断罪されなかった私の周りの居心地の悪い人々 上
悪役令嬢と言うモノがある。経緯はどうでもいいし、ゲームなら悪役と主役と言う構図は分かりやすく万人受けする。そう、仮想の世界で追体験し主役を演じ選択を繰り返せば自ずと感情移入して悪役令嬢は悪役ではなく悪となる。そう、仮想ならば、だ。
________________________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「リーデンバーグ・エナ・アイリーン!私は君との婚約破棄をココに宣言する!」
「・・・、認めませんが?」
「はっ!権力と玉座に目が眩んだか!しかし、お前の拒否なぞ・・・。」
愚物・・・。恋や愛なんて物は私は持ち合わせておりません。権力もまた、必要以上のモノは欲していません。ただ、一言で言うならこの愚物が余りにも可哀想だから手折りたい、でしょうか?
貴族社会において婚姻とは政略であり、一時の感情に左右されて決めるものではない。そもそも公爵とは国王に次ぐ地位であり治める領地にしても私の家は国の半分以上の面積を有しています。人口と言うモノを考えれば当然負けるでしょう。しかし、人口がなぜ負けるのか?単純な話です。農業にしろ産業にしろ治めた領地で行っているからです。
王都で買うパンはどこから来るのか?王族としてその程度の教養がないとは思いませんが、婚約破棄と言う自国を滅ぼす選択をする辺り、知ってはいても体感はしていないのでしょう。可愛らしい事です。私はまだ当主ではありませんし、両親も健在です。しかし、貴族社会のなかで何を選び誰と結婚した方がより国を盤石に出来るかを考えたなら、公爵令嬢との婚約破棄を堂々と宣言するなど勇気ではなくただの蛮勇でしょう。
「そうよ!そうよ!私が一体どれだけ貴女から嫌がらせをされたか・・・。」
「おぉ・・・、可哀想なリューシャ。泣かないでおくれ。」
愚物2号のリューシャ。天真爛漫な彼女は確かに貴族社会にはあまりいない稀有な方です。だってそうでしょう?天真爛漫とは裏を返せば独善的で堪え性のない方なのですから。そもそも彼女は男爵家の令嬢、地位と名誉を重んじる貴族社会において一番下の爵位の方。国難でもない今、彼女が選ばれる意味がわかりません。
「喜劇は終わりましたか?」
「何が喜劇だ!私は婚約破棄を宣言した!そしてこのリューシャと婚姻する。これまでの学園生活のなかで彼女の優しさに触れ、君の嫌がらせの話を聞き、誰を守るかは明白となった!故に再度言う、婚約破棄をし君を国外へ追放する。」
「聞こえませんでしたか?私は認めないと言いました。別に貴方が側室としてその方を迎えても構いません。私と顔を合わせたくないのであれば2人で別荘に籠もられても構いません。ただし、王妃の座は渡せません。」
「化けの皮が剥がれたなアイリーン!我が国を乗っ取る算段を企てた悪女め!」
やはり愚物。好きなら勝手に乳繰り合ってろ、内政してやっとくからが分からないのでしょうか?それに私を国外追放する意味も。あぁ、最近は授業もサボりがちでしたね。本来なら王族は家庭教師による教育が主ですが、知見を広める為に学園に来たと言うのに嘆かわしい。
「なら、国王陛下の前で直々に婚約破棄を宣言して下さい。それにより陛下直々のお言葉を承ったなら破棄を受け入れましょう。」
「父上は関係ない!」
「あるからこうして申し上げていますが?私も父上に話をせねばなりませんし、誰かがそう言ったから私が嫌がらせをやったと断定した。この部分は名誉の為にも厳しく追求せねばなりません。」
「それは裏で工作する時間稼ぎだろう!公爵と言う地位を利用して。」
「地位が分かっていて婚約破棄されるのですか?」
ウチが欲しいのは王家に嫁いだと言う実績。王家が欲しいのは公爵家との更なる繋がり。産業や流通の大部分を掌握しているウチを血と言う繋がりで更に強化し共によい関係で発展しようと言う話なのですが・・・。その部分をお忘れなのでしょうか?それとも王族としての教育が不足している?
