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ヴァルディア戦記  作者: ユユ
15/17

激突

大剣とハルバードがぶつかる。


ガキイィィ!


「!?」


ルシエラは攻撃が防がれた事に驚いた。

まさか、自分の速さに追いつくものがいるとは。

大剣を振るいながら、距離を取る。


相手の背後に転がり、息絶えた自国の戦士たちを見る。

国境を通すまいと自らの命をかけて戦った戦士たち。

彼らの戦いを無駄にはしない。

ルシエラの大剣を持つ手が強く握られ、そして強く地面を蹴った。


大剣を振るいながら空中に跳んで体を旋回し、そのまま落下と回転の威力を乗せてウォルター目掛けて大剣をぶつける。


「!?」

ウォルターの瞳が見開かれる。


受け切れない。


そう判断し、ウォルターは後ろに飛んでかわす。

大剣は地面を砕き、その反動でルシエラは再び跳び、ウォルターめがけて大剣をぶつける。

「っ!」

かわしきれず、ウォルターがハルバードで受け止め、ウォルターの体がわずかに後ろに下がる。

お互いの武器がぶつかり合いながら、ルシエラは

「……グランゼルトは何が目的だ?戦争か?」

「……」

ウォルターは答えずハルバードを振り、ルシエラは距離を取る。

すると、ウォルターはハルバードを槍投げの要領で投げつけた。

風を切る鋭い音を鳴らしながら、顔面めがけて飛んでくる。

ルシエラは大剣を正面に構えて防ぐ。

なんて事はない攻撃だ。

だが、投げられたハルバードに意識が向いたその一瞬のうちに、ウォルターの足が眼前に迫っていた。

「っ!!」

ルシエラはさらに大剣を構え、蹴りを受け止めるが、


(なんて力だ!)


ルシエラの体が大きく後ろに吹き飛ばされる。

吹き飛んだ体が地面に打ちつけられる前に空中で体を回転させて、着地した。


だが、ウォルターの攻撃の手は止まらない。

投げたハルバードを拾い上げたウォルターがさらにルシエラに襲いかかってくる。

横からのハルバードの一閃を、ルシエラは痺れた手で大剣を地面に突き刺し、受け止める。

ウォルターが初めて口を開いた。

「その制服……学生か?」

「……ああ、そうだが。」

ウォルターは一瞬目を見開く。

「……才ある若者は、ここで摘んでおこう。」

ウォルターがそう言うと、ハルバードを地面に突き刺して手放し、ルシエラの胸ぐらを片手で掴み持ち上げる。

「ぐ、あっ!」

体が宙に浮く。

ルシエラは持ち上げられたままウォルター目掛けて大剣を振り下ろした。

しかし、ウォルターのもう片方の手で大剣を持つ腕が掴まれた。

(バカな!)

受け止められたルシエラに驚愕の表情が浮かぶ。

両手で振り下ろした攻撃が片手で受け止められるとは。

動揺するうちにルシエラは地面に叩きつけるように投げられる。

「がはっ!!」

ドゴッ!

と鈍い音が響く。

骨が軋むのを感じながらルシエラは苦悶の表情を浮かべたまま顔を上げる。

すると自身の首元目掛けてハルバードによる横薙ぎの一閃が振るわれる。

「!?」

これをなんとか大剣で受け止めるも、ウォルターの膝がルシエラの顔面を捉えて、体が後ろに飛ばされる。

「ぐ、あぁ!」

意識が飛びそうになりながら、歯を食いしばりなんとか耐える。

鼻から血が滴り落ちながら顔を上げる。

見るとウォルターが振りかぶっている。

振り下ろされるハルバードを後ろに跳んでなんとかかわした。

だが、ウォルターの攻撃は終わらない。

迫り来る鋭い突きを大剣で受け流しながらルシエラは空中で回転し、大剣に体重を乗せ、斬りつける。

これをウォルターは半身を逸らしてかわす。

強く地面を叩きつけたルシエラの大剣が土の地面に大きく食い込んでいた。


ルシエラは地面に刺さった大剣を振り上げる。

ウォルターは後ろに飛びかわした。

大剣が絶対に届かない距離。

攻撃を見切ったウォルターは反撃の構えを取る。

だが、

「!?」

ふいに、ウォルターの目に鋭い痛みが走る。

振り上げられた大剣と同時に舞い上がった砂が目に入り、視界が奪われた。

「っ!」

ウォルターの構えが崩れる。

ルシエラはその隙を見逃さず、肩口から袈裟斬りの要領でウォルターを斬りつけた。


「……ぐっ!」


ウォルターの体から血飛沫が上がり、片膝が落ちた。

(一気に畳み掛ける!)

