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引きこもり冒険者のおバカな英雄譚  第一部 暴れまくって王国を救う?   作者: 牟川
第2章 遊撃騎士団ドラゴン討伐隊 爆誕! ~ そしてハンターの影
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第87話 イルザたち


 特別仕様である2台の馬車が、街道を駆け抜ける。

 その2台の馬車には、イルザを筆頭に、イザークやロミーナを含めたイザーク隊のメンバー、≪ごね得≫によって乗り込んだエリン、そして偶然合流したボブ警部が乗っていた。


 ボワド市に近づくに連れて、赤焼けた光が大きくなってくる様子を、イルザたちは馬車の窓から眺めている。

 皆その表情は険しく、決してのん気に眺めているわけではない。


「只事ではなさそうね」


 この時点で既にイルザ達は、ボワド市で何か悪いことが起こったのだと認識していた。それ故に、御者に無理を言って馬車は最高速度で進んでいる。


 原則として、夜間に馬車が走ることは無い。

 当然、危険であるからだ。


 つまり、イルザ達の乗せた2台の馬車はとても危険な状況にある。だが、ボワド市から見える不吉な印には、そうさせるだけの理由になり得るのだ。

 

「やはり、大規模な火事でしょうか? 」


 と、イザークが言う。

 最も考えられるのは、確かに火事なのだ。


「なら、火事を引き起こした者が一体誰なのか気になるところね。あれだけの規模の火事は、自然発生……或いは過失で起こるようなものではないわ」


「だとしたら、ハンターか? あいつの話じゃ、ボワド市近郊で発生したオークの異常繁殖に連中が絡んでるかもしれないって話だからな」


「ボブ警部。仮にハンターによる仕業だった場合は、迂闊に行動できなくなりますね? 」


「緊急事態だし、問題は無いだろう。それに、あくまで個人として来てるんだ。あと国家憲兵隊を乗せた馬車だって、たくさん見ただろ。連中も、王宮の指示に従うつもりは無いんだろうよ」


 国家憲兵隊を乗せた数多くの馬車が、ボワド市へ向かっていたことも、イルザにとっては1つ大きな疑問点だった。


「コソコソと動くならともかく、あんなに大勢の人員を動員するなんて、ハンター以外に何かあるのかもしれませんね」


 要するに、捜査から引かされた国家憲兵隊がハンターの件で動くにしては、堂々とし過ぎているということだ。


 イルザの疑問に、ボブ警部の頭の中で1つの可能性が浮かんだ。


「そういうことか……」


「どういうことですか? 」


「ボワド市から見えるあの光が火事だとすれば、ドラゴンによるものかもしれない」


「ど、ど、ドラゴン!? 」


 真っ先に反応したのはエリンだった。

 ドラゴンは、冒険者にとって色々な意味で注目されている魔物である。もし、倒せたらなら、ごく一部の例外を除けば英雄扱いを受けるわけだ。


 一方で、多くの冒険者を殺してきた魔物でもある。


「嬢ちゃんが近づくには、危険すぎるかもな? ここから先は餓鬼の遠足じゃ済まないだろう」


 少なくともエリンだけは、どこか別の場所で待機してもらいたいというのがボブ警部の心の内だった。


「私を足手まといと言いたいのですか? 」


「そこまでは言っていないが、危険地帯である可能性は高い。死ぬかもしれないぞ」


 そして、イルザが口を挟んだ。


「ボブ警部、冒険者は冒険者になるときに、命の危険性が伴うことを理解しています。それに、未成年の場合は一定期間の講習も受けておりますよ」


「それは、あくまで冒険者ギルドの言い分だ。市警の一部では、問題視している連中もいる。他の機関でも同じなんじゃないか? 」


「……いずれ、市民を巻き込んだ論争になるかもしれませんね。しかし、今は目下の問題に集中しましょう。エリン。念のため聞きますが、死ぬ覚悟はできてますか? 」


「大丈夫です」


 と、イルザの問いにエリンは即答する。


「わかりました。では、ロミーナも大丈夫ですね? 」


「はい。市民を守るために積極的に活動することは、アストリー家の方針に反しておりません。もしそれで私やエリンが死んだとしても、父は認めてくれるはずです」


 馬車はボワド市へ向かって、突き進むのであった。


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