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ヴァルディア戦記  作者: ユユ
10/17

異質

森の中に、金属音が響く。

「っ!っと〜。あぶな〜。」


森の陰から投擲されたナイフを剣で弾きながら、

ユーリは警戒する。


四班の教官、カイン・アーヴェルは森という地形を利用してユーリを自陣へ進ませないようにしていた。


ユーリが飛んでくるナイフを剣で弾きながら進もうとすると、木の上からカインが斬りかかってくる。

さらに、煙幕を使い、ユーリの判断を鈍らせて攻撃。

これにより、ユーリは苦戦を強いられていた。


「あ〜、やりずら〜い!」

ユーリが珍しくイライラした様子でそういうと

森のどこかからカインの声が聞こえる。

「……ユーリ君、君は非常に厄介です。戦場の大事なポイントを感覚で分かる。時々いるのです。センスがある、というのでしょうか。昔、貴方のような騎士には随分苦労しました。」


ユーリが声の聞こえた方に走る。

だがカインの姿はない。


ユーリが剣を回しながら

「ん〜、なんか暗殺者って感じ〜。騎士っぽくないね〜。」

そういうとユーリの背筋に悪寒が走る。

頭上からカインが短剣を突き立てながら落ちてきた。

これを剣で受けるとカインが

「……はて、騎士っぽいとは?」

「たとえば〜、正々堂々とか〜?」

そう言いながら、ユーリが競り合いから前蹴りを繰り出す。

だが、カインがそれを後ろに飛んでかわしてそのまま森に潜む。

「……騎士にはさまざまなタイプがいます。

正々堂々と戦うだけが騎士じゃない。

……それに、君のしていることも奇襲に近いと思いますが。」

ユーリにナイフが投擲される。

これをひらりとユーリがかわす。

カインはさらに続けて

「……ところで気になっていたのですが、君はいつ戦争を経験したのです?

……君の動きや恐れ知らずな行動。実戦に裏付けられた動きに見えます。」


ユーリが警戒しながら

「強くなきゃ生きれなかったからね〜。

……アルド村って知ってる?」

この言葉に数秒の沈黙が生まれた。

そして、

「……何故その村の名を……?」

「俺、そこの出身〜。」

「……まさか生き残りがいたとは……。

……ですが、合点がいきました。」


そして、煙幕が投げられユーリの視界が奪われる。

そこに、数本のナイフが投擲される。


「うわっ!」


目の前に来るまで見えないナイフをギリギリでかわしながら凌ぐと、上からカインが降ってくる。

「くぅ〜、きつ〜い。」

ユーリがギリギリでカインの攻撃を受け止めながら、

そう言うと、カインが

「……本当に、よく凌ぐ。」

煙が晴れてきた所に、さらに煙幕を投げる。

そしてカインが離れようとした時、

「!?」

カインの腕をユーリが掴んでいた。

「ゲホッ、コホッ!はぁ〜い、捕まえた〜!」

そう言いながらユーリはカインの首を目掛けて刀を振る。

だが、すんでのとこでカインが短剣で受け止める。

「……本当に恐ろしい……!」

そういうとカインは腕を振り解き、ユーリから離れ、森に隠れる。


そして、煙が晴れるのを待つ。

だが、煙が晴れた時、そこにユーリの姿は無かった。


「!?」


カインが警戒する。

(……まさか、抜けられた?いや、であればこちら側に走る姿が見えるはず。……どこに……?)


カインが木の上からユーリを探す。

だが、見当たらない。


ユーリはすでに森を退いていた。


カインが木の上から降りて周りを見渡しながら

「……まさか自陣に戻った?」

森を見渡してもいない。

警戒しながらカインが続ける。

「……それは悪手だ。

……貴方がいなければ、本陣で私を止められるのはミハイル君のみ。

……その彼の武力は君よりは劣る。

つまり、彼に私を止めることはできませんよ?」

カインの言葉に何も返ってこない。

反応がないことを確認してカインは生徒側の陣地に侵攻する。

そして、生徒側の陣地が見えた瞬間、

「やっときた〜。じゃあね〜!」

森と生徒側の陣地の境目の木からユーリの声がした。

カインが反応するも、ユーリは教官側の陣地に向け森を走る。

退いたと見せかけ、自陣近くの木に隠れてカインが森から出るのを見てユーリがカインと入れ替わりで走り出していた。

「!?」

カインが驚愕の表情を浮かべる。

カインはその場動けず、判断に困った。

(してやられた……!彼より早く敵陣を落とす?だが、ミハイル君がいる上、バルタスが止められている……先に自陣が落とされる可能性が高い!なら!)

