波紋
模擬戦後、午後の座学も終わり四班の面々は食堂に集まった。
リズが
「みんなー!コップ持った!?よーっし!四班の大勝利にーーかんぱーいっ!」
これに四班がみんなで「かんぱーい!」と続き皆がそれぞれに騒ぐ。
アルノーが
「しかし、ユーリお前全部意図してたのかよ?」
そう聞くと
「ん〜、まあ、なんとなくね〜。」
ユーリがそう答えるとリズが
「本当に驚いたよ!いや〜さすがだね!よっ!最強班長!!」
「……ふふ、最強。」
そんなみんなの様子をみてアイクが
「今回の模擬戦で、随分注目されてるよ。ユーリ。」
アイクがそう言うとユーリが
「そうなの〜?」
周囲の席からも、ちらちらと視線を感じる。
「あいつか?」
「クロードに勝ったっていう……?」
「四班の班長らしいぞ。」
そんな声が食堂のあちこちから聞こえていた。
聞き返すとアイクが
「うん。一年のクロード、彼の名前は上級生たちも知っている。そのクロードを倒した一年って事で、学園中で噂されてるみたい。」
アイクの言葉にノアが続く
「……さっきも上級生が廊下で噂してた……。」
これにユーリは
「へ〜。そうなんだ〜。ま、どうでもいいや〜。あ、うまそ〜。」
興味なさそうに夕食を食べる。
すると、四班の一人が
「……おい、あれ二年のルシエラ・クローネじゃないか?ユーリ、お前を見てるぞ。」
そう言うとユーリは
「ん?俺〜?」
そう言ってユーリが首を向けると
長い黒髪の女が、静かにこちらを見ていた。
凛々しい目つきだった。
数秒目が合うと、そのまま去っていった。
アルノーが
「ルシエラ・クローネっていやぁ、二年で最強候補の一人だな。何でも、来年は騎士団入り確実らしいぜ。」
アルノーの説明にユーリが
「え、来年?二年なのに?三年制じゃなかったっけ、この学園。」
そう言うと四班のメンバーが驚く
「お前、学園の制度も知らねえのか……?」
「常識だぞ……」
「……本当に、ヴァルディア人……?」
呆れや疑問の声がでる。
ユーリが
「え〜?そうなん?三年で卒業だと思ってた〜。」
そう言うとアルノーが
「ま、間違いじゃない。だが、見込みのある生徒は三年になると同時に騎士団に入団する。だから、今学園で一番強いのは実質二年だ。」
ユーリは「へ〜」とだけ返し、あまり興味なさそうに料理を口へ運ぶ。
そうして打ち上げは盛り上がり、気づけば一、二時間ほどが過ぎていた。
そして、お開きとなった。
打ち上げの後、ユーリは訓練場に向かった。
すると、先ほどのルシエラ・クローネが訓練用の大剣を素振りしていた。
ユーリの視線に気付き、素振りを止める。
そのままユーリの方へ歩いてきた。
「……お前か。よくアークライト家のものに勝ったな。」
そういわれるとユーリは
「ありがとう〜。でも模擬戦でね〜。個人としては負けてたよ。」
笑顔で答える。
ルシエラはユーリを見つめて
「……そうか。……お前も特訓しにきたのか?」
ルシエラがそう聞くと
「うん。なんか体動かしたい気分で〜。」
ユーリが答える。
すると、ルシエラが訓練用の剣をユーリに投げて渡す。
「すこし、撃ち合わないか?私と。」
ルシエラがそう言うと
「うん。いいよ〜。」
ユーリが言いながら構える。
ユーリの構えをみてルシエラが踏み込む。
大剣を持っているとは思えない速さだった。
ルシエラの大剣が振り下ろされる。
轟音。
石畳が砕ける。
ユーリは紙一重で避ける。
「うわ、あぶな〜。」
だが、ルシエラは止まらない。
次の瞬間、
再び大剣が迫る。
ユーリが笑う。
「二年って、みんなこんな強いの〜?」
そして——
その時、
「そこまでだ!」
大きな声がした。
ローラン・ヴェルディエ。
入学時の案内をしていた副学園長。
「これ以上は訓練場がもたん。二人とも、もう訓練場から出ろ!」
そう言われて二人は武器を片付け訓練場を後にした。
一人残ったローランが
「はあ……またクローネか。壁の修繕が必要だな……。」
(しかし、クローネを相手にして無事とは……。
模擬戦とはいえ、アークライトを破った実力は本物か。ヴァレン。)
ローランが思考を巡らせながら、壁の修繕の見積もりをメモに書く。
「……また予算申請か。」
ローランの苦労はつきない。
訓練場を出た二人は大浴場に向かっていた。
「ねぇ〜、二年で一番強いんだって〜?」
ユーリにそういわれるとルシエラは
「さあな。二年には私以外にもまだ強い奴もいる。」
そう答えるとユーリが
「ふ〜ん、そっか〜。ね、なんでさっき俺に剣渡したの?模擬戦見てたの?」
ユーリに聞かれてルシエラは
「ああ。見ていた。」
「そうなんだ〜。」
それ以降、二人は黙ったまま廊下を歩く。
夜風が吹き抜ける。
そして大浴場の前で別れ、
ユーリは疲れを癒した。