ルシエラはウォルター目掛けて大剣で斬りつける。

これをウォルターはなんとかかわしながら、大きく後ろに飛び、距離を取る。

ウォルターの目はすでに開かれていた。


「骨が折れる」

ルシエラは控えめな笑みを浮かべながらそう言うと、ウォルターの口角が上がった。

「……面白い。」

そう言いながらウォルターはハルバードを自身の頭の上で旋回させ、構える。


(今まで戦った誰よりも強い)


こいつを進ませてはならない。

鼻から滴る血を手で拭い、大剣を構える。


ルシエラは地面を強く蹴り、ウォルターに斬りかかった。



二人の戦いの背後では、グランゼルト軍を突破させまいと学生たちが奮闘していた。

第三砦はすでにグランゼルト軍に制圧された。

砦の背後には石で作られた壁が大きくそびえ立つ。

門を突破されれば侵入を許してしまう。

その門の前に立ち、盾を持った二年生たちが横一列に並び、盾を前に構えて、グランゼルト軍を阻んでいた。

「隊列を組め!」

「よし、突撃!押し返せ!!」

「「「おおおお!!!」」」

クロードの策は、盾兵で敵を後ろに下がらせ、体制を崩したところをガルド、ユーリ、クロード、フレイヤが遊撃し、倒して行く。敵の兵が隊列を組み直すとまた盾兵の後ろに隠れ、押し返す。

「よし!いいぞ!」

「これなら何とかなる!」

盾を持った二年生たちの士気は高い。

だが、目の前には二百近い軍勢、対して自軍は数十人。

圧倒的な数の差があった。

この策でなんとか対抗できてはいるものの、

(長くは続かない。)

クロードは冷静だった。

すると、

「クソっ!!!……おい、砦にある油を奴らに撒け!!」

グランゼルト軍の指揮官がそう言うと、第三監視砦の中を制圧したグランゼルト軍の兵たちが油の入った樽を二人がかりで盾に向かって投げつけていく。

そして、

「火を放て!!」

放たれた火矢、松明などが引火し、盾を持った学生たちの盾や目の前に火が燃え盛る。

「うああああ!!」

「あつ!!」

盾を持っていた学生たちに火が燃え移り、体制が崩れる。

指揮官はその隙を見て、

「矢を放て!!」

そう言うとグランゼルト軍の矢の雨が盾を手放した学生たちに降りかかる。

「がっ!」

「ぐあ!!」

前線で盾を構えていた学生たちが次々と倒れていく。

「落ち着け!!」

動揺は一瞬だった。

盾を持った二年生たちの一人の声が響く。

実地訓練を幾度も経験している二年生たちは落ち着いて、新しい盾を持ち、隊列を組み直す。

「盾を構え直せ!」

「「おう!!」」

持ち直した盾兵を見てクロードは

(……限界か)