この間、一秒程度。

カインの判断は、

(ユーリ君を止めなければ!)

カインはユーリを追いかけて森を走る。


そして森を抜け、敵陣の東側にユーリが到達する。

それと同時に、西側に先ほどミハイルの指示を受けた三人の生徒が到達する。

その三人の中にリズの姿があった。

リズが旗を目掛けて弓を構える。

だが、エレノアはすでに気づいていた。

短剣を抜き、飛んでくる矢を打ち落とす準備をしていた。

この様子を東側から見ていたユーリが剣をエレノアに投擲しようと構える。

が、

背後にすでに近づいていたカインが短剣でユーリに斬りかかる。


「っつ!も〜、しつこ〜い!」

「……本当に、恐ろしい!」


ユーリがカインの攻撃をギリギリで受ける。


そして西側でリズが矢を放つが、

エレノアの投擲した短剣が矢を相殺する。


リズが悔しそうな顔をしながら、

また弓を構える。

だが、エレノアがその様子を見て

「させません。」

短剣をリズに向けて投擲し、

「わっ!」

かわしてバランスを崩す。

その後もリズが弓を構えるたびに短剣が飛び、

矢を射れなかった。

リズと共に西側を侵攻していた生徒二人がこっそり敵陣に忍び込む。だが、

「悪くないですね。」

そう言い、エレノアの背後から旗を取ろうとするも、エレノアが短剣を二人に投擲し、二人の肩口に刺さる。

「失格です。」

そう言うエレノアの背中にリズが矢を射る。

だが、

エレノアが振り返り、矢を素手で受け止めた。

「はぁっ!?嘘でしょ!?」

リズが驚愕する。

「私が隙を見せたのです。背中を狙うなど当然の行動です。読むまでもありません。」


西側の様子を見ながらユーリはカインの攻撃をいなす。

カインの妨害で敵陣に近づけなかった。

カインがユーリの懐に飛び込み、首筋を目掛けて短剣を振る。

それをユーリがギリギリでかわしてカインの胸を押して距離を取る。


「……よそ見しながらとは、余裕ですね。」

「まあね〜。」


ユーリは笑いながら


「隠れる場所ないときついんじゃな〜い?」


そして、次の瞬間ユーリがカインに斬りかかる。

これをカインは短剣で受け流すが、ユーリが距離を詰め、カインの胸ぐらを掴み、投げる。

投げられたカインはそのままバランスをとり立ち上がる。


おしているのはユーリだった。

だが、カインの表情は変わらない。

そして、ユーリに冷静に向き直り

「……ええ、確かに。この状況では私は君には勝てない。ただ、負けもしない。絶対に抜かせません。

……そして、周りを見てください。

矢を射るリズさん、彼女の矢は全てエレノアが防ぐ。

リズさんの手はボロボロ、矢を放てなくなるのも時間の問題です。

それだけじゃない、そこで戦っているクロード君。

彼もルシアン相手では勝てない。

そして何より、本陣は落ちかけている。」

カインの言葉にユーリが構えながら周りを見る。

矢を射る右手から血を流しているリズ、

渡り合っているとはいえ、おされているクロード。

自陣の守りが決壊しかけており、自陣には二十人ほどしかいない前衛。

カインの言う通り、戦況はこちらが悪かった。


だが、


ユーリは不気味な笑顔を浮かべた。


「一人忘れてない?」


カインが眉をひそめる。


「……何をです?」


ユーリの視線は一瞬だけ自陣へ向いた。

「うちのジョーカー。」


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