第78話 2つの勢力
俺を含めて3人とも、互いに見える位置にある木に登ったため、簡単なジェスチャーで意思表示を行いつつ様子を窺った。
そして、集団が現れた。
動きを見るに、何かから逃げているようだ。つまり、俺たちを発見して向かってきたわけではないことになる。
今走り去った集団だが、それぞれの目は赤く光っていた。
魔族であることの、何よりの証拠だ。
そんな魔族は、一体何から逃げているのだろうか……。
少なくとも先ほどの集団を追うような、何かしらの気配は感じられない。
もう少し、様子を窺ってみよう。
俺は、なるべく伝わるように2人にジェスチャーを送った。まだ降りるなという合図である。
判断は正しかったようだ。
案の定、黒装束姿の連中が現れたからである。状況からして十中八九、先ほどの集団を追っているのだろう。
つまり、黒装束姿の連中は魔族の集団を追っていることになる。
そして合図を送る。もう降りて良いと。
「やはり、黒装束姿の連中もこちら側に来ていたようだな」
と、ギーナが言う。
≪扉≫に辿り着くまでに、黒装束姿の連中と接触することは無かったわけだし、こちら側まで来ているという推測は当然だ。
「そして、黒装束姿の連中が魔族の集団を追っていたわけだ」
あの魔族の集団が、ハンターと繋がりがあるということなのだろうか。
「で、どうするんだ? アタシたちも戦闘に加わるのか? 」
「カミラの気持ちも分かるが、それよりも、俺としてはこの地の調査を行いたい。そもそも、ここがどこの国の領土なのかすら判っていないわけだしな」
「ボルスト捜査官。それは、趣旨から外れると思うが? 」
「……ギーナの言うとおりだが、ここがどういった場所なのかを把握することも、何かあったときに有利になるかもしれないだろ。ただ、あくまでも2人の意見に従うつもりだ」
俺が自己主張しすぎて、協力関係が危うくなるものよくない。
「ここが、魔族共の国かどうかを調べるなら、趣旨に反することはねぇ。そもそもこの女とお前、そしてアタシは調査の目的が微妙に違うしな」
「わかった。ならば、私もこの周辺地域を調べることに同意しよう」
「そうか。なら引き続き、俺について来て欲しい。どうしても確かめたい場所があるんだ」
黒装束姿の連中の動向も気になるが、依然として残っている気配がある。数十人がずっと屯している場所だ。戦闘状態にある様子も無い。
「確かめたい場所? 」
ギーナが怪訝そうな表情を浮かべて、そう言う。
まあ、この地に初めて訪れた来た者が言うべき発言ではないし、こういう反応になるのは仕方ない。
「お前、この場所に来たことがあるのか? 」
と、さらにカミラに訊かれる。
「判らない。森という性質上、記憶に残るものも無いしな」
この場所が森である以上、仮に一度来ていたとしても、その位置関係を正確に覚えることは出来ないだろう。
「その割に、行きたい場所は決まっているわけだ。ってことは、まだ隠している能力があるのか? 」
全く。
勘のいい奴は、嫌いだ。
「まあ、そう言うことだ。……これ以上は、話すつもりはないがな。ここは、俺を信用してついて来てくれ。頼む」
そう言って何とか2人を納得させた俺は、先頭を歩き進む。少し距離があるため、直ぐにその場所に着くわけではない。
「確かめたい場所は、少し離れた場所にある」
「へぇ。場所や距離も判るってか。便利な能力だな? 」
この手の話になると、やはりカミラは興味を向けてくるようだ。
「便利なのは確かだが、精度は悪い。外れる可能性もあるから、そこは理解してくれ」
少なくとも、感じ取れる気配については正確に場所や位置を把握できる。つまり数十人の集団が屯している地点も、正確なはずだ。そういう意味では精度が悪いというのは嘘になるが、気配を感じさせない者もいる以上、こう言っておいた方が良いだろう。
現に、その1人が脇にいるわけだしな。
「なるほどな」
と、ギーナが頷く。思い付く節があるに決まっている。
それから、俺たち3人は先へと進んだのであった。




