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百合子の場合②



夫と結婚したのは約10年前。


出会いは知人の紹介で、30間近の私は結婚したくてどうしようもない周期の時で、余り深く考えずに人生の選択をした。


スマホ機器の技術開発という安定している仕事に従事、高収入で、穏やか。


年齢は私より15歳上で、当時45。


両親には「年が離れすぎじゃないか」と難色を示されたけど、そんな助言も気にならないくらい、当時の私は結婚したくて仕方なかった。


友人、親戚に祝福され、豪華な結婚式を挙げ、イタリアに新婚旅行に行って、ゆっくり二人で一年ほど過ごした後、自然に妊娠しないのではないか……と、はたと不安になった。



私が31でも彼は46。


タイムリミットが迫っている、早くしなければ。


基礎体温を付けて、なるべく体を冷やさないようにして、排卵日には丁寧に抱き合った。


それでも妊娠する兆しはなかった。


産婦人科にも行き、相談した。


産科医には「あなたは問題ないです。良ければ、次回は旦那様と一緒にお越し下さい」と言われ、そのことをそのまま伝えた夜。


夫は少しだけ眉間に皺を寄せ、暫く黙り込んだ後「そこまでして、子供は要らないかな」と穏やかな口調で言った。 


「僕は百合子と二人だけの生活で十分だよ」


「……」


「それに、そんなに焦らなくても自然に妊娠するかもしれないし」


どこまでも人任せで、自分のこととして考えられない人。


なぜ、検査さえ受けてくれないの?

私はこんなにも、子供が欲しくて仕方ないのに。


その夜、彼は子供を欲しがる私に背を向けた。


少なくとも、私自身、そう感じたやり取りだった。


37歳まで基礎体温を付け、自然妊娠の可能性を信じて生活してきたけど、私の心は年々すり減っていくばかりで、一人だけで頑張ることに疲れ、ついには諦めた。



約6年間。

たった一人で取り組んできた妊活だった。






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