この策の限界を感じ、何かいい策はないかと考えているとユーリが

「……ジリ貧だね〜」

「ああ、どうしたものか……」

「もう全員で突撃して突破される前に倒すしかなくない?」

「……これは防衛戦だ。後ろに抜かせないことを最優先に考えなければならない」

「ん〜じゃあ全員じゃなくて、ガルドパイセンとクロードとフレイヤだけで行くのは??」

ユーリの提案に少し考えてクロードが

「……そうしよう」

そう言うと隣で聞いていたガルドの口角があがり、

「よし、まずは砦だな」

そう言うとガルドは砦に向かってそれぞれ突撃した。


グランゼルトの指揮官は出てきたガルドに

「バカめ!蜂の巣にしてしまえ!」

そう指示を出すと、ガルド目掛けて矢の雨が降りかかった。

ガルドはすぐそばにいたグランゼルト兵を殴り、意識を飛ばすと盾代わりにしながら、砦の方は向かった。


クロードはその光景を見ながら、

「お前はどうする?」

ユーリに聞くと

「全員で行くのは危険でしょ?俺は壁に残るよ」

「防衛か。確かに必要だ」

「でしょ〜?」

「ああ」

「なら、そっちは任せて。」

ユーリはそう言い終わるとあ、でもと続けて

「みんなで敵の注目を惹きつけてくれたら、上手くやるからさ」

クロードは少し考える。

「上手くとは?」

「指揮官は殺さないとでしょ?それが手っ取り早いしね」

……こいつなら何か方法があるのかもしれない。

そう思いクロードは

「……わかった、任せる。自由に動け」

「おっけ〜」

こんな時でも変わらないユーリを見てクロードの表情が一瞬緩む。

相変わらず読めない男だ、と思いながら少し離れたフレイヤを見て

「……フレイヤ・ルーン!俺たちも行くぞ。敵陣を突破する!」

「うん!」

そう言い、フレイヤは駆け出す。

クロードは盾を持った二年生達に

「必ず、この壁を死守していただきたい」

二年生たちが頷く。

そして、クロードも突撃した。


ガルドが矢を凌ぎながらようやく監視砦の中に入った。

砦の中には油の入った樽を持ち上げながら、攻撃の準備を進めるグランゼルト兵が数人。

入り口付近の兵がガルドの侵入に気付き

「貴様っ!」

ガルド目掛けて剣を振り下ろすも

「おらっ!!」

「ぐぁっ!」

ガルドはグランゼルト兵の顔面を殴打し、持ち上げ、兵の集団に向かって放り投げる。

「て、敵襲だ!」

その声にグランゼルト兵たちの視線はガルドに集中した。

そしてグランゼルト兵が体勢を整えて、一斉に襲いかかる。

「「うおおお!」」

先頭にいた兵が両手で剣を振り下ろすと、ガルドが相手の首に手を回し、体を引きつけて鳩尾に膝蹴りを叩き込む。

「ぐはっ!」

胃液を吐き出し、兵が前屈みになると、剣を奪い取り、兵を振り回して投げる。

「うわぁ!」

「か、囲め!」

兵たちは動揺しつつもガルドの周囲を取り囲む。

ガルドが正面を見ると兵の背後に樽が見えた。

「おらっ!」

ガルドは先ほど奪いとった剣を樽に向かって投げつけた。

剣が樽を壊して油が漏れ出る。

ガルドが砦の窓のすぐそばに立てかけてある松明を取り、油に向かって放り投げた。

垂れていた油に松明が落ちる。

次の瞬間、炎が一気に燃え盛った。

「ぐあああ!!」

「ああ!熱い!!」

次第に、火はグランゼルト兵たちにも引火する。

その光景を見てガルドはニタァと笑い、


「借りは返すぜ。」


そう言って砦の窓から飛び降り脱出した。



クロードとフレイヤは軍勢に囲まれていた。

「二人だけだ!取り囲め!」

「槍で刺し殺せ!」

クロードとフレイヤが背中を合わせになり構えると、その周辺をグランゼルト兵たちは取り囲み、盾を構え、攻撃を守る形を取りながら盾の隙間から槍の突きを放たれる。

隙を作らず、確実に敵兵を追い詰めて殺せる形だった。


……並の兵であれば。


「おりゃ!!」

