子猫
夕日のなか、俺らは車に揺られていた。車内には山久と永山そして瑠美さんの楽しげな会話がだけがあった。俺は窓から徐々にいつもの風景に戻っていく様を眺めていた。隆はなにか考え込んでいるらしい。きっと冬馬たちが昔のことをひた隠しにしてるのに気付き、不審に思っているのだろう。隆は頭が切れる。きっと冬馬たちが何故過去を秘密にしているのかもいずれ解き明かすんじゃないかという期待が密かにあった。
喫茶店に着いた。いやAUに着いた。電気がついている。花さんが帰ってきてるのかな?
「え、なに姉さん。いいよこんなの」
「あんたのじゃないの。唯一のバイトちゃんにだからね」
なにか瑠美さんと冬馬がこそこそやっていた。
「どしたん冬馬」
「ちょっと姉さんと色々…君ら荷物まだこん中でしょ?花ちゃん帰ってると思うから先に入ってて。」
冬馬の言う通り、俺らは先にAUに入ることにした。ドアに鍵はかかってない。入るとそこには同級生の倉盛と西之巻がいた。この二人仲良かったっけ…?いやそもそもなんでこいつらがここに…。
「あ」
「ん?どうしたんだよ吉野いきなり。うおっ、西之巻じゃん。お前らなんでこんなとこ来てんだよ」
俺が教えたんだよ。
「こんなとこって失礼ですね!この方々はご依頼人の方々ですよ!」
「そそ、この子猫預かって欲しくて」
「いやーやっと帰ってきた…。うおっどしたのその女の子たち」
「ご依頼人だってよ。俺の拡散で来たやつら」
「おぉ!吉野くんからお金もらわなかっただけあったなぁ!で、依頼の内容は?」
「この猫あずかって欲しいんです」
間髪を入れず依頼内容を告げたのは倉盛だった。きっとよほどこの猫が心配なんだろう。
「うーん…花ちゃん大丈夫?」
「えぇっと…今日私猫買っちゃったばっかりで…餌代とかの余裕ないです…。とーまさんは?」
「そっかぁじゃあ面倒だけど預かって貰える人探すか」
「その間、この子はここであずかって貰えるんですよね?」
「うーん…それは出来ないや面倒見る人いないし」
「あなたがいるじゃないですか!」
「ごめん俺猫ダメなんだ。近くに公園があったじゃん、そこに置いとくとかはだめ?」
「…分かりました。出来るだけ早くしてください」
ばか…多分冬馬はこの依頼にそこまで本気になれない。今日瑠美さんから俺らは一つだけ昔の話を聞いたんだ。詳しくは分からんが昔友達と猫関係で事故があったらしい。それ以来、思い出すのが嫌で冬馬は猫には関わっていないそうだ。
きっと倉盛の純粋な思いは届かない。その理由となる事件の大きさは瑠美さんの表情が語っていた。




