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ヴァルディア戦記  作者: ユユ
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異端児

クロードが自陣から離れたと同時に、ユーリは東側の森を駆けていた。

無数の矢が飛んでくるがユーリは全て打ち落としていく。

「なっ!当たらねえ!打ち落としやがる!」

「早い!化け物か!ぐはっ!」

「クソ!自陣に伝えろ!」

東側の一班たちに動揺が走る。

「はいはい〜!自陣には言わないで〜!」

森をユーリが駆け抜けながらユーリは舞うように敵の間をすり抜ける。

振るわれた剣を紙一重で避け、訓練用の剣で喉や手首を正確に打ち抜いていく。

そうして、東側の森にいた一班は全滅した。


そして、先ほど指示を無視して思い思いに動き、この東側を攻めていた四班のものたち二人にユーリは

「僕が注意を惹きつけるから、その隙にこっそり相手陣に忍び込んでて〜。」

そう言うと、四班の二人は

「お、おう!任せろ!」

「わ、わかったわ……!」

ユーリが、敵を制圧した様を見て二人は驚きを浮かべながら答える。

そして、二人の返事を聞き笑顔を浮かべてユーリは敵陣に走り出した。


ユーリが自陣に向かっているのを一班の連絡役が驚きながら確認し、中央の攻めに参加したクロードに大きな声で伝えた。

「東側より、敵が自陣に接近中!クロード様!ユーリ・ヴァレンです!」

そう言うと、中央を制圧していたクロードが驚きの表情を浮かべる。

「俺を自陣から離したかったのか……!まずい!」

クロードが自陣に戻る。


そして、ユーリが一班の陣地に到達する。

陣地を守っていた者たちがユーリを撃退しようと襲いかかる。

が、ユーリは敵の攻撃を舞うようにひらりとかわしながら敵を一人ずつ確実に倒していく。

あと少しで旗に届く。

その様子を自陣から見ていた四班の面々が

「おお!すげぇ!」

「いけぇ!もうちょいだ!」

四班の士気が上がる。

「ははっ!すげえぞ!クロードを出し抜きやがった!」

「すごい!すごい!後は耐えるだけだね!」

「……班長、ただのサボりじゃなかった……。」

アルノー、リズ、ノアたちも驚く。

アイクが驚いた様子で

「まさか最初からこれを狙って……!?」

ユーリの好き勝手な動きに釣られ、四班の連携は完全に崩れていた。

その結果、クロードは自ら前線へ出るしかなくなった。

「……僕たちすら利用して、か。すごいな、君は。」

アイクは笑いながら言う。


ユーリが敵陣の兵たちを倒していき、旗に手がかかる。が、その瞬間、クロードの突きがユーリに放たれる。

ユーリはすんでのところでかわし、クロードと距離を取る。


「え〜?これ間に合うんだ。すごいね〜。」

ユーリが笑いながら言う。

これにクロードは

「すごいのはお前だ。まさか、味方の動きすら利用するとは。恐れ入った。」


二人が構える。


一年の各班の教官たちはこの模擬戦を見ていた。

一班の教官である、ルシアン・ベルフォールが、

「……センス任せ。だが、クロード・アークライトが後手を引くとは。

入学試験でも思ったが、奴は一体何者だ……?」

ユーリ・ヴァレンを見て言う。

これに四班の教官であるカイン・アーヴェルが

「……経歴は不明ですが、あれは戦場を経験しているようですね。……そして、戦場で一番やりづらいタイプだ。」

そう答える。

二班の教官であるバルタス・グランが

「こっからは一騎打ちだ!さぁ、見ものだぜ!」

そう言うと、三班の教官であるエレノア・ルグランが

「完成度だけで言えば、アークライトかもしれんが、ヴァレン……奴の動きは読めん。その上、実践的な剣で練度も相当なものだ。どちらにも分があるだろうな。」

これにルシアンは

「いや、さすがにクロード・アークライトが勝つ。

ユーリ・ヴァレン、奴の剣技は認めるが現段階ではまだクロード・アークライトが上だ。」

ルシアンは反論する。

だが、その意見にカインは

「……かもしれません。……剣技だけで言えば。……ただ、あれは戦場で化けるタイプです。」


そして、戦況は進んでいく。

一班は四班の自陣に迫っていた。

「くそ!まずい!」

「敵が自陣に入ってきてるぞ!」

「持ち堪えろ!」

散り散りになっていた四班がユーリの行動を見て、まとまりを取り戻し、自陣の守りに徹する。

「ユーリが勝つまで持ち堪えろ!いくぞ!」

アルノーが鼓舞し、四班は何とか持ち堪えていた。


一班の陣地ではユーリとクロードが両者構えたまま動かない。すでに読み合っている。

先に動いたのはクロードだった。

速い突きを繰り出す。

ユーリはひらりと舞うように避けると同時に、クロードの背後へ回り、一閃を放つ。

だが、クロードもそれを読んでいた。

身を捻りながら振り向き、鋭い突きを返す。

お互いの攻撃はどこにも触れることはなく、空を斬り続けた。


三班の教官であるエレノアが二人の戦いを見ながら「やはり互角か。」

そう言うと、一班の教官であるルシアンは

「いや、違う。クロード・アークライトの突きはユーリ・ヴァレンを掠めている。実戦なら血を流している。」

と、反論する。

「……ええ、やはり剣技ではクロード君、彼の方が上かもしれない。……ですが、一人の勝利は必要ない。……これは、旗をとる勝負です。」

四班の教官であるカインがそう言うと

二班の教官であるバルタスが言った。

「だったら尚更、長くなると危ねえだろ!