フレイヤが二本の戦斧を盾に目掛けて打ち付ける。

その攻撃に、盾兵が体勢を崩す。

「クロード、今!」

「よしっ!」

フレイヤの声に、背後のクロードが振り返りながら崩れたところにレイピアを振るう。

「ぐわっ!!」

「うわあ!」

盾の背後にいた兵たちの腕や指が宙を舞う。

兵たちの体制が崩れ、二人はそこに駆け出していく。


フレイヤは二本の戦斧を振るい、駆けていく。

剣で防ごうとするも、フレイヤの膂力によって剣が砕かれ、そのまま胸元まで斬撃を浴びる。

「ぐわっ!!」


「クソ!防げねえぞ!!」

防御不可の攻撃を見たグランゼルト兵たちに動揺の顔が浮かぶ。

すると、フレイヤの横から槍兵が突きを放つ。

これをフレイヤは身を捻ってかわし、その勢いのまま跳躍し、宙で一回転。

二本の戦斧がグランゼルト兵目掛けて弧を描いた。

「ぎゃああ!」

「がはっ!!」

着地と同時に、兵たちが血飛沫を上げながら吹き飛ぶ。



クロードはレイピアで首元の動脈、手首の動脈など的確に急所を斬りつけていく。

「ぐわぁっ!」

「あああ!血がああ!!」

噴き出る血を押さえながらグランゼルト兵たちは倒れていく。

クロードの背後から槍が突かれる。

クロードは身を翻し、槍を突いた兵の背後に回り、首元の目掛けて一閃。

首と血飛沫が大きく宙を舞い、返り血がクロードの頬を赤く染め上げる。

その光景を見た一人のグランゼルト兵が腰を抜かした。

「あ、ああ!化け物めっ!」

腰を抜かし、もんどりを打った兵士が見上げると、

クロードが歩いて迫ってくる。

「ひ、ま、待ってくれ!がっ!」

クロードのレイピアが容赦なく胸を貫く。

「侵略者ども、容赦はせん」

胸を貫いたレイピアを引き抜き、ついた血を軽く払い落とす。

背後の月に照らされ、頬を血に染めたクロードが敵陣を見る。

その光景を見ていたグランゼルト兵たちは武器を持つ手を大きく震わせた。


二人の快進撃にグランゼルト兵に恐怖が伝染していく。


この光景に指揮官は動揺した。

(こ、こいつら学生なんじゃ……!?)

気づけば自軍の兵たちは残り数十人。

さらに横からガルドが合流し、自身に向かう敵兵の勢いは増していく。

背後を見れば、ウォルターが死闘を繰り広げている。二人を討ち取ることはできないとわかると敵指揮官は

「ま、守れ!全員、盾を持って俺を守れ!」

上擦った声で叫ぶとグランゼルト軍は指揮官の前で盾を持ち、何層にもわたって守りを固めていく。

さらに、その後ろから弓を用いて牽制。

ようやく、クロードとフレイヤの足が止まった。



ユーリは自陣に襲いかかる敵兵を、盾兵たちと協力しながら倒していた。

次第に敵兵が引いていく。

前を見るとクロードとフレイヤの進撃に敵は指揮官の近くまで下がり、守りを固めていた。

「……届かなそう〜」

敵指揮官まではかなりの距離があり、その上、敵兵は数十人。

勝てないと判断して敵は守りを固めている。

どうしたもんかな〜と思いながらふと、倒れている敵兵を見た。

(……使えるかも)

ユーリは閃き、悪戯な笑顔を浮かべた。


「くっ〜!めんどーな事してくれるわね!」

「まあ、攻めてこないならそれはそれでいいが……」

とはいえ、また敵指揮官を討つのが難しくなったな。

そう思いながら、クロードは

「……まあいい。俺たちはこのまま、突破を目指す」

「考えがあるの?」

「さあな」

「へ?」

クロードにしてはふわふわした指示だなぁと思いながらフレイヤはクロードを見つめる。

視線に耐えきれなくなったのか、クロードは顔を逸らして、咳払いする。

「奴らの視線を俺たちに集める」

「ふ〜ん、ま、いっか。やろうやろう!」

そして、盾兵に向かって二人は駆け出す。



盾兵で自身の守りを固めた。

だが、クロードとフレイヤの猛攻に自軍が少しずつ押されていく。

この光景を見ながら指揮官は

(これでもダメか!)