爵位とはそれだけ認められる仕事をこなして王家とも繋がりがあり、外せないポジションの者を縛る為に与えるもの。ここで私が簡単に承諾して名誉を盾にお父様が離反されればそのまま戦争に突入されるでしょう。いえ、回避方法は私を追放する事ですが、その場合隣国に嫁ぐだけで更に王家は窮地に立つ。
別に夫が誰であろうと構わないのですが、治める領地に要らぬ不安を抱かせるのも悪い。私の行動とはそれだけ影響があり個人として思うままに出来る事は非常に少ない。あぁ、だからこそこの王太子の行動を愛らしいと思うのか。物知らぬ雛が飛べぬのに巣立ちをする様を見るように。
「その地位も王家から賜ったものだろう?新たに公爵家を興し・・・。」
「民の税をその様な事に使うと?先ほども言いましたが側室としてその方を迎えればいいではありませんか。私はその事を拒否しませんし。」
「そうやって私にまた嫌がらせをするのでしょう!物を隠し悪い噂をばら撒き皆の前で恥をかかせて!」
「自身の教養のなさを棚に上げないでもらえますか?立場ある家の者としての立ち居振る舞いのなさ、貴族としての嗜みに貴族としての不文律に対する無知。こうして公爵家の私や王族である王太子を前に勝手に発言されるのもどうかと思いますが?」
おべっかを使えとは言いません。しかし、貴族には貴族としての振る舞いがあります。それを崩せば上下もなくなる。王権神授と言う言葉がありますが、宗教と国政を分けるこの国ではそれは適応されません。あくまで人の世は人が統治し神とは祈る対象であって願う対象ではないからでしょう。
最も、国王陛下が宗教を嫌っていると言うのもありますが・・・。そもそも王太子は16で国王陛下は35と両者共に若い。魔法なんて便利な物があるわけでもないから、早く子を産み盤石な体勢を作る事が優先事項の1つとされますね。
私の発言を聞き王太子の取り巻きと言うか、次の王である彼を支えるべく選ばれた方達の厳しい視線が私に向かいます。仲良しこよしと言う訳でもなく、あくまで学園での王太子をサポートしつつ他の貴族との関係を作る為に来られたはずですが、一体どれだけ色香に惑わされているのか・・・。
そもそもなぜ彼等は王太子と直接接触されているのでしょう?それが不味いと言うわけではありませんが、仲良しこよしで国が成り立つわけでもなく、切るべき時は切れる部下としてあるべきなのですが・・・。代を重ねれば腐敗は起こる、そこに新しい風をいれるのはもう少し先でしょうに。どの家もお家存続は考えていますが、どこを強化して何を後にするのか?
王家の盤石さと言うのは今のところ弱い。それは国内から妻を選ぶところからも見て取れる。野心的なら諸外国から妻を迎え近隣国との関係強化に舵取りする所を、私を妻として選んだ所からも考えられるでしょうに。
男爵家と言うのは、今の所領地的には安定していますが目立った特産品もなく、今後を見通しても発展すると言う可能性も低い。そこに王家の血が入ろうとも土地が肥えて産業が発展し特産品が生まれるわけでもない。端的に言えば一時的なお金は入ろうとも大きな変化はなく、あるとすれば箔が付くでしょうか?
