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ヴァルディア戦記  作者: ユユ
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洗礼

開始後、突撃してきたのは教官側のバルタス・グラン

二班の教官だった。

生徒側の陣は、フレイヤ率いる前衛十五人。

その後ろにクロード率いる十五人。

バルタスの突撃に、

前衛の生徒達の動きが鈍る。


恐怖しているのだ。


初めて持つ本物の武器。

もし正面から喰らえば死ぬ。


その現実が、

候補生達から冷静さを奪っていた。


そんな中二本の戦斧を持ち、フレイヤが楽しそうな笑みを浮かべてバルタスの正面に立った。


最初に激突したのは、フレイヤとバルタスだった。

「おらぁ!」

バルタスは走りながら巨大な戦斧を振る。

戦斧が空気を裂く轟音が響く。

これに二本の戦斧を持ったフレイヤが正面から受ける。

「っく!すっごい力……!」

「ほう、受け切るか!なら、どりゃっ!」

バルタスが受けられた自身の戦斧を地面に突き刺し、

その戦斧に重心をおき、フレイヤに蹴りを入れる。

「がっ!」

二本の戦斧で蹴りを受けるも大きく吹き飛ばされる。

「ははっ!オラァ!次行くぞ!」

バルタスがそのまま本陣に向け再び突撃を開始する。


フレイヤが飛ばされた事により、前衛にさらに動揺が走る。

そんな様子を見た少し後ろにいたクロードが

「落ち着け。お前たち、こちらに合流しろ。

全体、指定位置まで下がれ。」

クロードがそう言うとフレイヤを除く前衛とクロード率いる十五人が自陣近くまで下がる。

この動きにバルタスは

「ああん?ひよってんのか!?そんなんじゃ全員不合ー!?」

ドスッ!

バルタスが引いていく生徒たちを追いかけると

落とし穴に落ちた。

その様子を自陣から見ていたミハイルが

「全員、落とし穴に弓を射てください。

それにしても、あははは!見事に落ちますね!あはは!」

ミハイルの指示に従い、自陣からバルタスが落ちた穴に向けて矢が無数に放たれる。

多くの生徒がこれで一人倒した、そう思った。

だが、

「ははっ!おもしれぇじゃねぇか!」

そう言いながら、矢を巨大な戦斧で弾きながら落とし穴から飛び出した。

この様子に生徒達が驚愕の表情を浮かべる。

自陣から見ていたミハイルが

「う〜ん、中には木で作った針があったのですが、無傷とは。

やはりそう簡単じゃないですね。

ですが、落とし穴は一つだけではない。

それに何処に何箇所あるかわかりませんよ〜。」

不気味な笑顔を浮かべていた。


だが、バルタスは構わず突撃を開始した。

「おらっ!いくぞ!うらぁっ!」

バルタスが巨大な戦斧を振るうと五人の生徒が吹き飛ばされる。

「がっ!」

「うわっ!」

吹き飛ばされた生徒の一人が、

震える手で腹を押さえる。


指の隙間から血が滲んでいた。

その様子を見ていたもの達が

「や、やべえよ!」

「し、死ぬ……!」

数人が武器を落として演習場から逃げたのである。


すると、横で見ていたローランが

「今逃げたもの、失格!さらに、バルタスの攻撃を喰らったものも失格!本気であればお前達の体は今ごろ、真っ二つだ!」

そう言われ、すでに十人の脱落者が出た。

この様子にクロードは冷静だった。

「皆、落ち着け。問題ない。自陣から十人の援軍を呼べ。おい、いつまで休むつもりだ、フレイヤ・ルーン。」

そう言うと飛ばされたフレイヤが肩を大きく回しながら

「いや〜、流石に強いね!よし、次はやられん!」

むんっ!と言いながらフレイヤが構える。

これにバルタスもフレイヤに向き直し、構える。

この様子を見ながらクロードは

「落とし穴とフレイヤ・ルーンで動きを止める。

その隙に両サイドから攻めろ。それぞれ五人ずつだ。

残りはここで俺と待機だ。」

クロードの指示と同時に、

生徒達が東西へ分かれて駆け出す。


東側には森が。西側には川があった。

地形を利用し攻める。旗を取るなら、教官を討ち取る必要はない。数で攻める。

正攻法で、最も確実な方法だった。

だが、

「まあ、そう来るでしょうね。」

自陣にいた三班の教官、エレノアが生徒側の動きを見て言う。

「ですが当然、対策済みです。」


西側、川の中を歩きながら生徒達は進む。

「よし、着いたぞ。正面の教官にバレないようにゆっくりだ。」

先頭の生徒の指示に皆が従い進む。だが、

「バレていないと思いましたか?バレバレです。」

先ほどまで本陣にいたエレノアが、短剣を構えながら正面にいた。

「お前ら!囲め!」

生徒達がエレノアを囲み、武器を構える。

「さぁ、どこからでも来なさい。」

そう言うと、生徒達は一斉にエレノアに向かう。

だが、これをエレノアはかわす。

そして、槍を持つ一人の生徒の攻撃を短剣で受ける。

受けた槍を掴み、短剣の柄で頭を打つ。

「がっ!」

「失格です。」

そう言いながらエレノアが短剣をしまい、失格となったものの持っていた槍を拾い上げ、残りの四人に向き直す。

そして、再び生徒側が一斉にエレノアに向かう。

が、一人だけ剣から弓に持ち替えた生徒だけは向かわずに弓を構えて旗に向けて矢を放つ。

だが、三人の攻撃をかわしながらエレノアは先ほどしまった短剣を投げ、矢を相殺する。

これに、矢を射た生徒が驚愕の表情を浮かべ

「なっ!嘘だろ!」

そう言うと、エレノアが持っていた槍で三人の攻撃を受け流しながら弓を持っていた生徒に槍を投げた。

「ぐあ!」

投げた槍は胸の辺りに当たった。

だが、刃がついたほうとは反対の方を向けて投げたため、致命傷にはいたらない。

「狙いは悪くありませんが、あなたも失格です。」

そして、残りの三人が倒せないと思ったのか、一人の生徒が

「て、撤退だ!」

そう言い三人は中央に引き返した。


その様子を見てエレノアはとくに追いかけることもなく自陣に戻った。


エレノアが西側の川に向かったと同時に、ユーリは東側の森から進んでいた。


だが、先に行った五人はすでにいなかった。

横を見ると、失格となり退場していた。


その様子を見てユーリが剣を構えて警戒しながら進む。すると、ユーリの背筋にぞわりと悪寒が走る

「……っ!」

森を進むユーリの頭上の木の上から短剣を持って四班の教官であるカインが落ちてきた。

これを転がりながらギリギリでユーリが避ける。

そして、カインがゆっくりと体を起こしながら

「……流石ですね、ユーリ君。……まさか避けられるとは。」

そう言いながら、ロングソードを構える。


森の中、

風が木々を揺らした。


ユーリは静かに剣を構える。


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