そうも思い、ゆっくり後ずさる。

(……勝ち目がない。逃げよう)

後ろを向いて走り出した。

背後から「指揮官!?どちらに!?」

などと聞こえるが、

知ったことか、こんなとこで死ねるわけないだろう。

指揮官は必死に走り続ける。

だが突然、

「ねぇ、どっか行くの〜?」

視界の横から自軍の隊服を着た兵士が現れた。

「なっ!き、貴様!一体どこから!?」

「ん〜?その辺?」

兵士は軽い様子で答える。

自身にタメ口を聞く兵士に怒りを覚えたが、

今はそれどころではない。

逃げなければ。

「何をしている!突撃しろ!」

「突撃?おっけ〜」


そう言うと兵士は、剣を抜いて突きを放った。


……こちらに向かって。


「……は?」


熱い衝撃が胸に走った。

見下ろすと自身の胸に剣が深々と突き刺さっている。


「……あ!?がっ!」


訳がわからないまま指揮官は膝を折る。

指揮官は自分の胸を刺した兵士を見上げて

「あ、な、何故……?」

そう言われると兵士は口角を上げ、隊服を脱ぎ捨て、鎧を取る。

その顔は最初に自軍に突撃していたユーリだった。

「潜り込んで……?」

「うん、あの二人が惹きつけてくれて楽だったよ〜」

ユーリは笑顔を浮かべながら剣を片手で回しながら、

「じゃ、ばいばい」

そう言って胸を突き刺した剣を引き抜き、一閃。

指揮官の首を刎ねた。

ユーリはその首を持ち上げて

「はいは〜い!注目〜!!」

近くにいたグランゼルト兵が振り返ると、自身の指揮官の首が掲げられている。


「指揮官死にました〜!はい、解散解散〜!!」

ユーリの声が響き、その光景を見てグランゼルト兵たちは呆然とし、武器を落としていった。


一人の兵士がウォルターに駆け寄ってくる。

「ウォ、ウォルター様!いかがいたしますか?」

ウォルターは攻撃の手を止め、周囲を見る。

数百いた自軍の兵士は数十人まで減らされている。

敵兵に掲げられている自軍指揮官の首。

……旗色は良くない。

「……撤退だ」

「はっ!」


兵士が駆け出し、撤退だ!!と指示を出す。


ウォルターはルシエラを一瞬見て、すぐに身を翻し自軍の方へ歩いていく。


守りきった。


ルシエラはふぅ、と息をついた。

そして、ルシエラも自軍の方に向かって歩き出し状況を見渡す。

そして、

「全員、よくやった」

そう言うと学生たちは歓声を上げた。


だがルシエラが表情を緩めたのは一瞬、

「だが、これで終わりではない」

そう言われると二年生たちの表情がまた引き締まる。

「怪我人は下がらせて、次の襲撃に備えろ」

ルシエラの指示におう!と声が上がり、二年生たちは準備を進めた。


すると馬に跨ったフィオナが現れた。

背後には隣の砦からの援軍である数十人程度の警備隊の姿もある。

フィオナが馬を降りてルシエラに近づく。

「ごめんなさい、遅かった?」

「いや、またすぐ来るかもしれない。指揮を頼む」

「ええ、了解」

ルシエラがそう言うとフィオナが準備を進める二年生たちの方へ歩いて行く。


するとユーリがルシエラに駆け寄る。


「ユー、よくやった」

「えへへ〜、鼻大丈夫?」

「ああ。問題ない」

ルシエラがユーリの頭を撫でると猫のように目を細めて甘える。

近くで見ていたフレイヤが

「あの二人どういう関係?」

隣のクロードに聞くと

「知るか」

そう言いながら呆れた表情でクロードはグランゼルト領を望遠鏡を使い覗いた。

すぐにクロードの表情が変わった。

「……隊長、奴らすぐに来ます」

クロードに言われてルシエラが驚きで目を見開く。

「なに?」

ルシエラが望遠鏡を受け取りグランゼルト領を見渡す。

見れば投石器、そして先程よりも遥かに多い軍勢を率いてウォルターともう一人の兵士を先頭に進軍してきている。


次第に、地面が軍勢の足音で震えた。


「まずい……!」


(この数では、守りきれない)


望遠鏡を持つ手に力が込められた。


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