第82話 確信犯の自白2
「まず、ある日突然、何の前触れもなくある男が接触してきたんです。この男は、後になって魔族ということが判ったんですが、ともかく取引を持ちかけてきました。ドラゴンを譲ると」
つまりシンプルに言えば、魔族側から接触してきて今回の取引を持ちかけたということだな。
「それで? 」
ギーナが話を続けるよう促す。
こんなことなら、最初から尋問をギーナに任せておけば良かったな。
「……その他にも、ドラゴンを操る技術も教えると言われました。要するに、魔物を操る魔法のことです」
「物品製造局に、独断であの骸骨の模型を作らせたのもお前だったな?」
「はい……。裏社会の者たちを使って、レゲムーク王国に分散して運ばせて、そして保管させておりました」
ようやく、スケルトンの異常繁殖事件について進展したようだ。ハンターが関与していたことが、これで確定した。
さらに言えば、ゾラン公国そのものが関わっていたといっても良いだろう。
だが、ある1つの疑問は解消されないままなのだ。
「ユウムさん。俺はね、スケルトンの異常繁殖事件の現場へ行ったんですよ。そしたらね、ゾラン公国物品製造局という印字がされていたんですが、これは貴方の指示ですか? 」
「……どういうことだ? 俺はそんな指示など出していない。そもそも、俺から指示する場合、物品製造局の印字はしないことになっている」
「そうですか。ありがとうございます」
どういうことだ?
だが、ジェロームの立場で考えれば当たり前のことである。わざわざ、ゾラン公国の仕業であるという証拠を残すということになるからだ。この点は、当初から俺も気になっていた。
「嘘では無いのだろうな? 」
ギーナが圧をかける。
「はい。私はそんな命令など出してません。わざわざレゲムーク王国に、我々の存在を仄めかす必要がありますか? 」
「なるほど」
ギーナも納得したようだ。
少なくとも、動機は無いと言える。
「わざと、証拠を残した可能性もあるじゃないか? 」
と、ここでカミラが異論を述べた。
「わざと? 」
俺は、訊き返す。
「ああ。例えば、ゾラン公国に罪を擦り付けるために偽造した者がいる……。そう思わせるってことだ」
確かに一理ある。
実際俺は、ゾラン公国ではない何者かによる偽造なのではないかと思っている。それ自体が、ゾラン公国による誘導かもしれないと言うことだ。
仮に誘導だったとすれば、ゾラン公国ではない別の者を探させることで、充分に捜査を妨害できる。
「ジェローム。お前は本当に知らないのか? 」
「はい。私は絶対にそのような命令など出してません」
俺からも訊いてみるとしよう。
「ユウムさん。なら、物品製造局という印字をする旨、偽の命令を下した誰かが居たということになりますよね? 」
他の可能性も考えられるが、仮に偽の命令を出した者が居るなら、それを突き止めれば話は早い。
「その可能性も考えられるな」
「そのような偽の命令を出すかもしれない者に、ユウムさんも心当たりがあるのでは? 」
「俺の身近じゃ、絶対に考えられない。むしろ、お前らレゲムークの人間の仕業と考えた方が辻褄があうだろう」
この話を続けても、これ以上意味は無いだろう。
他にも訊きたいこともあるし、話題を変えるとしようか。
「魔族と接触したのは、いつの話なのです? 」
「3カ月ほど前だ。ゾラン公国の公都ソナー市内で、接触してきた」
3カ月前となると、それなりの期間はあると言えるだろう。それにミズロン村で起こった事件も、この3カ月以内の話である。
「ミズロン村の事件はご存じですか? ドラゴンの襲撃を受けて、大変な惨状になってるんですよ」
「……俺だ。俺がドラゴンを操って、そしてミズロン村を襲撃させた」
ようやく、色々と見えてきたようだ。
少なくとも、ゾラン公国の汚点になるだろう。それに、仮にこの事実が世間に公表されたなら戦争に発展するかもしれない。
「ジェローム! 貴様は絶対に、極刑になることだろう。無辜を虐殺したこと、絶対に許さん! 」
と、ギーナが怒りを表す。
だが、そもそもハンターは多くの冒険者を殺しているはずだ。いずれ、そのことについて俺はギーナに追及するつもりである。




