百合子の場合③
子供をあえて持たない夫婦。
子供を望んだけど持てなかった夫婦。
その間に大きな違いはあるのだろうか。
結局は子供がいないことに変わりないのだから、外から見れば違いなんて見えない。
「うちは子供はいいんだ」
親戚や友人に子供について聞かれると夫は、いつもそう答えた。
その言葉の端々が子供を持たないポリシーを説明しているように聞こえるから、嫌になる。
私は、欲しかったのに。
欲しくて欲しくて仕方なかった。
子供を産み育てる人生でありたかった。
私の気持ちに気づこうともしない人。
同じ目的に向かって歩むことすら拒否した人。
検査を拒否されたあの夜から、私は夫と分かり合おうとすることをやめた。
夫は会社に行き仕事をしお金を稼ぐ。
私は自宅で家事をこなす。
それぞれに、それぞれの役割を淡々と。
愛なんて元々あったのだろうか。
それすらも忘れてしまうほどの脱力感。
家族になりたかったのに、夫婦としてしか存在出来ない二人になり、私は全て諦めた。
分かりあうこと、慈しみ合うこと、喜びを分かち合うこと、共に生きることも、何もかも。
「フー」と大きく息を吐き出し、スーパーまでの下り坂を眺める。
視線を道路、杉の木、夜空に移し、更に深いため息を吐いた。
「あっ」
タイミング良く、シュッと夜空に流れた星。
間に合わないと分かっていたけど、瞬時に強く願う。
どうか、どうか。
私だけの幸せが守れますように。
数秒、呼吸止めて、強く強く願った。




