第73話 思わぬ共同戦線2
「……何かあったのか? 」
よほどのことが起こらない限り、ハンターの幹部が俺と協力したいと思うはずが無い。
「この山を調べていたところ、とある集団から思わぬ襲撃を受けたのだ」
「襲撃……まさか黒装束姿の連中か? 」
「お前も知っていたか」
「ああ。俺も黒装束姿の集団に、何度も襲撃を受けている」
なるほど。
ハンターが絡んでいる可能性がある以上、黒装束の連中もこの山に来ていてもおかしくはない。
「厄介な連中に目を付けられたな」
はっきり言って、黒装束の連中とは相手をしたくない。
「ちょっと待て。話を聞いている限りだと、この女はハンターってことで良いのか? そして、ハンターの一部が暴走している可能性があるってわけだ」
カミラが、そう言った。
流石は、帝国騎士団の特務総隊と言ったところか。脳筋そうに見えて、直ぐにその場で話の要点をまとめられるようだ。
「少なくとも、そう自称している。面倒だから、その点の追及はしていないがな」
と、俺は答えた。
この状況だと、直ぐに2対1の構図になる。俺がどっちかの味方になれば良いわけだしな。だから、昨夜と違ってそこまで緊張感はない。
「ああ。私はハンターと呼ばれている組織の幹部に当たる」
「だとよ? 」
「なら、幹部のアンタに訊きたいんだけどさ。魔族との取引関係、全部喋ってくれないか? 」
でも、やっぱり脳筋女のようだ。
カミラは再び、戦闘モードに入る。
「俺は落ち着いてこの女と話がしたいんだが? ここはレゲムーク王国だ。だから、俺に従ってもらいたいな」
と、俺はカミラに警告した。
「ったく。わかったよ」
「1つ聞きたいのだが良いか? 」
「何だ? 」
昨日、聞きそびれたことだ。
「オーガストっていう人物を知っているか? 去年の冒険者大会で優勝者で、惨殺遺体となって発見された」
俺がハンターについて調べるようになった大元の理由は、オーガスト惨殺事件だ。聞かないわけにはいかないだろう。
「知っているに決まっているだろ。彼の実家は、元々レゲムーク王国の男爵家だった。だが、あの革命戦争で当時の当主が革命軍によって捕らえられ、そして処刑された。その当主は、当時の王太子殿下を逃がすために自ら盾になったと聞く」
「なるほど……」
まさか、オーガストが貴族に連なる者だったとは。
「オーガストは私が勧誘した。今のレゲムークを捨てて、私達について来いと言ってな。実際、彼は今のレゲムークにうんざりしていた様子が窺えた。だが、我々に勧誘されたことに気づかれて殺されたわけだ」
「殺したのは、お前が遭遇した黒装束姿の連中ってことだな? 」
「ああ。先祖は革命軍に殺され、彼自身はその対極にあるべき者たちに殺されるとは。なんて不条理だ」
女から、強い憎しみが感じる。それは、間違いなく今のレゲムークに対してだろう。そうなると、ハンターの目的はレゲムーク王国そのものを標的にしたものに限られてくるかもしれない。
やはり、ゾラン公国が浮かび上がって来る。
元々ゾラン公国は、レゲムーク王国内の諸侯の1つでゾラン公爵領だった。数十年前の革命戦争時に、超王党派の筆頭格として革命戦争を戦っていたものの、当時の王家は革命軍との融和へ舵を切ったのである。
そのため、王家とゾラン公爵家の溝は深まることになり、細かい経緯がありながら最終的にゾラン公国は独立することなったわけだ。
ただし、ゾラン公爵家も当時の王太子一家を保護していたため、完全に王家と仲たがいしたわけでもない。当時の王太子の子孫たちを、今でも秘密裡に保護している可能性は高いだろう。
もう少し、彼女の様子を窺ってみるとしようか。思わぬ情報を得られるかもしれないからな。
幸い、彼女から協力を求められているわけだし、いい機会だろう。
「わかった。この山を調べる間は、共に行動してやっても良い。カミラも一先ず、その方向で良いか? 」
「国家憲兵隊のお前に免じて、その話に乗ってやるよ。ただし、この女が妙な真似をしたら、即刻その場でバラすからな」
バラすって言うのは、何かを暴露することではなく、殺すってことだろう。
嫌だね……全く。
ともあれ……
「2人とも、協力に感謝する」
何だかんだで、この3人で一時的な協力関係が築けた。
3人がそれぞれ、決して友好的な関係ではないからこそ、妙な緊張感から生まれたものなのかもしれない。
この妙な協力関係……案外面白いかもな。




