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引きこもり冒険者のおバカな英雄譚  第一部 暴れまくって王国を救う?   作者: 牟川
第1章 冒険者大会の狂った前夜祭
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第24話 行方不明者リスト


 ボブ警部が不在だったため、冒険者ギルドに戻ってくると、ちょうどボブ警部がロミーナやイザークに聞き込みを行っているところだった。

 ロミーナたちの中には、エリンも混じっていた。


「なるほど。では、実際のところはハンターについて何も知らないわけだな? 」


 そう確認を取るボブ警部に、ロミーナたち3人は頷いた。


「協力に感謝するよ」


 聞き込みが終わったのか、ボブ警部は冒険者ギルドを後にした。

 そして、ロミーナたち3人が俺のところへやって来る。さらに奥から、まるでタイミングを見計らったかのように支部長が姿を現したのだった。


 ボブ警部を追いかけようとした手前、タイミングが悪い。


「イゴル君。応接室まで来てもらおうか? ロミーナ君たちも何か彼に言いたいことがあるようだし、一緒に来ると良い」


 俺を含めた5人は、応接室に入る。

 中に入ると、面倒な人物が既にソファに座っていた。イルザだ。


「先輩」 

「副団長」


 ロミーナとイザークが、同時に呟く。

 2人にとっても、少し予想外だったのだろう。


「ロミーナにイザーク。お疲れ。それにエリンさんもね」


 イルザは3人に労いの言葉をかけると、一瞬にして表情を変えて鋭い視線を俺に向けてきた。


「貴方は一体何がしたいの? 」


 酷い言われ方だな。

 俺だって、目的をもって行動しているというのに。


「この際だから単刀直入に聞く。ハンターとはなんだ? お前は、どこまで情報を掴んでいる? 」


 S級冒険者にして『遊撃騎士団』の副団長なら、色々と知っていてもおかしくはないはずだ。


「手を引きなさい。貴方には無理よ」


 貴方には無理よ……このフレーズを前にも聞いた。どこまで、俺を馬鹿にしたいのだろうか。


「手は引かない。俺はこれからも、この件に関わっていくつもりだ」


 俺は立ち上がって、そう言った。

 イルザは、特に動じることは無かった。


「探偵に依頼するくらいだし、貴方もある程度は本気のようね。市警に通報したのも貴方なんでしょ? だけど、そんなことをしてハンターに辿り着けるのかしら」


 まるで、無駄な足掻きだと言われているみたいだ。


「既に『遊撃騎士団』のメンバーを殺した奴までは辿り着いた。ロモスというA級冒険者を殺害した実行犯だよ」


 その言葉に、イルザを除く者たち全員が目を見開いた。俺がここまでの情報を掴んでいることに驚いているようだ。


「ああ、ロモスはハンターに関する調査をしていて、惨殺死体で発見された。だが、まさかお前がそこまで調べていたとは」


 イザークが、そう言った。


「探偵なら、ロモスに関する情報くらい簡単に得られるはずよ。驚くことではない。だから、ロモスを殺害した犯人の情報を掴んでいるという……貴方の発言を信用するにはまだ早いわね」


 イルザは、尚も俺に対して鋭い視線を向けていた。むしろイルザは、俺から情報を引き出そうとしているようだな。


「信用しなくても結構。俺は、この情報をベースに動く」


「下手に動くと、本当に殺されるわよ? 」


「襲撃を受ける可能性も、当然承知済みだ」


「襲われて無事で済むと思っているの? 」


「さあな。ところで、ハンターとやらは、組織的なものである可能性も浮上してきている。しかも徹底した秘密組織だと聞く。実行犯の1人を捕らえたところで、別の者に狙われるだろう。だが、誰かがやらなければ依然としてハンターは冒険者を殺していくに違いない。だからまずは俺が動くんだ」


 少しずつ、そして着実に行動する。まさにその第1段がゲルトの逮捕だ。

 今夜、俺とボブ警部で実行するつもりである。


 まあ、俺が動く理由は友人の弔い合戦のようなものだ。あくまでも、友人であったオーガストの死の真相を確かめたいという個人的な理由に過ぎない。


「組織的というのは、貴方の推測に過ぎない。でも良いわ。とりあえず、ハンターによるものだとされる一連の事件は組織的な犯行で、そして実行犯の1人まで辿り着いたという前提で話を進めてあげる」


「どうも」


「それで、その実行犯はどうするの? 」


「担当刑事のボブ警部に、今話したことを伝えるつもりだ。後はボブ警部次第だろ」


 少々嘘を言っているが、罪悪感はない。この程度の嘘など、誰だってつくものだからだ。


「その実行犯の名前と居場所を、ここで教えなさい」


「イルザ。もし教え欲しければ、そちらも何か情報を出してくれ」


 一方的に情報を聞き出そうとするなんてな。これでは、まるで俺は取調べを受けている被疑者のようだ。


「そうね……。なら、これとかどうかしら? 」


 そう言って、イルザはソファの下に置いてある鞄から封筒を取り出した。分厚くなっているため、かなりの資料が入っているのだろう。


 俺は、その封筒を受け取り中身を確認した。


「これは……行方不明者のリストじゃないか」


 これで、行方不明者周辺の洗い出しが可能になる。


「副団長、部外者に渡して良いのですか? 」

「そ、そうですよ! そもそもイゴル・ボルストは疑惑調査の対象者です」


 と、イザークとロミーナが言う。


「イルザ君。いくらキミでも流石に行方不明者のリストを渡すのは、大いに問題がある」


 支部長までもが、俺に情報を提供することに反対した。


 俺はさらに中身に目を通すと、リストとは別に行方不明者に関する情報が記されている資料が数十枚に渡って出て来たのだった。


「これは、『遊撃騎士団』の調査によるものよ。まだ行方不明者全員を把握できているわけではないけど、多くの行方不明者に関して情報を集めたわ。結局、調査を担当したメンバーが殺されたということ以外、大した情報は得られなかったけどね」


「イルザ先輩! 話を聞いてください」


 スルーされたロミーナが、そう抗議の声をあげる。


「ロミーナ。落ち着きなさい。後でゆっくり話しましょう」


 イルザは、ロミーナをそう諭し、再び俺に視線を向けた。


「貴方も忙しいのでしょ? なら、もう話は終わりよ」


 イルザの奴、実行犯の居場所を聞きたかったのではなかろうか……。

 まあ良い。


「そうか。なら、失礼するよ」


「最後に確認をさせてちょうだい」


「何だ? 」


「私たちも、引き続き調査を続けるわ。でも、偶然貴方たちと鉢合わせになっても、それは仕方ないことよね? 」


「……まあな」


 イルザの意図は何となく判る。

 だが、それを無理に阻止する気力もない。S級冒険者だし、何かあれば自力でどうにかするだろう。


「わかったわ。なら、後で文句を言わないでね? 」


「……好きにしろ」


 俺はそう言い残し、応接室を退出したのであった。


 さて、俺はこれからボブ警部に会って、今夜のことについての段取りを行わなければならない。



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