室でもないのでこれが当然でしょう。公爵家の私と男爵家の彼女。


 王妃である私と側室であったかもしれない彼女。その地位がなくなり関わりが消え、家も潰れたなら後は市民と代わりません。そして、その市民が公爵家へ弓を引き、王子を誑かして国へ混乱をもたらそうとしたのなら・・・。


「これをリーデンバーグ嬢はどうしたい?」


「国王陛下の御心のままに。」


「ふむ・・・、なら。裁く権利をお前にやろう。事の当事者が裁く。それが1番自然なことだ。」


「そうですか。」


 安直に処刑、これが1番後腐れはない。その細い首を刎ね、赤き血潮で罪を精算し、償いとする。不要ですね。既に家も潰れ、ただの市民となかったリューシャにそれは不要です。なら、どう使えば有効か。農奴に落とすのは、ただの死刑ですね。当主自ら殺しに来るでしょう。若いのにもったいない。


「鉱山の酒場送り。そこで鉱夫の相手をさせてください。」


 天真爛漫な性格なら粗暴と言われる鉱夫たちともうまくやれるでしょうし、なにより時折鉱夫たちは花がほしいともいいます。今はボロボロで垢も溜まっているようですが、水浴びをさせて整えれば見栄えもいいでしょう。


「鉱山の酒場・・・、分かった。それが1番活用でき2度とここへ帰ってくることもないだろう。決断は変わらないか?」


「代わりません。ただ・・・、話せるなら一度話してみたいと存じます。」


 愚物2号。懐かしいと言うには日の浅いあだ名ですが、あだ名をつける程度には親しみがないと言うわけでもない。そもそも、学園でこの方と話したのは・・・、思い出せないほど少ない回数ですが・・・。


 木の扉が開き、私と兵士が中へ。すえた臭い・・・。ツンとするアンモニア臭に生乾きの布の香り。その中で爛々と輝く瞳。なるほど、この方は強い。これだけ生気に満ちた目ができるなら、次の職場でもいい働きをしてくれるでしょう。なにせ、酒の入ったジョッキを大量に運ぶのは重いと聞きます。


「貴様!アイリーン!私のリビュー王子を!」


「それは間違いです。」


「なにが間違いか!水車女!その鉄面皮の下で私を今も笑っているのだろうが!失敗した落伍者と!下手なさえずりをしたバカ女と!」


「それもまた、間違いです。」


 やはりこの方は貴族には向かない。側室と言う話は既になくなっていますが、今にして思えばその話も残さなくてよかった。側室とは即ち王家にいる者、その者がこれでは国としての品位に関わる。


 別に世継ぎが私の腹から産まれようと、彼女の腹から産まれようと次の王として育てるのは変わらないのですが、流石にこれでは不破の種と変わらない。


「なら、なにしに来た!謝罪か!あぁ!リビュー王子が私に謝罪しろと・・・。」


「貴女の次の行き先は鉱山の酒場です。」


「・・・、はぁ?私クライス家の!」


「クライス家は取り潰されました。既に当主含め農奴とすると決が出ています。」


「・・・、ありえない・・・、ありえない・・・、ありえないありえない、ありえない、ありえない・・・、ありえない!!そんな話が!」


「貴女も貴族だった方でしょう。そのあたりの教育を受けていると思いますが?」


「だからって!」


「だからです。市井の者が横恋慕するなら事は大きくなりません。しかし、地位あるものが横恋慕するなら、子より先にそれ相応の責任が産まれる。お分かりでしょう?」


 項垂れるリューシャに踵を返し、そのまま扉へ。背後からリューシャが私を襲おうとしたのか、肉を棒でたたく音と短い悲鳴が聞こえます。元気な方ですね。あぁ、私としたことがうっかり忘れていました。


「兵士の方。」


「はっ!」


「叩くなら顔ではなく腹にしてください。」


「・・・、はっ!」


「うぐっ・・・。」


「ありがとうございます。」


 2度、3度・・・。短い悲鳴を聞きたいわけではないですが、その腹に誰もいないとここで証明するのは必要で、私生児の話は消さねばなりません。


「もういいのか?」


「はい、国王陛下。これで隠された世継ぎの話も、彼女からでないでしょう。」


 その後リューシャと会うことはありませんでした。特に話題に上げる必要もなかったと言うのもありますし、馬車か或いは徒歩か・・・。なにで移動したと言う話にも興味はありません。まぁ、兵士を見ても立ち上がって向かってくるだけの気力があるなら、どこへ行っても元気に過ごすでしょう。ただ、国外追放などもったいなく、更に言えばその口から出る言葉で火種が燻る。



________________________

 

