エルフの里国の夜空の下で
隣で座るリーザと並んで小高い丘の草むらで横になり、見上げる夜空には月が有る。
月は月なんだが、異常に大きい、そして近い。私の世界で見る月の優に10倍は大きく見える。
月の表面の地表の模様、クレーターも肉眼で見えてしまいそうだが。しかし、地球から見慣れたイメージとは大きく違って見える。
大きな月が昇る夜空は明るく、周囲と隣に座るリーザの顔がはっきりと見える。
また、月の明るさが強いのでその他の夜空に浮かぶであろう星々は、目を凝らしても良く見えない。
でもこれが、エルフ達が永きに渡り見てきた夜空だと思うと感受深いモノが有る。
「リーザ、月が大きい。感動する大きさだ。でも何か月に引っ張られそうだよ」
リーザは私の隣で並び座り、微笑みを浮かべた顔を向けてくれる。
「私は、向こうでトキヒコさんと見上げた夜空に浮かぶケシェヅィック、、、月ですね、遠く小さく見えた事を不安に思った時が有りました。でもですね、それとは比較にならない程、夜空に星々が煌めく様は感動を覚えました」
「うん、天の川とか星々が煌めく夜空は幻想的で美しい。夜空が暗ければ暗い程。そうだね、今の私の世界でも街の明かりが反射して、郊外にでも行かないとキレイな夜空はなかなか拝めなくなっちゃたけどね」
こうして夜空を見上げると、自分が今居る場所は何処なんだろうと、改めて思う。
エルフの里国は、いったい何処に有るのだろう?リーザや女王ユーカナーサリーは何処から私の住む世界にやって来るのだろう?
これを疑問に持たない方がおかしい。
当初はパラレルワールドとかの別世界、それこそ異次元からの来訪者と思っていた時もあったが、エルフの里国に訪問する回数も増え、陽が昇り陽が沈む。そして月が上がる。地球と何ら変わらない。
こうして夜空を見上げていたら、今居るエルフの里国は地球とは別の天体、別の惑星に存在しているのでは無いか、と思う。
かと言って、それがどこなのかは全く解らない。
私の知る限り、太陽系に人間と同等の知的生命体が発見されたのを聞いた事が無い。まだまだ探索は道半ばとしても。
ではもっと遠く、何万光年も先の星系、惑星なのだろうか?
ただ、ここが地球と別の惑星だとしても、リーザの『越える』や女王ユーカナーサリーの持つ魔力で『繋ぐ』事で惑星間を渡って来る事の説明はどうなる?
まあ、そもそも魔法だ。凡人な私が理解出来る次元の事象では無い。
これが私が見続ける夢であったのなら、、、それが何よりの説明になるのだが。
「リーザ、消えないよね?」
私は横に並ぶリーザの手を取った。
「はいトキヒコさん、私は消えたりしませんよ」
そう言って微笑んでくれる。
リーザと初めて会った時、リーザは自分の手を私に取らせ、私達が現実であり存在している事を証明してみせた。
私は幸せ者だ。だけど、だからこそ怖い。
今のこの状態が夢であったのなら、夢から醒めた私は死んでしまうだろう。
「トキヒコさん、どうされました?」
「うん」
リーザはここに居る。私もここに居る。
「うん、ここで夜空を見上げていたら、エルフの里国は何処に有るのかなぁ〜って思った」
「はい」
リーザはいつも私の言葉、私の話しに耳を傾けてくれる。
「でも、そんな詮索は止めた」
「はい」
「だってリーザはここに居るし、エルフの里国はここに有る。それでいいや。と思った」
「いつか、何代か先のエルフが地球とエルフの里国との位置関係を知る者が出るかも知れない。その時でいいやって思った」
「はい」
「あれ?もしかしてリーザは知ってるの?」
「さあ、どうでしょうね」
え?知ってたの?分かっているの?
「私はトキヒコさん、知りません」
「なんだぁ〜勿体ぶらすなぁ〜、ビックリしたよ」
リーザが珍しく、イタズラっぽい態度を取り、微笑んでくれる。
「私達エルフは、私達の里国の外を余り研究していません。実はトキヒコさんの世界に行き、そこで多くの科学的な知識を知る事の方が多いです。太古の昔に私達も科学技術相当の社会を形成していた時代があったと聞いた事が有りますが、それは夢物語でしか有りません。いつの日か科学技術相当の知識を得、社会を発展させるエルフが現れるかも知れません。ですが私は、私の個人的な意見になりますが、今の私は求めていません。ですが、そんな時代がいつの日か訪れる事を私は拒みません」
そう、エルフ達に今の私の世界の技術や科学、産業等を伝授すればあっと言う間に理解し再現し、その先へも進むだろう。
でも彼らは望んでいない。
今、目の前に有る事に対して、工夫や改良行う。進化とか発展とは少し違う。
自己中心、相手を打ち負かす為の競争、無闇な争い、無益な殺生、、、行わない。悪意が無い。
人間は人類は、相手を蹴落とし、蹂躙し、征服し、裏切り、殺し殺され、、、不要な物、解決出来ない問題を多く産んだ。いや、無限に産んだ。
種族や人間同士の対立、戦争、廃棄物、自然破壊、、、それは未来永劫、子孫達でも解決出来ない問題を今も産み続けている。
「未来や将来も大切だけど、オレはどちらかと言うと今が大事だもんなぁ」
「はい、その意見も拒みません。トキヒコさんと一緒に居られる今が大事です」
リーザは私より長く、永きに渡り生きて行くのだろう。リーザの人生(エルフ生?)において、私と過ごす時間は僅かな物かも知れない。
だけど私がリーザと一緒に居たい!エルフにとっては、これは人間のわがままかも知れない。だけど私は人間だから我儘を言う!
「リーザ、私が死ぬまで付き合ってもらうよ!」
「はい!」




