過去
一週間が終わった。無くなった俺の教科書は意外にも掃除用具入れの上にあった。気付かなかった俺はばかだ。帰る準備をしていたとき、西之巻が話しかけてきた。どうやら俺の流した情報を聞いてあの便利屋に興味がでたらしい。なんか冬馬に得させたみたいで悔しかった。
「吉野ー。喫茶店行こうぜ」
「隆か、喫茶店って…便利屋んとこか?」
「そそどうせ放課後も暇だしあそこでだべろーぜ」
「お前も便利屋の話か」
「なんだよ『も』って」
俺と隆が便利屋に行く約束を立てていたとき、詠斗と透も会話に加入し、あのいつもの四人で俺らは喫茶店に行くことになった。
「おい学生諸君。用がないなら帰ってほしいね」
「いーじゃん。どーせ冬馬暇なんでしょ?」
「あのねぇ清水くん。俺は仮にも年上なんだぞ敬語を使いなさい」
なんだかんだ俺ら二人はもうこの人達と打ち解けてるようだ。残りの永山達はまだみたいだが…心配はないだろう。
俺は隆と冬馬の会話を傍観していた。和む。そんなことを思っているとドアが開いた合図のベルがなった。開いたドアの先には外掃除に出ていた花さんがいた。
「あ、ベルが付けたんだ」
「うん。分かりにくかったから。花ちゃんもう掃除終わったの?」
「いや、なんかとーまさんに話があるっていうお姉さんが」
お姉さん?花さんも俺らから見れば十分お姉さんだ。だから…もうちょいだけ上かな?
「はろー!元気してる?」
素朴な格好なのに何故かエロく見える。体から出てるオーラというか雰囲気というか、とにかくえろい。そんなお姉さんが入ってきた。
「る、瑠美姉さん。なんでここが?」
「まぁ色々伝を使ってね~。上手くいってる?」
「冬馬、このグラマーな人誰?」
俺は気になって冬馬に聞いた。
「私はね~彼の育ての母よん」
育ての母…?なんか複雑なのか?
「少し昔の話をしてあげましょうか」
「姉さんやめて」
「だーいじょうぶ。気ぃつけるから。この子はね早くに両親を亡くしたの。親戚に引き取られたんだけど当時人付き合いが苦手だった彼は毛嫌いされちゃってね。あまりいい待遇もされてなかったわけ。そんな生活に耐えられなくなって10歳の頃、家出してきた所を私に見つけられたの。私はそんとき25で、バーで働きながら一人暮らし。ちょうどこの子と同じくらいの妹がいてね。私が上京してから疎遠になっちゃったんだけど、なんか情が沸いちゃってね。あまりいい生活は出来なかったけど二人で暮らしてたってわけ」
へぇ…冬馬も大変だったんだ…
「もっと、冬馬のこと教えてくれませんか?」
「なに言ってんだ隆之介。もうだめだ。な、姉さんももう話すことないだろ」
「ちょっと可愛いエピソードとかならいっぱいあるよ」
「姉さん…」
依然としてお姉さんはニコニコしてる。天真爛漫なのだろう。
「明日みんなで家来なよ。全員で来れば君は話されたくないことはだめって言えばいいし、そこまで言われたら言わない。それでいいでしょ?」
冬馬は渋々了承した様だった。
俺らは明日の土曜。瑠美姉さんの家に行くことになった。集合は朝8時。お姉さんが車で迎えに来るらしい。きっと車もいい匂いがするのだろう。