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引きこもり冒険者のおバカな英雄譚  第一部 暴れまくって王国を救う?   作者: 牟川
第2章 遊撃騎士団ドラゴン討伐隊 爆誕! ~ そしてハンターの影
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第77話 ≪扉≫の向こうへ

 

 山頂に辿り着いたものの、結局黒装束姿の連中と出くわすことは無かった。

 しかし、今俺たちの目の前に、禍々しい魔方陣がある。少なくともあれが何なのか、俺は知っている。


「やはり、≪扉≫があったようだな」


 しかし、その魔方陣からオークが出現していない。そうなるとオークの異常繁殖は、また別に理由があるのだろうか。


「お前、何を言っているんだ。扉なんてないぞ? 」


 意外にもカミラがそう言った。


「知らないのか? この魔方陣は魔族共が研究していたものだ。簡単に言えば、この魔法陣の中に入れば、瞬間移動ができるわけだが、まあ俺たちは≪扉≫と呼んでいる。」


 もちろん、予め設定した特定の場所同士でしか瞬間移動はできない。


「なるほどねぇ。なら、やっぱり魔族が絡んでいたってわけだ。ってことは、さっきのドラゴンはここから出て来たってわけか」


「そう考えられる」


「……ボルスト捜査官。おかげて山頂まで来れたが、ハンターが関与している証拠は今のところ見つかっていない」


 と、ギーナが言う。

 ここで、協力関係が終了するとなると、戦力の著しい低下が生じる。万が一にも、黒装束姿の連中とやり合うことになった場合を考えると、好ましくはない。

 その点について、先に確認しておくか。

 

「ここで、解散でもしたいのか? 」


「いや、ハンターが関与しているという証拠こそ見つかっていないが、黒装束姿の連中がいる以上、私にはさらなる調査が必要だ。引き続き協力関係を維持して欲しい」


「それは、俺のセリフだ」


「アタシは、調査の手間が省けるなら、このままで良いぞ」


 何とか、3人体制は維持できたようだ。

 そうなると、今後は何をするかというのが重要だ。まずは、俺から提案してみるとしよう。


「俺としては、あの魔法陣の中に入りたい。ゴールは山頂ではなく、その先なのだと思っている」


「魔族のアジトに繋がっているっていうなら、アタシも乗り込んでやりてぇぐらいだな」


 カミラは乗り気のようだ。


「しかし、戻ってこれない可能性は無いのか? 」


「もちろんな。だが、捨て身の覚悟で突入するのも悪くない」


「なるほど。ある種の大博打になるかもしれないな」


「ああ」


 無性に、興奮してくる。そして体も軽い。間違いなく俺は、戦う準備ができているようだ。俺の意思に関係なく、本能によるものだろう。


「行くか行かないか、サッサと決めてくれよ」


 と、カミラが急かしてくる。


「では、行くか」


 俺はそう言って、まずは自分から魔方陣へと向かった。

 この先で、何が待ち構えているのか、一歩一歩進めば進むほど、恐怖と好奇心が混ざった何とも言えないこの気分が増す。


 そして、魔方陣の中に入ったのであった。


 急に、視界が激しく揺れる。

 ずっとこのままでは酔いそうだが、短い時間なら問題ない。


 数十秒ほどで、視界の揺れはおさまった。


 まず、魔方陣があることを確認した。つまり、帰り道は今のところあるという認識で良いだろう。


 そして直ぐに周囲を確認するも、少なくとも俺の知っている場所では無かった。目で見て判るのは、木々が生えて鬱蒼としていることだけである。


 しかし、付近に多数の気配を感じる。

 消滅する気配もあることから、戦闘が起こっているのかもしれない。それに、少し離れた所で、それなりの数の者たちが屯している気配を感じる。


 少しして、ギーナやカミラも姿を現した。


「なるほど。本当に、瞬間移動するようだな」

「へぇ、らしくなってきたじゃねぇか」


「2人とも、近くで戦闘が起こっているかもしれない。気を付けてくれ」


 そして俺たちは3人は、ゆっくりと先へ進んだ。幸い、鬱蒼とした森の中であるため、隠れる場所は無数にある。


 だが、俺は気づいた。いや、思い出したといった方が良いだろうか……。


「あと言うのを忘れていたが、罠も張り巡らされているかもしれない。こういう森だと、罠は当たり前だしな」


 俺はそう言って、魔法で地面を照らした。

 もちろん、地面だけではなく周囲の、例えば木々の間なども照らす。


 本来は、こんな夜に移動するべきではない。罠が発見できても、明かりで敵にバレる可能性があるからだ。


「森はトラウマか? 」


 と、ギーナが訊ねてくる。

 色々と知っているわけだし何が聞きたいのか、凡そ見当がつく。


「ああ。罠にしろ、飢餓にしろ。嫌な場所だったよ」


「なるほど」


 何よりも死というものに対して、慣れてしまった。脇にいた者が、数秒後には死んでいるということは多々あったわけだ。何度も、そのような光景を見続けていれば、慣れてしまうものである。


 そして、一番恐ろしいのは、死に慣れた者が指揮を執るということだ。


「止まれ」


 俺は小声でそう言いつつ、合図した。

 こちらに向かってきている複数の気配があるからだ。速度が変わることはない。


 頭の中で簡単な座標のようなものを描く。

 どうやら、直線を描くようにして、向かってきているようだ。このままだと、今俺たちが居る位置から外れることは無いだろう。


 時間的猶予は……数分か。


「木は登れるか? 」


 俺がそう言うと、2人は頷いた。


「今すぐ、手頃な木に登ってくれ。妙な集団がこちらへ向かってきている」


 そして俺たちは、なるべく音を立てずに素早く行動したのであった。

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