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「リビュー王・・・。」


「リッチモンド書記官ですか。どうされました?」


「いえ、アイリーン嬢、ご機嫌麗しゅう・・・。」


「ええ、ご機嫌麗しゅう。その手にある書類は?」


「これは・・・、次の公共事業やその他諸々の計上資金をまとめたものです。」


 スッと手を差し出せばその書類が渡されます。この方もあの喜劇を見られた方ですが、能力としてはどうなのでしょう?サイロに水車に風車に、道路。設備と言うものは常に劣化し、それを小さなうちに修繕して取り繕う。


 いわば国という服を仕立てるのが私達となります。そのなかで、なにを優先しなにを後回しにするのか?交易を考えて利益を求めるなら道路を、冬に向けた備蓄を安全に保つならサイロを、城壁の劣化が激しいな戦に備えて補修を・・・。


 なにが優先されるのか?それは情勢を見ることのできる王族や書記官、或いは密偵からの情報となりますが・・・。なぜ開墾ではなく軍備増強を?


「リッチモンド書記官、騎士団にご友人は?」


「数名おります・・・。」


「分かりました。」


「リッチモンドじゃないか!」


「リビュー王子・・・。」


「ここへは・・・。アイリーン、その書類は?」


「公共事業及び軍拡の書類です。」


「軍拡・・・、いや。軍拡と言うほどでは・・・。」


「王子。この案はリビュー王子も確認されたのですか?」


「確かにしたが、国力とは軍備があってのもの。ならば、それを充実させるのもまたおかしなことではない。」


「先が抜けています。武器があっても誰が振るう、振るう人がいてもどこに飯がある、その飯を作る土地はどこにある。先にやるのは開墾で、隣国との関係がいいうちに食料生産率を上げ、全体の力上げてからでもよろしいと思いますが?」


「しかし、いつ戦さが起こるかもわからない。確かに隣国とは血で結ばれた部分もあるが・・・。」


「騎士からの軍拡具申なら今は切るべきと考えますが?」


 スッとリビューがリッチモンドを見る。腹芸をするなら何も考えずに決定事項とすればよろしいのに。可愛いですね。ただ、やはりリッチモンド書記官はここにいるべきではないでしょう。この方は最初から主体がない。


 書類にしてもリビューに届けるなら『リビュー王子に渡すよう、王子ご本人から厳命されています。』と、そう言え済むところを私の手には乗せてしまった。これでは優先順位を間違ってしまいます。


「それは腑抜けた国となってしまう。」


「抜ける腑がなければ、残りは皮と骨です。ですが、どうぞ。」


「・・・、いいのか?」


「なにがいいのかは分かりませんが、王子は王になるお方です。意見はできても、それの決定を私には覆せません。では、少し行くところが出来ました。」


 予算そのものは目を通した感じ大丈夫でしょう。ただ、それを宰相閣下や国王陛下に提出し、説明した際にどういう評価を受けるかは分かりません。


 そもそも、私たちと国王陛下や宰相閣下では持っている情報の量が違います。ただ、リッチモンド書記官の配置転換を具申する程度は許されるでしょう。


「宰相閣下・・・。」


「これはこれは次期王妃殿。どうされました?」


「最近の野盗や賊、他国の軍備の状況を教えていただけませんか?」


「・・・、最近はいくつかの盗賊団が村を襲っている。騎士団派遣により被害は少ないが、取りこぼせば勢力を増すだろう。」


「なるほど、理解しました。なら、あの案は正しくもある。」


「あの案?」


「リッチモンド書記官が、軍備増強を資金計上に乗せていましたので。」


「ふむ・・・、額面によるな。掃討戦をやるならば冬。森が枯れ平地が見渡しやすく、隠れ家があぶり出しやすい時に一網打尽とする。次の会議でその案が提出されるなら一考の余地もあるだろう。まぁ、額面によるが。」


「ええ。飲める額かによります。」


 知らないと言う事はやはり恐ろしいですね。国を預かり運営し継続させて次に渡す。それが王族となる者の使命であり仕事です。


 訪れた冬・・・。雪が降る前の寒い日の薄暗い夜明けとともに、軍馬はいななきを上げずに静かに走り出し、一直線に盗賊たちの根城を目指す。その手には槍が握られて。騎乗する者の中にはかつて喜劇を見た者達を乗せて・・・。


「アイリーンも憂いているのかい?盗賊団と言えどそこそこの規模だと聞く。」


「いえ、憂いてはいません。それが彼等の仕事で、役割ですから。」


「なら何を?」


「彼等の働きに対する報酬を考えていました。」


 危険に対する報酬。名誉はあります・・・。第一騎士団が討伐に名乗りを上げましたから。支払う報酬もあります。それも計上されたから。なら、最後に領地と地位は?


「君が言った開墾は進めている。」


「それは・・・、よろしゅうございました。」


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