活路
「粘りやがるなぁ!」
バルタスが戦斧を肩に担いで笑いながら言う。
フレイヤも盾を持つ生徒たちも血を流しながら肩で息をして構えている。
ミハイルは戦況を見ながら
「……頃合いです!さぁ、みなさん、盾を持ってバルタス教官を抑えてください。一気に決めます!」
自陣で弓を使いバルタスの動きを止めていた生徒たちに言う。
「え、いいんですか?」「盾だけじゃ厳しいんじゃ?」
生徒たちの言葉にミハイルが
「いえ、ここが勝機です。
と言うか、このままでもジリ貧です。
決めるなら、今しかない。
さぁ、行きますよ!」
そう言い、ミハイルは槍を持って自陣から駆け出す。
そして、前衛にいるフレイヤに
「フレイヤさん、本陣から全員をここに配置します。
全員で二十人程度です……止められますか?」
ミハイルがそう言うとフレイヤが
「ふふ!余裕……!任せて!」
笑いながらボロボロなフレイヤがそう答えるとバルタスが
「ほう?止められるか。この俺を!」
巨大な戦斧をフレイヤ目掛けて振りかぶる。
これをフレイヤが
「フッ!」
「!?」
真正面から二本の戦斧で受け止めた。
バルタスは攻撃を受け止められて
フレイヤは受け止めながらミハイルに
「っ!行って!ここは絶対に守るから!」
フレイヤの言葉にミハイルは
「わかりました。任せますよ。」
そう言ってミハイルは教官側の陣地に駆ける。
だが、
「待て!」
後ろからバルタスの戦斧がミハイル目掛けて一閃。
これをミハイルが槍の真ん中部分で受け、槍が真っ二つになる。
二つのうち半分を捨て、刃がついた方だけを持つと、
「あはは、ちょうどいい長さになりました。では!」
そう言ってミハイルは再度、教官側の陣地に駆ける。
これをバルタスが再度止めようとするも
「させない!」
フレイヤが斧を投擲する。
「っ!とぉ!」
バルタスがかわす。
だが、ミハイルの姿は遠くなっていた。
「行かせちまったか!ま、しょうがねえ……。先に落とせばいいか!」
バルタスがフレイヤに向き直り、構えを取る。
そして、火花が散った。
「ふっ!」
「!」
クロードの攻撃がルシアンの肩を掠める。
(クロードの剣の速度が上がっている!)
「私が信じるのは己の剣のみ。全軍の勝利は大事ですが、それは他の者たちが果たす。」
クロードはレイピアを構え直して
「私は、あなたを超える」
クロードの構えにルシアンは控えめに笑いながら
「……そうか。来い!本気でやる!」
ルシアンが踏み込む、これまでより更に速度が上がった攻撃をクロードはかわし、受け流し、さらに反撃を加える。
「っ!見切った!」
「甘い!」
ルシアンが受ける。
その様子を見ながらミハイルはその横を駆ける。
「……ここは大丈夫そうですね。」
そのまま本陣に向かいながら、西側のリズの方を見る。
エレノアの短剣の投擲に、リズは物陰に隠れて反撃の機会を伺っていた。
「リズさん!合図をしたら、矢を射てください!」
ミハイルはそう言いながらエレノアに正面から突っ込む。
「来ましたか。ですが、遅い!……!?」
ミハイルの攻撃は正面で受け止められた。
はずだった。
「あはは、こっちですよ!」
「っ!」
ミハイルは折れた槍の一撃を受け止められたと同時にそのまま空中で一回転し、背後から突く。
これをエレノアがギリギリで回避する。
そして、そのままエレノアの背後にあった旗を取ろうとする、
「させません!」
ミハイルが旗を取る瞬間に、短剣を振るう。
「よっと、あぶないあぶない。」
すんでのところで旗は取れなかった。
「さて、どうしましょうか。」
ミハイルが折れた槍を回しながら構える。
一方、教官側の陣地の左側では
「っ!」
「もうちょい、なんだけどな〜。ま、いっか〜」
ユーリの猛攻をカインが受け流す。
カインが体勢を立て直し、踏み込み、短剣を振る。
ユーリはこれをひらりとかわし、先ほどまでいたカインとユーリの位置が入れ替わる。
そして、
「ミハイル〜!これ!」
ユーリがエレノアに向けて球体を放る。
カインは振り返り、投げられた球体をみて、驚愕する。
(あれは、私の煙幕!いつ?)
カインは先ほどユーリに投げられたことを思い出し
(あの時か!)
「これ、使えそうだから貰ったよ〜」
エレノアが飛んできた球体を短剣で弾く。
だが、
「ぐ!これは、こほっ!こほっ!」
煙が広がった。
ミハイルは煙で視界を奪われるも、旗の位置を把握していた。
旗を取ろうとした時、
「っ!待ちなさい!」
煙からエレノアの手がミハイルを掴む。
これにミハイルは笑顔を浮かべ
「今です!」
リズは確かにその声を聞いた。
「いっけぇえええ!」
矢が放たれ、旗をとらえた。
落ちた旗を掴む手がゆっくり上がる。
そして、
大きな鐘が鳴る。
勝利の音だった。
そして、「「「うおおおおおおお!」」」
生徒たちが歓声を上げて教官側の陣地に走り、ミハイルを胴上げする。
クロードがその光景を見ながら、控えめに笑う。
ルシアンがその様子を見て
(このまま続いていれば、もしや……。)
視線を外し、剣をしまいながら去る。
ユーリは胴上げの方へ歩いて行き、参加する。
「いえ〜い!」
ミハイルの胴上げがより高くなった。
カインがその様子を見ながら、隣に来たルシアンに
「……今年も、豊作ですね。」
「ああ。本当に、とんでもない世代だ。
二世代連続で、とはな。」
二人に近づいてきたエレノアとバルタスが
「……彼らを死なせてはならない。
この国の宝だ。行かせてしまうんだな……」
不安そうな顔でエレノアは生徒たちをみてそう言う。
「それがルールだろ?あいつらはその権利を勝ち取った!認めるしかねえよ!」
「……わかっている。」
メガネを抑えながら、目線は下を向く。
それ以上、何も言えなかった。
この勝負を端で見守っていた学園長、アルベールが笑みを浮かべて
「……あれがユーリ・ヴァレン。面白い。」
そう言うと隣にいたローランが
「ええ。本当に。」
珍しく笑いながら、そう言った。
夕日が広場を包む。
歓声は、日が暮れるまで続いた。