一騎打ちも旗取りも、おしてるのは一班だぜぇ!」

確かに、おしているのは一班だった。


だが、ユーリの表情は違っていた。

「やっぱ強いね〜。」

ユーリがいつもの調子で言う。

不気味な笑顔を浮かべながら。

その表情を見てクロードは

「何がおかしい?」

クロードがそう言うと

「いや〜?なにも〜?」

ユーリがそう言いながら、クロードに斬りかかる。

遅い攻撃だった。

クロードはこの攻撃に違和感を覚えつつも反撃に転じる。ユーリの攻撃をかわして突きを放った。だが、そこにユーリはいなかった。背後に回り、一撃。また、同じ攻撃だった。さらに先ほどより遅い攻撃。難なくかわし、突きを放とうとするが、すでにクロードの懐にユーリはいた。ユーリの突きが繰り出される。

「クッ!」

クロードはすんでのところで受け流した。

金属音が鋭く響く。


四班の教官であるカインが

「……速度の緩急をつけて、クロード君の感覚を鈍らせた。……面白い。……速度だけじゃない。間合いそのものを狂わせている。」

これに一班の教官であるルシアンが

「だが、クロード・アークライトには届かない。」


「これは長くなるね〜。」

ユーリがいつもの調子で言う。

それにクロードが

「いいのか?時間をかければ、お前の自陣が落ちるぞ。」

実際、四班の陣地はギリギリ持ち堪えている。

「そうだね〜。じゃ、そろそろかな〜。」

ユーリの言葉にクロードが眉を顰める。

「一体何を……?」

ユーリがまたクロードに斬りかかる。今度は速かった。が、クロードは受け流しながら反撃していく。

そして、クロードの反撃ユーリの方に当たり、ユーリの剣が宙に舞う。

「いった〜!」

「終わりだ。」

クロードがそう言いながらユーリに突きを放つ、が

ユーリは笑顔を浮かべていた。そして、

「いいの?俺だけに集中してて。」

そう言うと、クロードの突きをかわしながら宙に舞う剣をユーリが蹴り飛ばす。

蹴り飛ばした先には一班の旗があった。

「!?」

クロードがその意図を理解した時には遅かった。

蹴り飛ばされた剣は旗に当たり、落ちる。そして、東側でユーリの指示でこっそり忍び込んでいた四班の二人が旗をとる。


鐘がなった。試合終了の合図だった。

「そこまで!四班の勝利!」

ジャッジ役の教官が告げると、四班の陣地から地面が揺れるほどの歓声が上がった。


「俺たちの勝ちだ!」

「やったわ!!」

「うおおおおお!やったぞおおお!」

「やったあ!!すごいすごーい!!」


クロードが悔しそうな顔を浮かべていたが

「ふ、面白い。」

控えめな笑顔を浮かべた。


ユーリはクロードに突かれた肩をおさえながら一班の陣地を去っていく。

「いたい〜。帰ろ〜。」

そう言いながらユーリと旗を持った二人が四班の陣地に戻る。

すると、

「やったあああ!」

「お前すげえぜ!」

四班のみんなが全員でユーリに駆け寄り、ユーリを胴上げする。

「わ〜〜!たか〜い!!」

ユーリは笑顔を浮かべてされるがままだった。

そんなユーリの様子をみて

アイクが

「本当に、すごいな君は……。」

そう言い、胴上げに参加する。


一班の教官であるルシアンは

「まさか、本当に勝ったというのか!あのクロード・アークライトに!」

驚きの表情を浮かべていた。

これに二班の教官であるバルタスは

「はっはっは!いやあ、すごいもんが見れたなぁ!」

楽しそうに笑う。

三班の教官のエレノアは

「……ああ、アークライトはヴァレンという想定外のものにしてやられたな。……ヴァレン、やつは本当に何者だ……?」

これに四班の教官であるカインは

「……ええ。……本当に、何者なのか。……異端児、ですね。」

そう答えた。


一班のものたちがクロードの元に集まり、

「申し訳ございません!クロード様!」

「攻め落とせませんでした。」

そう言うとクロードは首を横に振り、

「いや、俺も出し抜かれた。この戦いは、ユーリ・ヴァレン。奴に負けたな。……本当に、とんでもない奴がいたものだな。」

そう言い、クロードが胴上げされているユーリの様子を見ながら、

「ふ、面白い。」

そう言ったクロードの表情は控えめな笑顔を浮かべていた。


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