佳織の場合⑤
このままじゃダメだ。
変わらなきゃ、変わりたい。
前向きに決意する日もある。
ちゃんと身支度を整えて、マナを公園で遊ばせて、近所のママにも「こんにちは」と明るい声で挨拶をする。
同じような年齢の子供を持つママたちと、家事や育児、旦那の愚痴を何ターンかお互いが話し合う。
「あ、そろそろ、リトミック教室の時間だから」
一人のママが「またね」と帰り支度を始めると、他のママたちも「私も、またね」と視線を自宅に向ける。
「じゃあ、また」
手を振って、それぞれの立ち去る背中を見送る。
「マナ、帰るよ」
砂場で遊んでいたマナに声をかけた。
急に二人きりにされたみたいで、胸に息苦しさが迫る。
「まだー、いやー」
泣き叫ぶマナを強引に抱き抱え、歩き出す。
「いやー、いやー、あそぶー」
「はいはい、また今度遊ぼうね」
結局、いつもと同じ。
またこの子と二人きり。
我が子なのに、誰かに無理やり押し付けられた荷物のような気がしてならない。
知らない誰かの人生を知らないうちに歩み始めた気がする。
こんなはずじゃなかった。
私は、こんな風に生きたかったはずじゃ……。
マンションに何とか辿り着き、手足に付いた砂を玄関先で払い、濡らしたタオルで足裏を拭く。
その間もずっと「いやー」と号泣。
耳をつんざくような泣き声に、苛立ちが募るが無視を決め込む。
「ママ、ご飯作るからね」
テレビの電源を付けて、泣き叫ぶ娘に背を向ける。