「立ち居振る舞いって・・・、王子はそのままの私でいいって言ったもん!」
「・・・、やはり先程の婚約破棄の話。謹んでお引き受け・・・。」
「してもらっては困るよアイリーン公爵令嬢。」
「っ!コレは陛下。ご機嫌麗しゅう。」
背後からでも声を聞けば分かる。貴族として生きるこの身体はすぐさまカーテシーを取り敬意を示す。最後で言葉を紡げなかったのは勿体なかった。流石に子供の様な話し方をする女を選ぶ方と形だけとは言え夫婦になれる気がしない。
「ああ、ご機嫌よう。そしてそこの馬鹿息子、コレはなんだ?」
「父上!何故アイリーンの承諾を止めたのです!」
「国益にならないからだが?リーデンバーグ家は我が国の中でも屈指の名門であり農業、工業の分野でも切っては離せない間柄。それにアイリーン嬢本人も聡明であり貴族としても申し分ない。」
「しかし!その者は男爵家令嬢リューシャに酷い仕打ちを!他の者も知っているのだろう!日々リューシャが泣きながらも前向きに過ごし、嫌がらせをしたアイリーンを庇っていた気高き姿を!」
「ふむ・・・、宰相。この学園の全生徒に憲兵による尋問を行え。子供の戯れと軽い気持ちでやるな。立場ある貴族として今後国を背負う者達が、噂程度に騙されたとあっては国営に関わる。」
「はっ!当然誰がどの様な事を見聞きしたかは、書類にお納めして公文書として扱わせていただきますが、よろしいですか?」
「構わん。公爵家と王家の婚約を破棄させる計画を立てた国賊がいるのだ。両家の名誉の為にも徹底的にやれ。」
「そんな王様!」
馬鹿なのでしょうか?王族に・・・、国の王たる陛下に発言の許しも請わずに、呼びかけるなど正気とは思えません。既に陛下と宰相の話で顔色悪くしている方達もいますが、国の膿を出すのにいいように使われたと感じます。いえ、貴族としてこの程度はなんの苦労でもありません。ただ、愛らしいと思っていた王太子の見る目のなさに引いただけです。
「リューシャ・・・、父上!いくらなんでもコレはやり過ぎです!学園は・・・。」
「王家が援助している教育機関で、学問の下に学ぶ者は平等である。この夜会は学問か?それとも祭りか?学びと言うならその娘は貴族としての礼が足りぬ。祭りと言うなら身分を理解しろ。そして何より、公爵家へ弓引く者がこれ程多いとあっては王家としても無視できん。」
「しかし!それはアイリーン嬢の振る舞いが!」
「その振る舞いについてコレより尋問すると言っている。その結果次第では・・・、お前も分かるだろう?」
「っ!アイリーン・・・。」
そこで私の名を呼んでどうするつもりでしょう?私が発言する機会は陛下のお出ましによりなくなりました。そして、婚約破棄を受ける事もなくなりました。政略結婚であるこの婚約は私個人の感情でどうにかなるものではありません。仮に本当に愛していると言うなら男爵家へ婿入すると言えばいい。王太子はまだ王家にいますし。
「この話は王家が預かる。他言無用で解散だ。」
そう言い残し陛下は帰られましたが、すぐに憲兵が来て私以外の方を連れていきました。どの道私は否定した側で話す事もなく、仮に口を開くとすれば否定の弁をする時でしょう。賑やかだった学園はそれから数ヶ月火を落とした様に静かになり、静寂が平穏を称えました。
下手な事は口にしない。それは貴族間だけではなく、出入りしている業者にも伝播した様で誰もが口を噤んでいます。そんな折、父から手紙が届きました。掻い摘んだ内容だけ話すならよくやったでしょうか?私自身は何もしていませんが、今回の件で不穏分子の炙り出しや次期王としての王太子の資質、その他にも公爵家への名もないお金の舞い込み等。
父としては上機嫌に酒が飲めている事でしょう。そして最後の一文には『婚約破棄を受けるか否か。お前の聡明さに期待しよう。』と添えられていました。そんな文章には当然こう返します。
『破棄はいたしません。王太子が婿入するなら第二王子と改めて婚約しましょう。しないのであればそのまま妻となりましょう。どの道王妃として席に付ければそれでよろしいです。』
________________________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ア、アイリーン?何かか欲しいものはないかな?ほら!こうして花束も。」
「それは侍女に渡してください。どうされました?急に。」
