倉盛明音
「ねぇ香菜ーもう帰ろうよー。もう来ないってあそこの人たち」
もう日が暮れてる。こんなに時間を無駄にしたことはないや。香菜こうなると頑固だからな。飽きるまでもうそろそろかも。
「だめなのかなぁー。もう帰る?」
「うん。やっと懲りてくれたね」
はぁ~疲れたー。すごい肩が凝ってるや。いつも通りの道を、少しの疲労を加えたいつも通りに帰るつもりだった。
「ん?ねぇ香菜。なんか猫の声しない?」
「多分…あれ?」
香菜の指差した先にはよくドラマで見かける『拾ってください』が書いてあるダンボールがあった。
二人で近寄ってみると中には黒い子猫がいた。
「かわいいー!」
「え、明音これどーすんの?」
「家のマンションペット禁止だしなー。香菜は?」
「うち母ちゃんが猫アレルギー」
「えぇ…どうしよ…」
『あ、便利屋』
初めて二人の声が揃った瞬間だった。
ダンボールを香菜が担いではやあるきで来た道を戻った。
「あ、やっと見えてきた。子猫って結構重いのね」
私たちが今見ている便利屋の風景はさっきとは少し違った。中では電気がついている。きっと誰かが帰ってきたんだ!
「香菜!私先行ってみてくる!」
「え、明音!まじ?」
走った。勢いよくドアを開けると中には綺麗なお姉さんがいた。
「えぇっと…依頼…ですか?」
「え、あ、はい!そうです!」
「ありがとうございます!えー、今ここの店主が出掛けちゃってて…少し待ってて貰っても大丈夫ですか?」
「あ、全然!大丈夫です」
ベルの音がする。ドアが開いた合図だった。香菜が入ってきた。
「えぇすごい!喫茶店じゃん!」
し、失礼だって…。私はそっと視線を元に戻すとお姉さんは笑っていた。
「意外と速いんですね!コーヒー飲めますか?」
花の様な笑顔と声だった。
「はい」
「よかった!いま出すからちょっと待って下さい!」
お姉さんは奥の部屋に行った。食器の割れる音が響いた。




