適正
前衛の戦いは、激化していた。
ミハイルの仕掛けた落とし穴を駆使しつつ弓、そこにフレイヤを中心にバルタスの侵攻を止めていた。
「はぁはぁ、くっそ〜。」
フレイヤが肩で息をして傷を負いながら、二本の戦斧を構える。
その様子を怪我を負いながらなお、ケロッとしているバルタスが笑いながら
「流石だな!よく喰らいつく!だが、もう限界そうだな。」
バルタスが巨大な戦斧を振りかぶる。
フレイヤはこれをギリギリでかわして反撃するも、バルタスが戦斧で受ける。
そして、バルタスがフレイヤを弾き飛ばし前衛の生徒たちに攻撃を仕掛ける。
これにクロードが前衛の生徒たちに
「下がれ。」
そういうと、バルタスは落とし穴を警戒して動きを止める。
「……はっ!ブラフか?」
バルタスがそう聞くとクロードは表情一つ変えずに
「では、進めばいいのでは?」
持っているレイピアを構えず、そう言う。
クロードの毅然とした態度にバルタスは踏み込めない。
実際は、落とし穴はそこには無かった。
自陣でこの様子を見ていたミハイルが
(落とし穴の数は少ない。ハッタリも効かなくなってくる……。作戦を切り替えるか。)
「自陣から五人、盾を持ってバルタス教官の動きを止めてください。……あと西側に三名、エレノア教官に遭遇しない程度に進んでください。そして、本陣から合図をしたら敵陣に突撃を。」
指示通り、西側に三名潜み、前衛に盾を持った生徒たちが構えながら前に出た。
この様子を見たクロードが
「……フレイヤ・ルーン。頼むぞ。」
そういうとフレイヤが任せて!と答える。
クロードが敵陣に向けて駆けた。
この様子を見たバルタスがフレイヤに警戒しつつ
「ほう。単騎で突撃か。……そりゃ無謀じゃねえか?」
笑いながらそう言う。
「正面にいるルシアン、奴をどうするつもりだ?
それに、ここもお前とクロードでやっともってた。
それを、お前一人でやる気か?」
バルタスの質問に肩で息をしているフレイヤが
「さあ?知らない!でも、アイツが行くってことは勝算があるんじゃない?それに、」
フレイヤが戦斧を構えながら前衛にいる盾を持った生徒達の横に並び、笑いながら
「一人じゃないし、倒す必要もない。止めればいいの。でしょ?」
これにバルタスが「ほう」と笑い戦斧を振るう。
それを盾を持った生徒のアルノーとノアが受ける。
「ぐ!」
「……っ!」
盾で受け切った。
その様子を見てバルタスが笑顔を浮かべて
「……はっ!根性あるじゃねえか!おらおらぁ!もっといくぜ!」
そう言って盾を持った生徒たちに攻撃を浴びせていく。
その状況をみた他の前衛たちも盾に持ち替えて入れ替わりでバルタスの攻撃を受ける。
そして、攻撃で生じた隙をフレイヤが突く。
バルタスの腕に鮮血が流れる。
「っとぉ!……はは、やるじゃねえか!」
そう言いながら、構わず盾に攻撃を浴びせ続ける。
「守れ!」
「交代の準備だ!」
そして、生徒側の陣地から弓の援護もあった。
これを弾きながら盾を崩して、フレイヤの攻撃を警戒、さらに落とし穴がどこにあるかわからない。
これによりバルタスの足止めが成立していた。
だが、それでもなお
バルタスは笑っていた。
前線を駆け抜け、単騎で突撃したクロードの前に立ちはだかったのは、ルシアン・ベルフォール。一班の教官だった。
クロードの単騎での突撃に意図を理解できず、ルシアンが疑問の表情を浮かべて
「わからんな。お前はこんな無茶をする者とは思わなかったが。」
剣を構えながらそういうとクロードが
「……貴方は強い。だが、考え方や剣も古い。」
ルシアンがギロッとクロードを睨む。
そんな様子を気にもせず、クロードが続ける
「古い騎士のままでは、何も変えられない。
貴方の剣も、思想もここで叩き折ります。」
そう言って、クロードがレイピアを構えた。
ルシアンは眉をひそめながら
「挑発のつもりか?だが、効果的だ。
……舐められたものだな。はぁっ!」
踏み込みと同時にルシアンの姿は消えていた。
クロードの懐に飛び込み、ルシアンがロングソードを振るう。
「ぐっ!」
クロードがレイピアでなんとか受け流すも、ルシアンの攻撃は止まなかった。
「さあ!倒すのだろう!」
クロードは防戦一方だった。
風を切る音が響き続け、ルシアンの剣がクロードの頬や肩を掠める。
だが、クロードは攻められないのではなかった。
ルシアンの剣を最低限の動きと受け流しでかわし続ける。
このクロードの行動にルシアンが違和感を覚える。
(何故だ……?私の剣を見切るつもりか……?)
ルシアンの剣は洗練されていた。
無駄のない動き、
戦場で磨き上げられた無敵の剣とも評される、
隙のない剣術だった。
だが、クロードの腕なら反撃は可能だった。
それなのに反撃に転じない。
まさか、まだ騎士候補生の若者が見切ろうとしている?
私の剣を?
その疑問がルシアンの脳内をめぐる。
「挑発しておいて、守ってばかりか!」
ルシアンは疑問を持ちつつ、攻撃し続ける。
その様子を見ていた教官側の自陣からエレノアが
「ルシアン!離れすぎだ!」
「!?」
クロードの目的は倒すことではなかった。
「……私を遠ざけるためか。
私を挑発し、自陣から離す。
それが目的か。」
ルシアンの言葉にクロードは
「貴族であり、騎士として結果を残した貴方はプライドが高い。
故に、乗ってくると思いました。」
肩で息をし、傷を負いながらクロードが答える。
この様子を生徒側の自陣から見ていたミハイルが西側に待機させていた三人に突撃の指示を出した。
クロードが剣を構えながら続ける。
「ですが、引き離した今、再び自陣に戻られては困る。
貴方を超える。これは本気です。」
ルシアンは少し微笑みながらほう?といい
「まあ、そうか。ならば、来るがいい。」
ロングソードを構えながらルシアンは続ける
「しかし挑発か。お前がこのような手を使うとは。少し意外だった。」
クロードが控えめに笑いながら
「どこかのバカに、影響されたのかもしれません。」
二人が同時に斬りかかった。
一方、東側の森ではー




