さくら日記 高校1年生 秋 サッカー部の大砲になる?
「あちゃ~」
さくらはシュート練習でボールを大きくフカし、正にホームラン!ハンドボール部のコートまで転がっていった。
「ゴメン、ごめーん~」
ハンドボール部の皆に遠くから声を掛けて、男子に蹴り返してもらった。
「サンキュー」
「さくら、しっかりー!」
ハンドボール部の女子から声が掛かる。
「お~ありがとー!」
ボールを抱え、いそいそとコート(校庭内の女子サッカー部に割り当てられたの練習スペース)に戻ると、友美が少し厳しい顔だ。
桜井 友美はこのチームでさくらと『サクラコンビ』と呼ばれ、クラスメートでもあり、二人は実際に仲良しだ。
そんな友美はこの秋から、1年生ながらに、テクニシャンでありサッカーへの理解も深く、チームの中心的な存在となっていた。
「さくら、ちょっと」
友美はさくらのサッカーコーチ的な存在でもある。
「さくら、あんた最近プレーが雑。力任せにボールを蹴り過ぎ!」
最近はサッカーに、ボールを蹴る事にも慣れた。自分でも上手く強いシュートが打てるようになったと思う。でも確かに精度は悪いなぁ。
「特訓、とは違うけど、指導をします」
「はぁ〜い」
「返事が悪い!」
「はいっ!」
何だ今日の友美、怖いなぁ
「さくら、あんたは私達のチームの得点源ならなくちゃいけないの。そうね、今日からあんたを大砲にしてあげる!」
た、大砲〜って。可愛く無い、、、。
「さくら、最近シュートを良くフカすよね」
「う、うん」
「シュートはね、ゴールマウス、枠に飛ばさなくっちゃ」
分かってますが、そのつもりなんですが。
「フカすとね、それで攻撃は終わり。でもね、枠にボールが向かえば、ゴロでも何でも何かが起こる可能性が有るのよ」
「うん」
「キーパーが弾いて誰かが詰めるかも知れないし、ディフェンダーに当たってコースが変わるかも知れない。でも、シュートをフカしたらそれでお終い。だからゴールの枠内に向かうボールはワクワクするんだよ」
「は、はい」
「さくらの最近の悪い癖はね、ボールを早く蹴ろうとする事。シュートする時にボールを迎えに行って、体とボールとが離れたトコで蹴ってシュートしてる。蹴るボールの位置が自分の体と離れて足を伸ばすと、ボールが体の前だと体は開いているの。足首も上向きになるわぁ。だから蹴ったボールは上がり易くなる。遠くに飛ばす時はそれでいいのだけど。さくらがシュートをフカす原因はそれなの」
へぇ〜、確かに、早く蹴りたい、蹴らなくちゃと思っちゃう。
さくらの振り足が速い事も原因である。
「だからもっと溜めて、ボールを自分に迎え入れて、もっと体の近くで蹴るようにしなくっちゃ。さくらは何でも早いから、今より一呼吸遅らして蹴っても、全然大丈夫だと思う」
ふぅ〜ん。
「では今から3つ、指導します」
「え、今からなの?今までの説明は、、、」
早く練習に戻りたいのに。シュート蹴りたい!
「何よ、文句有るの?」
「いえ、、、お願いします」
さくらは友美に怒られている様だが、内心は嬉しかった。
自分に真正面から向かってくれる、それも私の為に。何よりももっとサッカーが上手くなれる!
「いい、さくら。さっきも言ったけど、あんたは得点源になるの。だからチームの大砲にならなくっちゃダメ」
「はい」
「先ずはゴールの位置を何時も意識しなさい。ゴールを背負った位置でボールを受けた時も、ボールを受ける前に自分とゴールとの位置を確認しなさい。それはたとえゴールが正面であっても、その位置を確認して、自分とゴールを一本の線で繋ぐの」
「はい」
「次はシュートよ。ボールの蹴り方が雑なひとつ、ボールを蹴る場所。いつもボールの真ん中を意識して蹴りなさい。真ん中を見てしっかり蹴る事」
「はい」
「3つ目はさっき言った体勢よ、早く蹴らない。ボールを蹴る時になるべく体の近くで、足元で、、、そうねぇ、さくらは体を起こさずに前屈みぐらいで蹴ってもいいかも。コースとか強いシュートはこの3つをクリアしてからでいいわ」
「はい!」
よぉ〜し、やるぞー!
さくらと友美はシュート練習に戻った。
「はい!」
さくらは手を挙げボール出しを促す。
ボール出しはゴールマウスから左右に少し離れた場所で、内に向かって少し強めのゴロでボールを蹴り出す。
1回づつの交代制だ。
シューターはペナルティーエリアの外から来るボールに走り向かいシュートを放つ。
「ゴールと自分を繋いで、ボールの真ん中を、体は屈み込んで、しっかり蹴る!」
さくらの放ったシュートはゴールネットに突き刺さった!
「ヘイヘイ!キーパー逃げてるぞー」
チームメイトがキーパーを野次る。
「こんなの危ないよ!」
さくらのシュートは相当の威力とスピードだった。
「さくらー!殺人シュートだ!」
「殺人シュートだ、さくらー!」
ワイワイ、ガヤガヤとさくら放った一本のシュートが練習を盛り上げた。
「さくら、それよ。その感じ」
うん、強く蹴らなくても、しっかりとしたシュートになった。
「もう1回!もう1本!」
ああ、この感じを忘れない内に、、、
「嫌だよ、ちょっとぉ誰か代わって〜」
キーパーは逃げ出しそうだ。
大砲さくらが誕生した。
でも『殺人シュート』って、イメージ悪いなぁ。




