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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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さくら日記 高校2年生 夏 ご褒美と涙

「さくら、決勝戦凄かった。さくらがあんなにやるなんて知らなかったよ。優勝おめでとう」

さくらは女子サッカーの高校総体の地区予選で優勝した興奮も冷め止まぬ中で、夕飯の食卓に着いた。

次は県大会が待っている。

「へへ、お父さんありがとう」

「さくら、コレ」

トキヒコはさくらに、クジ引きか単語帳の様な紙の束を渡した。

この紙束は、パン屋のご主人が作ったお手製のパン交換券だ。

「パン屋のご主人から頂いた。好きなパンが21個貰える交換券だ」

(トキヒコは半分相当の金額を支払った)

さくらは貰えるパンが“21個”と聞いて「え?」と思った。

「さくら、21個だ。不服か?」

「う〜ん、1点に付きパンが5個って約束だったからなぁ〜、だから頑張ったんだけどなぁ〜」

「そう、1点取る毎にパン5個の約束だった。でも3個でも十分だろう」

「う、うん」

「さくら、点を取ったらパンが貰えるって言うのは、確かにモチベーションになったかも知れない。でもパンが欲しくて点を取ったのか?」

「・・・。」

「もしもオレが監督だったら、そんな考えの選手は使わない。例え負ける事になっても使わない」

「・・・。」

「サッカーと競技は違うけど、ラグビーの合言葉で『One for All,All for One』って言葉が有る。何ていう意味だ」

「、、、一人は皆んなの為に、皆んなは一人の為に」

「そう、団体競技に通じる言葉だ。さくらが試合中にミスったら、どうなる?誰かがカバーしてくれるだろ」

「うん」

「だから先ずはチームとしてのプレーを考えて皆んな力を合わす。そんな中に一人の選手が自分勝手に自分の都合でプレーするのなら、要らない。サッカーはチームプレーだ、決して一人では戦え無いし、一人では勝てない」

(でも今日、さくら一人で勝ったよなぁ)

「うん」

「それとなさくら、駅前商店街の方達が、試合を観に、さくらを応援しに来て下さっていた事知ってたか。今日だけで無く、前の試合も」

「うん」

「じゃあさ、その後会った時、お礼言ったか?この前は応援に来てくれてありがとうって」

「言って、、、ない」

「応援に来て下さった、一人ひとりに改めて挨拶をしに訪問までする必要は無いけど、実際に試合が終わった時に皆んなでスタンドに向かって挨拶してたからそれでいい。でも、別の時に会ったのなら、お礼は言うべきじゃないか」

「さくらの応援に来て下さった方達は、さくらを応援したいから、言い方は悪いけど勝手に来た。その人の都合だ。でも、それでも自分の用事を横に置いてわざわざ来て下さった事に変わりは無い。当たり前と思っちゃダメだ、感謝するべきだ」

「はい、ごめんなさい」

さくらはボロボロと泣き出した。


トキヒコは席を立つと、そっとさくらの頭の上に手を当てた。

可愛い可愛い娘に対して、幼い頃からやって来た習慣だ。

「さくら、ごめんな。折角優勝した日に説教しちゃって。許してくれ」

「うん!」

「それとな、パンが35個から21個に減っちゃた事も許して欲しい。これは大人の都合だ。パン屋の女将さんも、決して嘘をついた訳では無い。オレがそうしてくれってお願いした。だってパン35個って多すぎるだろ。21個だって、ご褒美にしちゃあ多いと思うけど」

「ううん、1日5個食べたら1週間分だよ」

「それは食い過ぎだし、リーザおやつ作ってくれ無くなるぞ」

「それ、困るなぁ」


「だけど2点目のジャンピングボレーは凄かった!サッカーのゴールを色々見て来たけど、オレの中ではナンバー1のゴールシーンだったよ。映像が無いから見直せないのが惜しい」

「えへへ」

(お父さんが珍しく、凄く褒めてくれた)

「あれさ、まぐれ?」

「う~ん、野生の勘、かな?」

さくらは涙したが、トキヒコに自分の態度を責められた訳では無く、ちょっと改めろ、相手の事を思えと言うメッセージを理解した。

だから、何時もの態度、会話に戻れた。

「そうだ、ご褒美のパンね、部活の皆んなに持って行くよ。点を取ったご褒美だけど、パスを貰えなくっちゃシュート出来ないしね。だから皆んなで勝ち取ったご褒美だよ」

「そうか、さくらにしちゃあ、いい考えだ。部活は何人居る?」

「もう、何よー。ウチの部は14人だよ」

「さくらの取り分が減るなぁ」

「One for All,All for One.だよ」

「そっか。監督?先生の分はオレが出すよ」

「渋いな〜お父さん、1個分かぁ」

さくらは、八百屋の女将さんの口真似をしてみた。

(いやさくら、そのパン交換券の代金、半分オレの小遣いから出てるんだけど)


父と娘のサッカー談義は尽きないようだったが、母リーザはトキヒコとさくらのやり取りを、じっと見守っていた。

母リーザはそんな二人の姿を見ていられる事が嬉しかった。

「リーザ、ごめん。ご飯何?」

「今日はカツです。トンカツです。まだまだ試合は有ります。次も勝つ為にです。でもトキヒコさん、ソースを掛け過ぎ無いように」

「はぁ~い。そうだ、県大会に進めるんだ、凄いなぁ。さくら、全部勝て」

「うん!」




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