サナの場合⑦
「サナだ」
ユキヤはユキヤのまんまで。
約10年ぶりに会うのに、あんまり変わってなくて、それがちょっと残念で、すごく安心した。
「なんか、変わった?」との問い。
「自分では分かんないよ」と右耳五個のピアスを下から数えながら答える。
胸元に小さく英単語のタトゥーが入っていたはず。
服で今は見えないけど、タトゥーがあるであろう場所に視線を向けた。
その単語の意味を初めて寝た日に聞いた気がするけど、全く覚えてない。
ユキヤと私は、その程度の関係だったなって、今更思い出した。
「連絡くれて嬉しかった。もう2度とないって思ってたから」
「だね」
「なんで連絡くれたの?」
「んー、暇だったから」
思わずバカ正直に答えたら、ユキヤが手を叩いて「いいねー」とガハハと笑った。
「うん、サナのそういうとこ、好きだな」
簡単な好き。
可愛い、好き。
面白い、好き。
楽しい、好き。
暇だし、好き。
今日はそれでいい気がして、「私もユキヤの軽いとこ、好き」と返した。
バーで、二杯ビールを飲んだ後、店の外に出た。
「どこ行く?」なんて、行き先なんて決まってるくせにわざわざ聞いてくるから、「解散にする?」とワザと突き放した。
「いやー、ないでしょ」と急に真剣な目をして、道の真ん中なのに、私の頬にキスをした。
「え、何してんの」
驚いて、一歩後ずさる。
「ん?したかったから」と魔性な色気を振り撒く男。
金髪に近い髪色に、シルバーピアスが左右で九個、ゴツいネックレス、重そうな指輪、プレミア値が付いてるスニーカー。
多分、正社員じゃない。
まともに働いてるように見えない。
どっかの嬢のヒモかもしれない。
まあ、私には関係ないけど。
「ここでは辞めてよ」
「じゃあ、いっぱいいろいろ出来るとこ、行こうよ」と強く右手を握られて、心臓がドクンと跳ねた。
「私、彼氏いる。同棲してるし、来年結婚する」
何萎えること言ってんだ?と自分でも思ったけど、最後の良心みたいなものが勝手に暴走して言葉を発していた。
「へー、いいね」とユキヤが嬉しそうに目を細めたから、なんだか安心して、私も「いいよね」と少し笑った。
手を繋いで、緩やかな坂を登る。
目的地は、キラキラネオンのお城。
多くの男女が性欲をぶつけ合う場所。
いつだって、理性が負ける。
甘い雰囲気に流されて、飲み込まれる。
それの何が悪いんだ?
鼓膜にハッキリとした声で響く。
シャワーの音がする。
その声は、紛れもなく、自分で。
誤魔化しようない衝動だ。




