評価
翌日
授業を終えて、放課後に実地訓練に参加し、最後まで残ったものが広場に呼ばれた。
教壇に副学園長のローランが立つ。
「昨日、失格にならなかったものは全員合格とする。」
広場に安堵の空気がながれる。
だが、ローランはすぐに表情を引き締めた。
「諸君も知っての通り、グランゼルトとの国境では断続的な衝突が続いている!全面戦争が始まったわけではないが、いつ始まるかわからない。
そこで、任務は二つ!」
ローランが二本の指を立てた。
「国境近くの住民の避難誘導、そして国境警備隊への支援だ。
なお、この実習は二年生全員も参加する」
ローランがそう言うと
ルシエラと長い橙色の髪を靡かせた女性が前に出る。
「そして、ルシエラ・クローネを隊長、フィオナ・ヴィスカを副隊長とする。」
ルシエラは静かに前を見据え、フィオナは柔らかな笑顔を浮かべた。
「国境警備隊から直接指示が出た場合はそれに従え!だが、指示がない場合はこの二人の指示に従うこと!実習は翌月から行う!以上、解散!」
そう言ってローランは教壇を降りる。
四班のメンバーは食堂にいた。
「国境かぁ……怖いね。」
リズが珍しく低いテンションで言う。
「まあな……実際の戦場に立つって考えると、覚悟してたはずなのに怖いもんだぜ。」
「……うん。わかる。」
四班に重い空気が流れる。
そんな空気に気まずそうな顔を浮かべアイクが
「実地訓練の内容は?何するの?」
「え〜っとね、国境近くの住民の避難誘導と、国境警備隊への支援だって〜」
いつのまにか隣にいたルシエラの膝に寝ながら、ユーリが答える。
これにルシエラも笑顔で受け入れ、ユーリの頭を撫でる。まるで、いつもしているかのように。
当たり前のように膝枕をされるユーリを見て、四班の面々は驚愕した。
「え!いやいやいや!どういう関係!?」
「距離感近すぎねぇか!?」
「……付き合ってる?」
そんな四班の面々の声をよそにユーリが
「でも、支援ってなにすんの〜?」
ユーリの疑問に頭を撫でながらルシエラが淡々と答える。
「別拠点との支援の受け渡し、その物資の運搬などがおもだ。
指示があれば前線の戦いに参加もありえる。
私たちも山賊等の治安維持での交戦はあるが、
他国との交戦は初めてだ。
前線への参加は余程の状況でもない限り、そんな指 示は出ないはずだ。
……だが」
自身が膝枕をしてるユーリの前髪をかき分けながら
「戦況次第ではあり得るかもしれん。
覚悟しておけ。」
ルシエラの言葉に四班のメンバーにさらに重い空気が漂う。
すると、食堂の奥からゆっくりと歩いてくる影があった。
柔らかい笑みを浮かべて
「ルーシー、その子が噂の子?」
ルシエラの膝に寝ているユーリを見てフィオナ・ヴィスカがそう聞きながら、ルシエラの正面の席に座る。
「ああ」
「ずいぶん懐かれてるのね」
「……zzz」
「あら、寝ちゃってる?ふふ。」
フィオナがユーリの寝顔を笑顔で見つめる。
するとリズがフィオナを見て
「あっ!副隊長の人!」
「ええ、フィオナよ。よろしくね。……なんか暗いわね?」
フィオナが四班の面々の空気を見てそう言いながら
「初めてで不安だと思うけど、大丈夫。困ったら私たちを頼りなさい。お姉さんたちが助けてあげるから。
フィオナの言葉にリズやアルノー、ノアが
「はい!」
「やっぱ余裕あんだな……」
「……うん、かっこいいお姉さん……」
それぞれの反応を見ながらフィオナは
「ふふ、初々しくてかわいいわね〜。
……ところでルーシー、今回の実地あいつも参加するわよ」
ルシエラの表情が変わる。
「……ガルドか」
「ええ」
二人のやりとりにリズが
「あの、ガルドさんって?」
「私たちの学年の問題児なの。まあ、腕は確かなんだけどね……」
「問題児って、何をしたんですか?」
「賭博に、命令違反、暴力行為。あげればキリがない。」
四班の面々は青い顔をする。
厳格なこの学園に素行の悪い生徒がいるとは。
だが、アルノーに疑問が生まれる。
「それ、退学にはならないんですか?」
「教官も決めかねているみたいだが……実力はあるからな」
「それに成績はいいのよね……。学園の七不思議ね」
突然、食堂の端からガタンッ!と大きな音がした。
全員が音の方を見ると、机が倒れており、生徒たちが輪になっている。その中心に倒れて見上げる黒髪の男と金髪にオールバック、ピアスを開けた二メートル近くはある野生的な出立ちの男がいた。
フィオナが金髪の大男を見て
「噂をすれば、ね」
すると、大きな音に、寝ていたユーリも起きる。
「……ん?何事〜?」
そう言って輪になってる方を見ると、何やら揉めているようだった。
輪になってる中心に倒れている男が金髪の大男を見上げて
「な、なんだよっ!暴力か!?」
「あ?お前に当ててねぇだろ。負けたんだ。払うもん払え」
「あ、あんな額払えねえよ!」
「ならなんで掛けたんだ?……実は持ってんだろ?なぁ?」
そう言うと金髪の大男は男の胸ぐらを片手で掴み持ち上げる。
「ぐ、かぁ……!?」
持ち上げられ苦しむ男をよそに、男のポケットを探り、そして探る手が止まる。
そして、ニヤっと笑いながらゆっくり男に見せつけるように
「おい、あるじゃねえか。」
そう言うと持ち上げていた男が投げられ、咳き込む。
「まいどあり〜」
金髪の大男は回収した金を数えながら去って行った。
「ふふ、こっわ〜」
ユーリが笑いながらそう言うと、ルシエラが
「あれがガルドだ。ガルド・ヴォルク。問題児だが、実力は私たちに引けをとらない。」
「……へぇ〜。」
ユーリだけが、どこか楽しそうに笑った。
食堂は静まり返っていた。




