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引きこもり冒険者のおバカな英雄譚  第一部 暴れまくって王国を救う?   作者: 牟川
第2章 遊撃騎士団ドラゴン討伐隊 爆誕! ~ そしてハンターの影
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第81話 確信犯の自白1


「それがどういうことか判っているのだろうな? 」


「殿下。これで我々の悲願が達成できます! これで薄汚い革命派に支配された真の祖国を解放できます! 」


「貴様……」


 ギーナは激情にかられてか、明確な殺意を示しつつ男に向かって歩み出した。しかし俺は、その間に立った。


 当然、庇ったのは可哀想だからという理由ではないし、男に不審な動きがあれば、結果的に俺が殺すことになるかもしれない。


 男を生かす理由は1つ。

 貴重な情報源を失うことが嫌なのである。既に、何度も重要な情報源を失ってきた俺からすれば、是が非でも確保したいわけだ。

 

 しかも、つい先日起こったミズロン村の悲惨な事件や、スケルトンの異常繁殖事件、デニス殺害事件についても、その全てが明らかになる可能性だってある。


「落ち着け。俺は、この男から色々と情報を聞き出さなければならない」


 ところが、俺の言葉を無視してこちらへ向かってくる。俺ごと、男を殺そうとしているのかもしれない。


 しかし、機転を利かせてか、カミラは男を拘束し、担いで安全な場所へと移動する。


「ギーナ! いい加減にしろ」


 再度、忠告する。

 すると、ギーナは立ち止まった。俺の言葉に反応したというよりは、既に男が目の前に居なかったからだろうか……。


「すまん。私としたことが、とんでもない失態を犯すところだった」


「ギーナにしては、かなり感情的に思えたな」


「申し訳ない。ゾラン公国という名前を利用して、とんでもない悪事を働いたあいつが許せなかったんだ」


「そうか」


 ゾラン公国の戦力強化という動機自体は、俺は擁護したい。もちろん、レゲムーク王国の国民としては歓迎すべきことではないが。


「まあ、今はあの男から情報を聞き出すとしよう。まだ、感情を抑えるんだ。な? 」


 そして、カミラによって拘束された男の下へとやって来た。いつの間にか、口に猿轡が嵌められている。手際の良いことだ。


 要するに、舌を噛むことによる自殺を防止するためだろう。


「この男の名前は知っているのか? 」

 

 と、俺はギーナに訊いた。

 

「こいつの名は、ジェローム・ユウム。ゾラン公国の貴族階級の出身だ。そして、このジェロームも、いわゆるハンターの幹部の1人ということになる」

 

 ゾラン公国の貴族ときたか。

 一方で、ハンターの関係者だと言うことについては、ほぼ分かっていたことだ。まあ、幹部級の人間を捕らえることが出来たのは、ここまで出張ってきた甲斐があったと言える。


 俺は、ジェロームに近づく。

 相手が貴族だろうと、容赦をするつもりはない。それがレゲムーク王国の貴族だったとしてもだ。

 そのへんは、上司から徹底的に指導されている。


「ユウムさん。貴方に色々と聞きたいことがあるんですよ。協力してもらえますよね? 」


 俺はそう言って、ペンとメモ帖を取り出した。当然、ジェロームの口には猿轡が嵌められているため、喋ることができないからだ。


 俺個人としては、猿轡を外しても良いような気がするが、嵌めたカミラの目の前で外すのも気が引ける。


「……」


 ジェロームは受け取ろうとしない。その眼差しは、敵対的な意思を示すものだった。

 

「ジェローム! 」


 ギーナがそう言うと、ジェロームはメモ用紙とペンを受け取った。ギーナの命令には逆らえないのだろう。


「まず、ユウムさん。アンタは誰の指示で動いてるんですかね? 」


 ジェロームが紙に書きだした。


「それについて、私から先に言っておきたいことがある。判っていると思うが、ジェロームがここに居ることや、魔族と取引をしていたことについて私は一切関与していない」


 と、ギーナが言う。

 改めて、自身は関与していないことを強調したかったのだろう。とはいえ、彼女の性格のことだし、後で何かしらの方法で責任を取ろうとするかもしれない。


 ジェロームがペンを置いた。


「……ユウムさんの独断ですか。しかしユウムの立場で、魔族……それもドラゴンを譲渡できる立場の者と接触できるですか? 」


 再び、ジェロームがペンを取る。

 すると、喋らせてくれと書かれていた。

 

「喋らせてくれと? だが、俺の一存では決められないからな……」


「帝国じゃ、まず自殺防止のために、こうするんだよ」


 帝国式のやり方に慣れているカミラからすれば、これが当たり前なのだろう。

 しかし俺の経験してきた限りでは、舌を噛んで自殺を図ろうとしたり、図った者と遭遇したことがない。


「……ならば、ハンター方式しか無いだろう」


 ギーナはそう言うと、何やら紫色の光線をジェロームに向かって放った。しかし、ジェロームに変わった様子はない。


「これで終わりだ。猿轡を外しても問題ない。少なくとも、自殺はしないはずだ」





 俺は、カミラから同意を得た後、ジェロームの口に嵌められていた猿轡を外した。それから少し時間が流れ、ようやくジェロームが口を開いた。


「殿下……」


 ジェロームがそう声にする。

 しかし、それに対するギーナの表情はとても冷たいものだった。


「事実を、ありのまま話せ」


「……はい」


 ジェロームの眼には、微かに涙が浮かんでいた。


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