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ぼっち令嬢と元竜王  作者: ゆるゆる堂


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18/25

第18話 前世の2人と邂逅の場

 ふと気づくと、周りに広がる景色は、6年過ごしたあの竜王の宮殿だった。

 ここは、ユキコさんが最期を迎えた場所、新しい王が生まれた場所だ。

 これは多分、夢。

 全て思い出してからは夢を見ることがなかったから、なんとなく、懐かしい。久しぶりの感覚に、私はキョロキョロと周りを見回した。

 さて、なんで私はここにいるんだろう?パーティはどうなったっけ?

 頭の中を整理する。

 ええと、そうだ。

 婚約発表パーティは恙無く終わって、国王様と王妃様がジェイク様に私を屋敷まで送るように命じて、ジェイク様が嬉しそうにそれに従って…。

 確かそのあとジェイク様は我が家に泊まっていくことになったんだ。

 お客様用の寝室を整えて、おやすみといって私は自室に戻った。


「久しぶり、いまの私」


 後ろから声をかけられて慌てて振り返ると、黒髪の女性が苦笑いをして立っている。


「ユキコ、さん」

「まさか本当に、また会うことになるとは思わなかったな」

「わ、私もです。ええと、これはどういう状況なんでしょうか」

「うーん。私も良くわからないんだよね。というか、なんで私たちがこうして会話できてるのかも未だに疑問で」


 私たちは同じ魂。

 それがこうして会話しているというのは、どういうことだろう。

 思念だけ別になってるのか、魂が分裂している?いや、そんなはずは。

 夢の中とはいえ、記憶だけの存在なら会話が成り立つのはおかしいし。


「リーア、ユキ」

「!?」


 これは私の夢だ。

 なぜ、貴方が。

 私に声をかけたのは、ジェイク様で、そのそばには、竜王が立っていた。




***




「りゅう、おう」


 掠れた声で、ユキコさんが呟いた。


「ユキ、久しぶりだね」


 竜王の声は、記憶にあるとおり優しくて、暖かい。

 竜王はゆっくりとユキコさんに近づき、抱きしめる。

 あ、ああ、と声にならない声をあげて、ユキコさんは強く竜王を抱きしめ返した。

 2人は溢れる涙を拭おうともせず、ただただ抱きしめ合う。

 今はもうユキコさんの感情は私に直結しているというわけではないようで、目の前の光景対するになんとも言えない感動は感じるのだけど、嬉しいとか愛しいとかは感じない。

 それはジェイク様も同じようで、ただ呆然と2人を見つめている。


「ジェイク様、あの、貴方はジェイク様です、よね?」

「同じ質問を返したい。これは、俺の夢ではないのか?」

「わたくしは、わたくしの夢だと…」

「それには、私が答えよう」


 ユキコさんを抱きしめたまま、竜王は柔らかく微笑んで、私たちのほうを見た。


「ここはね、夢という形をとっているけど、夢ではないんだよ」

「どういうことだ?」

「ここはね、邂逅の場、とよばれる空間なんだ。本来会うはずのないもの同士が出会う場所。姿形は私達全員の記憶にある場所になっているね。私たちが再会したのも、私が今の私にあうことができるのも、本来ならばありえないことだけれど」


 竜王は困ったように笑う。


「世界の王と生贄が同じ世界に生まれ変わって再び出会って結ばれる、なんてとんでもない確率のことが叶ってしまっているし、まあ、こういうこともあるだろうね」

「そんな大雑把な…」


 竜王の説明にジェイク様が苦笑した。


「変わらないね竜王。で、会えたのはわかるんだけど、これってなにかの“必然”なのかな。それともただの偶然?」


 ユキコさんが竜王に寄り添ったまま見上げる形で竜王に問う。


「うーん、どうだろう。私はもう王ではないし、そもそもこの世界は私の世界ではないからね。この世界の必然については知ることはできない」

「というと?」


 ユキコさんが続きを促す。


「私が守っていた世界で起こること、例えばそうだな、勇者が生まれて魔王と倒すとか、ああいや、実際にそういうことが私の世界であったわけじゃないよ、これはただの例え話だ。とにかく、そういうことが世界にとっての必然、というのは感覚でわかるものなんだ。でも今は私はもう死んでいるし、ジェイクも王族ではあるけれど世界の王ではないからね。私たちがこうして出会っていることに意味があるのか、ないのかはわからないんだ」


 でも、と竜王はゆっくりと私とジェイク様の方を向いた。


「ジェイク、リーア。貴方たちは、何かを望んでいるかい?」

「え?」

「邂逅の場は、一説によると強い望みで扉が開くとも言われているんだ。私たちはもう死んでいるからね。その説が正しいのであれば、リーアやジェイクの望みで扉が開いたのかなと思って」

「望み、ですか」


 私とジェイク様は顔を身合わせた。

 強い願い、望み。


「「大切な存在を守りたい」」


 声がかさなる。


「俺は王族で、いずれはリーアの伴侶となる。国も、愛しい人も守れる力が欲しい」

「わたくしは、ジェイク様も、この国も大切です。だから、わたくし達が結ばれることで呼ばれる悪に立ち向かう力が、欲しいです」

「ふふ、なんだろ。面白いね」


 私達の言葉に、ユキコさんが笑った。


「私達が世界を守ろうとしたように、貴方達はお互いとお互いが大切に思っているものを守りたいと願う。もしかしたら、本当にその願い、望みがキーだったのかもしれないね」


 ね。竜王、とユキコさんが竜王に微笑んで、竜王もまた微笑みを返す。


「ジェイクは強い魔力を持っているね。属性は、風か。リーアは魔力の総量はそれほど多くが、強い癒しの水の属性。2人とも属性の相性がいいな」

「魔力かあ、いいなあ。私にはそういう特別な能力って無かったから。なにせただの日本人だし」

「ユキ…。…さて、私から1つアドバイスをしておこう。せっかく会えたのだし」


 竜王は私とジェイク様を頭から足まで見てから、にっこりと微笑んだ。


「君たちが正式に結ばれたら、近いうちに、リーアの方の魔力に変化があると思うよ。その変化とゆっくり向き合いなさい。そうすれば、貴方達が望む『力』へのきっかけが掴めるかも、しれない」

「ずいぶん曖昧な言い方だな」

「私は占い師ではないからね。見えているわけじゃない。持っている知識から推測しているだけだから」

「ありがとうございます、竜王」


 頭を下げた私に竜王は首を振る。


「礼を言うのはこちらのほうだよ。こうして、ユキにまた会うことができたのは、君と、ジェイクのおかげだからね」

「そうだね、本当にありがとう。リーア。そして、ジェイク」


 ユキコさんもそう笑って、竜王にキスをした。

 それがきっかけだったように、ぼんやりと白い霧のようなものがあたりに漂いはじめた。

 夢が覚める。扉が閉まる。

 直感的にそんな気がする。


「きっと、もう会うことはないだろうから」

「どうか、幸せになってね」


 竜王とユキコさんの優しい声に礼を返して、そうして私の意識はゆっくりと現実へと帰っていった。

読んでくださってありがとうございます!

更新頻度が遅くて申し訳ないです…。

週に一回くらいは投稿したいとは思っているのですが、モチベと時間がままなりません;


次回はいままで空気だったリーアのお兄さんの登場です!

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