結局リビュー王太子との婚約破棄はなされませんでした。その代わり国王陛下より私から婚約破棄或いは離婚の申し出があった場合は、王位継承権を第二王子に譲る事と厳命されました。奇妙な話と考えられるかもしれませんが、王太子に対する陛下の信用は全くありません。
それでも王子としていられるのは、私との婚約関係があるからです。つまり、公爵家令嬢と結婚出来る権利を有しているから王子として扱っているのであって、その話が消えてしまえば王子は男爵家に婿入するも、他国に政略結婚の駒として出されるも、それこそ身分を捨てて野に下るも自由です。しかし、リビューは王族と言う身分を捨てられなかった。
おかしいですよね?あれほどまでにリューシャの事を好いていたのに、今では顔も合わせず側室の話も上がりません。別にリビューが側室が欲しいと言えば面接してから選ぶだけなのに。流石に庶子と言えど下賤な者では困ります。その点男爵家のリューシャは貴族なので候補としては十分なのですが・・・。
「いや・・・、君がどうしているか気になったんだ。」
「特にコレと言って何もありません。それよりも公務はどうされたのですか?」
アイリーンと言う女ははっきり言えば水車の様だ。どこか人間味が欠け、完璧ではないにしても驚くと言う姿を見せる事もない。それが貴族として、公爵家の令嬢としての姿なのか?私には分からない。彼女との顔合わせは私が9歳の春であった。王族としての勉強を家庭教師から受ける中で、父より婚約者と顔合わせすると言われて出会ったのがアイリーンだ。
当時より彼女は美しかったが、それはどこか作り物めいた美しさで水が流れば回る水車の様に決められた顔、決められた動作、決められた言葉を紡ぐ異質な者として私の目に写った。言い訳が許されるなら私は彼女と仲良くなり愛そうと思った。
例え9歳であろうと私は王位継承権第一位の王子であり、父が退位すれば私が国を切り盛りする立場となる。相手の家柄も既に知らされ幼いながらに、この話は決定事項であり政略であると言うのは分かっていた。分かっていたが妃となる者を王が愛してはいけないと言う話はない。
その腹に子を宿し世継ぎを産むとなれば、険悪よりも仲睦まじい方がいいに決まっている。しかしアイリーンと言う女は私の言葉に静かに耳を傾ける相槌を打つばかり。私は婚約者と顔合わせしたのであって、時刻を知らせる鐘を見ている訳ではない。
「君のことを教えてよ。なんでもいい、好きなお菓子とか本とか。」
「本でしたら隣国の地政学は最近読みました。土地としても肥沃で・・・。」
話されたのは好きなものではなく大人の会話。確かに私はこれから先、その話を知っておかなければならない立場だろう。しかし、初の顔合わせでその話をされても、私にはなんと返していいのか分からなかった。多分この時私はアイリーンをどう接していいか分からない存在だと決めてしまった。
しかしそれでも婚約者であるから手紙のやり取りは有った。互いに送る文の内容は他愛のない事ばかりだったが、文章の節々から読み取れる内容は、どうにも彼女の知的さと冷たさを感じさせる。
「父上、私の婚約者は石像ではありませんよね?」
「なにを馬鹿な。とても品行方正で貴族らしい貴族だ。あの娘なら何処に連れて行っても恥をかかない。」
「いえ、そうではなく・・・。」
貴族らしい貴族。なら、貴族とは水車なのか?結局私にはそれが分からず、モヤモヤとしてモノを抱えながら王族としての教育を受け、13で3年制の学院へ入った。はっきり言って心が踊った。王族として遊び相手は弟か城に仕える大人しかおらず、たまに顔を合わせる騎士団長の息子等は一歩引く。そんな中で対等としていいのはアイリーンくらいだが、そのアイリーンは水車だ。
婚約者と言う事で恋文を送れば、愛の囁きは帰ってくる。時折アチラからも愛の囁きはある。しかし、それもどこか定型文の様で、代筆屋なる者を雇っていると言わられば信じてしまう。
学院で顔を合わせてもアイリーンは変わっていなかった。表情を変えることも少なく、何処かピンッと張り詰めた空気を漂わせつつも、静かにそこにある。美しさは増していたが、それが逆に近寄り難さを醸し出し、顔を合わせて挨拶をするのも何処か気後れする。
王族と貴族、どちらが上なのだろうか?学院で学ぶ時は平等である。だからこそ気軽に話せる男友達も出来たし、リューシャにも出会った。果たしてあの出会いは間違いだったのだろうか・・・?
