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引きこもり冒険者のおバカな英雄譚  第一部 暴れまくって王国を救う?   作者: 牟川
第1章 冒険者大会の狂った前夜祭
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第25話 逆襲のデニス


 イゴルが応接室を出ていった後のことである。


「イルザ先輩、どういうことですか? 」

「副団長、流石にまずいですよ」


 ロミーナとイザークは、イルザの行った情報提供がとても問題ある行為だと判断したのである。もちろん、2人の判断は間違っていない。


「2人とも、落ち着きなさい。支部長みたいにね」


 2人とは対照に、支部長はどっと構えていた。エリンに至っては、話について行けずポカーンとしている。


「イルザ君のことだから、考えがあるのだろう? まあ、大体想像はつくがな」


「ええ。支部長の仰る通りです。もし私の行動に興味があるなら付いて来てください。ただし、戦闘も覚悟した方が良い思います」



 

 

 冒険者ギルドを後にした俺は、面倒な気配を感じつつも市警本部にやって来た。

 そして直ぐにボブ警部に事情を話し、早速今夜中にゲルト逮捕の方向で動くことにしたのである。


 探偵から手に入れたゲルトの人相書きや、先ほどイルザから手渡された行方不明者のリストも、複写魔導機で複写したものをボブ警部が持っている。

 

「早速俺は、令状判事に逮捕令状を請求しに行く。あいつなら仕事が早い(・・・・・)し、時間までには間に合うはずだ」


「おう、そうか。よろしく頼むよ」


 要するに、その令状判事もボブ警部と同様によろしくないタイプの判事らしい。

 

「お前はどうするんだ? 」

 

「この『遊撃騎士団』から貰った行方不明者リストを、探偵にも渡しに行く。その後は、何とかゲルトを探し出して張り付こうかと考えている。ハンターが俺たちの動きを察知して、ゲルトが殺されたら嫌だからな」


「そうか。なら、お互い気を付けて行動するとしよう」


「ボブ警部も、何があるか判らないし警官数名と一緒に行動した方が良いぞ」


「お前に言われたくないわ」

 




 ボブ警部と別れた俺は、再び探偵事務所へと向かった。もちろん行方不明者リストを渡すためである。


 しかし、面倒ごとは消え去ってはくれない。


 相変わらず、誰かが俺のことを尾行しているわけだ。まあ、イルザたちの尾行は想定しているが、警戒すべきはそれだけではない。


 それにしても妙だ。

 冒険者ギルドを出たとき、尾行が疑われる気配が複数感じられた。しかし、市警本部を出た後からは、付近で感じられる怪しい気配は1人になっているのだ。


 理由は色々と考えられるが、少し試してみよう。

 仮にハンターに関わる人間なら、いずれ攻撃を仕掛けてくるかもしれない。



 早速、人気のないところを歩いてみるか。



 直ぐに、後方から足音が聞こえて来るのが判った。それもテンポが早い。相手は、走っているようだ。

 

 こうもあっさり釣れるとはな。


「イゴル! 」


 この声は……知っているものだ。

 つい最近まで、俺はこいつのパーティに所属していた。


 振り向くと、デニスが剣を手にして立っている。


「デニス、どうしたんだ? 」


 そう問いかけるも、デニスは剣を構えて突貫してきたのである。俺を貫くつもりなのだろう。


「悪いが、殺されるわけにはいかない」


 俺はそう言って、魔法を放った。

 すると、デニスが吹っ飛ぶ。


 これは波動魔法と言って、術者が定めた対象を吹き飛ばすことができる。魔族が得意とする魔法の1つだ。


 デニスは痛みを堪える様子を見せつつ、立ち上がった。


「イゴルの癖に! お前のせいで、僕はもう終わりだ」


 奴の眼は憎悪に満ちているような、そういうものだった。

 俺を今ここで殺そうと考えているのだろう。吹っ飛ばされたことで、猶更かもしれない。


「俺はお前に何かしたのか? 」


 間違いなく俺に向けられた憎悪だが、俺はデニスに何かをしたつもりはない。考えられるとすれば……。


「お前ごときが、僕の計画を邪魔しちゃいけないんだよ。その報いを受けろ! 」


 再び、デニスが剣を掴んで走って来る。


「お前の計画とやらを妨害した覚えない。変な言いがかりはやめろ」


「僕の奴隷にならなかっただろ? だから計画を邪魔したことになるんだよ」


 奴隷だと? 

 

 そういえば『脱兎の耳』を追放される際に、こいつから奴隷になれと言われた。本気で言っていたのかもしれないが、だからと言ってどうして俺が奴隷にならなければいけないのか……。

 

「全くもって、意味不明だ」


 まあ、詳細を訊けば見えてくる部分もあるのだろう。しかし今は、落ち着いて話を聞ける状況ではない。


「喰らえ! 超火炎斬り! 」


 超火炎斬り。

 これを使える者はそれなりに評価されるくらいには、強力らしい。普通の防御(盾でガードするなど)では、防ぎきれないとも言われている。


 俺は再び波動魔法を放った。

 定めた対象は、デニスの持っている剣。


 炎を纏った剣が、宙を舞う。その状況に、デニスは茫然としている。デニスの握力では到底、波動魔法に対抗することは出来なかったのだ。


「えっ!? 」


 彼にとっては、渾身の一撃のつもりだったのだろう。しかし、それを呆気なく防がれたのだ。

 

「そろそろ眠ってもらおうか! 」


 俺はそう言って、デニスをぶん殴った。


「ッ……」


 死んでもらっては困るので、俺は手加減したつもりだ。

 デニスは気絶している。


 後は、牢にぶち込んでおけば良い。


「こいつの処理は……同僚・・たちに任せるとしよう」


 付近の公衆電話を探す。

 それから同僚・・ に電話かけて、ゲルト逮捕の件を伝えるのと同時に、デニスの処理を任せたのであった。


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