事故
猫かぁ…いやだなこの依頼。そんなことを思いながら俺は学生たちが帰ったこのAUでくつろいでいた。花ちゃんは女の子二人が飲んだコーヒーの後片付けをしている。あぁ、そういえば…すっかり忘れてた
「ねぇ花ちゃん、ちょっときて」
「はい?今行きます」
花ちゃんが俺の目の前に来る。近くで見ると本当に可愛らしい子だ。
「これ…姉さんが渡してくれだってさ」
「えぇ!わ、私にですか?」
「うん。なんでも、私の子がご迷惑かけてます。今後も面倒見てやって下さいとのことだと。」
「なるほど…。でも受け取れないですよ」
「いーのいーの。貰っといて俺が怒られんだから」
俺は茶封筒を花ちゃんに渡した。
「よし、明日から行動開始。がんばろーね」
気の抜けた、自分でも情けない声だった。
翌日、子猫を預かってくれる人を探すためのポスターを張って周っていた。
「とーまさん…本当にこれが最善策なんですか?」
花ちゃんが聞く。声は心なしか寂しそうに聞こえた。
「うん。これが最善」
「全然…そんな感じがしないですよ…。前のとーまさんはもっとスマートに行動力抜群だったじゃないですか!」
「前は前、今は今。依頼のジャンルが全然違うでしょ」
「でも…でも」
「うるさいなぁ、文句があんなら案の一つでも出してみなよ」
「…分かりました。一人になって考えますよ!」
花ちゃんはポスターを俺に投げつけ走り去っていった。女の子にあんな乱暴な言葉を放ってしまった…。最悪だな…。俺は足元に散らばったポスターを拾いながら、色々と考えを巡らせていた。決して最善ではないこの方法を他所に。
ポスターを張ってから数日経った。夕日がいい感じに自分の机を照らしている。依然として連絡はない。花ちゃんもしばらくAUには顔を出していない。早く謝っときたいのだが…。その時だった。ベルの音よりも大きく、ドアが強く開いた音がした。花ちゃんが入り口に息を切らせてたっていた。
「ど、どうしたの」
「いいから…はやく…来てください…」
花ちゃんについていく。行き先は猫を置いておいた公園だった。学生組全員がダンボールを囲っている。その中心にいた猫はひどく衰弱していた。
「な、なんでこんな弱ってるの…?」
「た、多分自分より大きな動物と喧嘩したんだよ…。」
倉盛さんが泣きながら口を開いた。
「倉盛さんは…なんでそんなこの猫に必死なの?」
あの涙の訳を俺は知りたかった。
「私が子供の頃ね…。神社近くの公園で遊んでたときに子猫を見つけたの。友達とお世話しようって言ってたんだけど、結局私達の世話が下手で…そのこ死んじゃったの…。もう助けられないのは嫌なんだ…」
涙混じりのそのこえで語られた過去は、俺と同じジャンル。猫へのトラウマだった…。俺とは180度違う、守ろうというトラウマ…。
「はぁ…」
気づいたら俺はため息をついていた。なんのため息だ?答えは考えるまでもなかった。
「俺が預かるよ…。その代わり成功報酬はきっちり貰うからね」
女子二人が歓声を上げた。悪い気分はしなかった。
「ありがとう!ほんとにありがとうとーま!で、また拡散すればいいの?」
「いいや」
まったく俺はお人好しにも程があるな。
「この子に名前…つけてやって」




