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引きこもり冒険者のおバカな英雄譚  第一部 暴れまくって王国を救う?   作者: 牟川
第1章 冒険者大会の狂った前夜祭
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第56話 事件の収束

第56話で第1章は終わりです。

まもなく、第2章になります。

「ここに居ると聞いて来た」


 ここは、国家憲兵隊が管理する監獄の休憩室だ。

 今から冒険者ギルドへ行こうとしていた矢先、まさかの上司と出くわしたわけである。


「……今までどこにいらっしゃったのです? 」


 仕事熱心な彼が、国家憲兵隊の指揮を放置してまで不在だったのだ。当然、何をしていたのか気になる。


「大聖堂と王宮だよ」


 まさかの、大聖堂と王宮か。

 タイミングを考えると、ハンターに関する件で何かしらの取引があったのだろうか。


「それで、両者とは何を? 」


「率直に言えば、ハンターの件から手を引けと言われたよ。だから、国家憲兵隊がハンターの件について、正式に捜査をするのは難しくなる」


 つまり、今後は王立騎士団と教会が捜査をするということか。そうなると、昨日の支部長の態度も、納得がいく。支部長も王宮関係者から、何か指示を受けていたのかもしれない。


「それで、俺はどうすれば良いのですか? 」


「今しばらく自由にしろ。あくまでも個人的にハンターを追うのは、咎めはしない。だが、いつその時が来るかは判らない。もし急ぎの用事があるなら、早いところ済ませると良い」


 既に上司の中では、俺に何をさせるか、凡その目途は立っているのだろう。そしてその日は近いわけだ。


「わかりました。再び、この地を去るまでの僅かな期間、仲間・・たちとの思い出でも作りますよ」


 せっかく一部の冒険者たちと、関わりを持つようになってきたのだ。残りの日々を彼らのサポートでもするとしよう。



 まだ、聞きたいことがある。


「ところで、スケルトンの件はどうなりましたか? 」


「お前もある程度掴んでいるかもしれないが、スケルトンの件にもハンターが絡んでいるとはっきりと告げられたよ。つまり、シェヌロカの町から逃亡した男もハンターの関係者だったということになる。だが、もはや我々が追うことも無いだろうな」


「そうでしたか。ところでハンターの正体は、ゾラン公国なのですか? 」


「私はそう睨んでいる。だから、ゾラン公国が関与していることを示す情報を集めろと言ったのだ」


 ハンターの正体がゾラン公国なら、下手したら戦争になるかもしれない。

 そうなれば、俺がゾラン公国へ派遣される可能性も出てくる。


 だが、まだはっきりと判ったわけでは無いし、一先ず置いておくとしよう。

 

「また話が変わりますが、『脱兎の耳』のメンバーが攫われたのは何故ですか? 」


 恐らく、その理由はデニス絡みなのだろうが……。


「さあな。興味があるなら、調べてみると良い」


 俺の期待を裏切って、そう上司は言う。

 単に知らないのか、或いは知っていてあえて言わないのか。





 急遽、王宮から呼び出されたイルザは、そこでの用事を済ませて冒険者ギルドへ向かっていた。

 

 王宮からの奇想天外なオーダーを受けたイルザは、酷く疲れている。

 昨日、騒乱事件があったというのに、まるで王宮は何事も無かったかのように動いていた。だからこそ、平気であんなオーダーを出せるのか……イルザはそう感じた。


「流石のS級冒険者も、あんなオーダーを出されては混乱するかね」


 不意に、何者かが現れた。

 イルザが振り向くと、絶対に鉢合わせしたくない人物がそこに立っていた。1人なら尚更だ。しかも、イルザが受けたオーダーを知っていることを仄めかしている。


「何の用かしら? 」


「プレゼントの使い心地はどうだったかね? キミには資格がある。もし、興味があるなら待っているよ」


 黒装束姿はそう意味深なことを言うと、素早くを消したのであった。


「……色々と面倒な連中ね。朝からこんなストレスが溜まるなんて。嫌な1日になりそう」

  



 

 上司と別れた俺は、冒険者ギルドにやって来た。

 特に何かをする予定はないのだが、ここに来るのが一番良いと思ったわけだ。時刻は午前6時前。冒険者たちも、それなりに集まって来ている。


「うわぁ。イゴルじゃん。こんな朝から何しているの? 」


 やって来るなり、面倒なのに絡まれた。

 『脱兎の耳』メンバーの女冒険者アンナである。昨日、ハンターに攫われたというのに、随分と元気そうだ。


 いや、そう見えるだけで、実際は相当にしんどいのだろう。


「昨日の今日で大丈夫なのか? 」


「うるさいわねっ! 運よく遊撃騎士団の人たちに助けてもらったの。イゴルと違って、みんな凄いよね。そういえば、あんたの転属先の子も居たっけ」


「エリンのことか」


「そうそう。って、そこも追い出されたんだっけ」


「ああ。色々あってな」


 とはいえ、エリンとの仲は修繕されたはずだ。昨日の彼女の行動は、誰よりも感動的だった。


「なら、ソロってこと? 」


「そう言うことだ」


 まあ、今後もソロで活動して行くつもりだ。

 その方が、俺は動きやすいからな。


「……そういうアタシも、『脱兎の耳』の後処理が終わったら、どこかのパーティーに拾ってもらわなきゃ」


 リーダーであるデニスは死亡し、他のメンバーも殆ど行方が判っていない状態なのかもしれない。


「結局、生存が判明しているのは何人なんだ? 」


「今のところ私を含めて3人。だけど、2人は精神的に参っちゃったみたいでね。塞ぎこんでいる。そんな状況だから、支部長権限でアタシが臨時のリーダーになったわけ。たぶん求められているのは、存続することではなくて解散だろうし、書類をまとめて直ぐに終わらせるつもり」


 しばらく俺とアンナが雑談を続けていると、イルザがこちらに向かてやって来るのが見えた。


「アンナさん、ちょっと来てくれる? 」


 どうやら、アンナに用事があるようだ。

 

「貴方も来て」


 俺にも用があるようだが、同時に呼ぶということは、アンナと俺に共通の話をするということだろう……。

 

 そしてイルザに連れらた俺とアンナは、応接室でとんでもない話を持ちかけられたのであった。


 その内容は、まるで俺の上司に対する嫌がらせのようなものだった。上司が既にこの話を知っているかは判らないが、とにかく、拒否し難いものだったのである。


 何故ならその話には、王宮も関与しているからだった。


 オーガストの顛末も聞けたし、冒険者という立場に用はないと思っていたが、今しばらく冒険者を続ける必要がありそうだ。


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