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幕間2


 王都ムーク市内の某所。


「ジェローム。先日の騒乱は、貴様の指示か? 」


 と、女が問う。


「はい。別途、個人的に活動資金を集めておりますので、あの程度のことは造作もありません」


 そう答えたのは、星型のバッチを3つ付けた男だった。今しがた女から、ジェロームと呼ばれた者である。


「市警に対するアピールにはなっただろうが、結果どうなったか判っているな? 」


 騒乱を起こした結果、市警以外の機関から警戒されてしまったわけである。女からすれば、余計なことをされた気分なのだ。


「申し訳ありません」


「これで、表の連中も動き出す。要するに、相手は今まで以上の人員を投入してくることだろう。だが、お前はこうなることを判っていたのではないか? 」


「いえ……。しかし≪影の兵団≫など、一部を除いて我々の動きなど察知できません。問題は無いのでは? 」


「だが、市警は事前に特別予備隊を出動させていた。行動が筒抜けになっているのではないか? 」


「……はい」


 ジェロームも、その点は気になっていた。暴動開始の前に、まるで予測していたかのように市警が特別予備隊が出動していたわけだから。

「何か……別の思惑があるだろう? 」


 女の追及が徐々に強まっていく。


「別の思惑ですか……」


「『脱兎の耳』メンバーを誘拐を指示し、その見張りを選んだのは誰だ? 」


「自分です。しかし、きちんと戦力は揃えていたはずですが? 」


「≪影の兵団≫相手に、まともな戦力がA級冒険者1人。それで太刀打ちできるのか? しかもあの場に、どうしてソフィナを配置した? 」


 結果、現れたのはイゴルたちだったが、本来は≪影の兵団≫なる者たちに備えるための見張りだったわけである。


「……本人の要望です」


「そして、護衛に偽の命令を出したのはお前か!? 」


「偽の命令ですか? 」


「私の筆跡を巧妙に真似た文書まで用意されていた」


「……」


 ジェロームは黙秘し始めた。


「先日も言ったが、お前は独断専行が過ぎる。さて、後始末も忙しい状況だ。お前に対しては一旦、謹慎処分を命ずる。直ちに本国へ帰れ」


「畏まりました」





 レゲムーク王家の住まい……つまり、王宮の一室に男はいた。

 その男はここ最近、王宮にやって来る回数が多かった。今日も、王立騎士団の総長から呼び出しを受けてやって来たのだ。


「閣下。やはり、彼らを遊撃騎士団に加入することに反対です。如何に王太子殿下の意向とは言え……」


 と、男は言う。


「今日は、お前の意見を聞くために呼んだわけではない。以前、お前から報告があった事項について、伝えてやろうと思っただけだ」


 王立騎士団の総長はそう言って、1枚の文書を机の上に置く。


「モジロ・アーカジーの捺印がされおりますが……つまり、彼のことで? 」


「ああ。議長自身から回答を貰ったが、どうやら奴は、最前線で行方不明になっていたようだな」


「行方不明……ですか」


「奴の華々しい戦果は、戦線に復帰した後のようだ。それまでは、震えながらマスケット銃を持っていたに違いない」


「では、行方不明になっていた間に、あのような技を得たと? 」


「さあな。しかし、奴が戦線に復帰してから国民衛兵軍は全戦全勝だ。さらに調べれば、色々と判るかもな」


 そう言って、総長は部屋を後にする。

 1人になった男は心身ともに疲労を感じたあまり、ぐったりと椅子にもたれかかったのだったのである。


「ただでさえ、厄介な奴だと言うのに。まだ色々とあるのか」


 彼が王宮を後にするのは、数時間後のあとだった。




 1台の馬車が、街道の脇で止まった。

 ここは、ボワド市の入口まで目と鼻の先と言った場所だ。


「ここまで送ってくれて、ありがとよ」


 そう言って、馬車の中から1人の女が出てきた。服装は特に装飾された物ではないが、首から大きな宝石をぶら下げている。女はそれを隠そうともしない。


「ゾーム卿、どうかそれを隠してください。無用なトラブルを避けるためにも」


 と、御者の男が言う。


「絡んでくる奴がいるなら、片っ端からぶっ殺すだけだ」


「……それで、自分は本当に帰ってしまって良いんですか? 」


「ああ。とりえずオークの異常繁殖はアタシが片づけてくるから、お前は何の心配するな」


「どうかご無事で……」


「ああ」


 そして、馬車は来た道を引き返し、女はボワド市内に入ったのである。


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