第63話 新たなリーダーの育成
朝日が、ほんの微かに見える。
昨夜は酔いの回りが早かったが、飲む量はきちんと計算していたので、体調に異常はない。
実家や自宅と違って、慣れていない場所で寝ると、小一時間ほど早く目が覚めてしまうのだ。こうして一度起きてしまうと、なかなか寝付けないので、馬車駅周辺を散歩することにした。
気配からして、既に数人が諸々の活動を始めているようだ。
部屋のドアを開けて、屋外の廊下に出る。
まだ周囲が薄暗いからか、何だかぼんやりとする。とはいえ、これで寝れるかと言われれば、寝れないのが残念なところだ。
俺は階段を降りた。
下まで降りると、脇にソドが立ってた。
「お前も起きたのか」
「ソドこそ、随分と早いようだな。そして、おはよう」
「ロム隊長なら、とっくに皆を叩き起こしている。少しでも現地に早く着くためにな。それなのに、お前は随分と甘い。いや、職務怠慢だろ」
朝っぱらからこれかよ……。
まあ、おかげで目は覚めた。
「それほど、ロム隊長が良い隊長だったのか? 」
ロム隊長を引き合いに出すということは、やはりソドは彼をとても慕っていたということが判る。
「当たり前だろ。お前とは格が違うんだよ」
「だが、俺はロム隊長ではない。過度な期待はするな」
俺はいずれ、去る者だ。
ならば、ソドこそが周りを引っ張っていくようにした方が良い。
「あっそ。お前のやる気の無さだけは、よくわかったよ」
今にも、この場から去る勢いだ。
「ソドこそ、自分がリーダーになったつもりで動いてみたらどうだ? よほどのことがない限り俺は止めはしない。好きにやってみろ」
「お前さ、隊長って自覚あるの? ロム隊長は、自分から真っ先にやって手本を見せてくれる人だった。隊員が危ないときも、いつも自分が敵を引き付けて、俺たちが逃げる時間を作ってくれた。ロム隊長は立派なリーダーだったよ。仲間想いの……。それなのに、ハンターだったなんて、そんな話があるかよ! 」
そこまで言ったソドは、ついに泣き出してうずくまってしまった。
ドラゴン討伐隊のメンバーは、何らかの形でハンターに関わっている者たちの集まりである。特に、ロムやアンナはリーダーがハンターの関係者だったわけだ。
そして、ソフィナに至っては構成員だったわけだしな。
「ソドにとって、ロム隊長が大きな存在だったのは良く分かった。なら、今度はソドがロム隊長に一歩でも近づくように頑張ってみろよ? 今度はソドの番なんだからな」
ソドは無言のまま、俯き続ける。
「ソド。俺が冒険者になった理由は、冒険者大会で優勝するためだった。オーガストもそうだったように、冒険者大会の優勝者が謎の死を遂げるという話は聞いていたからな。だったら俺が優勝して、オーガストと殺した犯人と接触しようと考えていたんだ」
そして、エリンやヒルダとの話がきっかけで、オーガストと死にハンターが絡んでいると推測した。むしろハンターこそが、オーガストを殺害したのだと。
だがその真相は、オーガストがハンターの一味になっていて、黒装束の連中が殺したというのだ。ハンターが絡んでいるという推測自体は外れていなかったが、俺にとってはショッキングだった。
「だが、思わぬ形で犯人が判ってしまったわけだし、もう冒険者を続ける必要も無いんだよ」
しかし、冒険者同士の絡みも悪くないと思うようになったところだ。
だから残り僅かな期間、俺は思い出作り感覚で過ごすことにしたわけである。
「冒険者を辞めるつもりなのか? 」
「ああ」
昨夜、アンナにだけ言うつもりで話したが、早くもソドにも伝えることになってしまったな。
まあ、案外こう言うのは早めに言っておいた方が良いのかもしれない。
「そうかよ」
そう言って、ソドは食堂の方へと1人で向かって行った。