「午前中の公務は終わっているよ。」
「そうですか。なら、騎士団の視察などされたらどうです?」
「視察・・・。そうだ、君も来るといい。」
「分かりました、行きましょう。」
隣国との関係は今の所悪くありません。貿易にしろ協定にしろ細かに結び、両国の貴族間での婚姻もあります。それは言わば人による鎖ですね。仮に関係が悪化しても、両国間にいる親類が、ある程度の所で妥協案をだし、破綻まで行かせないと言う。
仮に戦を想定するなら、当代ではなく2世代後と言う所でしょうか?その2世代の間に決定的な何があれば、早まるかも知れませんが、そうしない為の政略結婚です。だだ私が想像しない権謀数術がいくらでもあるので過信はしません。しませんが・・・。
「どうかしたのかい?」
「いえ、多いと思いまして。」
兵士は確かに必要です。国力を見せつけ他国への威信を示すと言う面では兵士の数=手を出せばただでは済まないと見せつけられます。ただ、それはあくまで威嚇の為であって常時兵士を養うと言うのは莫大なお金がかがる。そう、お金です。
国土拡大を狙い隣国を属国にし略奪と戦勝金を得られれば、兵士への報酬も領地や身分、給金として支払えますが平時においては功績も上げらない。備えとして必要なのは分かりますが、多すぎるのもまた国の財政を圧迫する。
軍の縮小と言うのはかなり難しい問題ですが、減った兵士の数をカバーするのが技術ですね。そう。例えば火薬を買い付けて兵器とする。例えば毒を使い相手を機能不全に陥らせる。戦術論として書物を読めば、最後に兵士が立てば終結で、後は残務処理。なら、その逆もあり得るのではないでしょうか?旅人に紛れ毒を投げ込み・・・、いえ。その後の平定を考えると毒はまずいですね。ただ、血を吸った大地を綺麗と言える程私は美しくない。
「これはこれは次期王に次期王妃。この様な汗臭い場所にどうされました?」
張り付けた笑顔でザイールが話しかけてきます。あの舞踏会の日、王子と共にリューシャ側に付いた者。微かに手が震えているのは私の視線が嫌だからでしょう。ただ、私もここへ視察と言う名目で来ています。
「久しいなザイール。」
「なにかご病気ですか?ザイール卿。手が震えていますが。」
「っ!多少剣を握り込みすぎた痺れでしょう。今日の打ち合いは激しかったので・・・。」
________________________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
青いガラス玉のような目が俺を見る・・・。既に膝を折りたい。いや、礼儀として折るべきか?それとも、折れば見下されて立ち上がれないのか?
舞踏会の夜、国王陛下が現れ憲兵に連れて行かれた生徒全員は、それ相応の尋問を受けた。貴族だから手心?そんな優しさはない。命じたのは国王陛下で、取り仕切ったのは宰相殿。そして、俺たちは全員貴族で正統な理由もなく拒否もできない。
いや。子供だったのだろう、誰も彼もが。貴族であると言うこと。立場があると言うこと。そして、その立場が人を分けると言うこと。
俺への尋問は第1団長である父ではなく副団長であるミゲールでもなく、憲兵も兼ねる第4騎士団長のジャスパーが行った。それはコレが危ない火遊びではなく、憲兵を出すに値すると言う事案だからだろう。
「それで、まずば不敬罪等は一旦省略するとして・・・。」
「待ってください!不敬罪とは!私は国へ剣を捧げて!」
「黙れ小僧。その捧げた剣が公爵家へ向けられた、その時点で騎士としての地位は剥奪されてもおかしくない。騎士ザイール。いや、ただのザイール。他国の貴族ならまだ地位は考慮する。しかし、自国の者への尋問とは咎人の烙印を押すか押さないかだ。今はまだ押されていない。しかし、次の瞬間俺が押すかもしれない。発言は考えろ。」




