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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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さくら日記 高校2年生 夏 サッカー部

「さくら〜、今日さくらの家に行っていい?」

「別にいいけど、何で?」


「さくら本を貸してくれるって言ってたのに、全然持って来てくれないじゃん」

「あ、ゴメン、忘れてるや」


貸すと言った本は『はてしない物語』(〜ドイツの作家ミヒャエル・エンデによる、児童向けと言われるファンタジー小説だ。1979年刊。1984年映画ネバー・エンディング・ストーリーの原作となった本だ。)あの本、以外と重いのよね。


「でもわざわざウチまで取りに来てもらうのも大変だし、明日は必ず持って来るよ」

「ダ〜メ、さくらの家に一度行ってみたいから」

へぇ〜


「ウチに来ても、特に変わった物は無いよ」

「いいの、いいの。高校生になってから、誰かの家に行った事が無いわぁ」

「うん確かに。小・中学校では学校区が同じだから比較的皆んな近いんだけど、さすがに高校だと皆んなバラバラだもんね」


今日は試合前の部活で昼練習が終わった。

女子サッカー部の部室での着替え中であった。



さくらは高校で女子サッカー部に入部した。


女子サッカー部が有る事が、高校を決めた理由のひとつでもあった。


さくらがサッカーを競技として本格的に始めたのは、高校のサッカー部に入部してからだった。それまでは友達や父とのボールの蹴り合い、遊びの程度であった。

それでも1年生の秋からは実質的なエースとして、左ウイングのポジションでレギュラーとなった。


テクニックはそこそこに、スプリントと高いボールの競り合いは、男子にも負けない強さを持っている。

シュートするキック力も男子を越える程、 女子サッカーを圧倒する。


夏の高校総体、地区の大会も残すところ来週末の決勝戦を残すのみ。


学校は昨日から夏休みに入り、夏休みの最初となる今度の日曜日が決勝戦である。

相手校は決勝戦の常連校。この地区の女子サッカーの強豪校で、さくらの通う高校の女子サッカー部は、練習試合も含めて一度も勝てた事の無い相手。


しかし、毎回1回戦ボーイとは今年は違い、初優勝の掛かる一戦、チームとして燃え上がっている。




「駅から歩きだと、普通に歩くと20〜30分ぐらいかな。でも、自転車が有りまーす」


駅の改札をくぐると、目の前は駅前商店街だ。さくらは何時もこの商店街を抜けて行く。


「2人乗りだと、見付かったら怒るられるよ」

「平気、へーき。出発!」


さくらが自転車のペダルを踏み込んだ途端、お巡りさんに見付かった。


「あちゃ~さくら、早速お巡りさんに見付かっちゃった。悪い事は出来ないね」

「あ、お巡りさんこんにちは~」

「おお、さくらちゃんお帰り。気を付けて行けよ~」

「はーい」

「ええ!何で?」



「さくらちゃんお帰り〜、お友達と一緒かい」

「うん、こんにちは」


「さくらちゃん、お帰り〜」

「はーい、ただいま〜」


さくらが通る店先、店先で皆から声を掛けられる。


「ちょっとさくら、何?有名人なの?」

「う〜ん、ママが有名人かな?」

道行く人達も、さくらに手を振って来る。



「暑い、アイス食べて行こう。奢るよ!」

そう言ってさくらはパン屋の店先で自転車を停めた。


「こんにちは、アイス下さい!」

「さくらちゃんお帰り」

「はい、ただいまです」


さくらは、お店の人と顔を合わすと、アイスクリームの冷蔵庫に顔ごと突っ込んだ。


「あ〜気持ちいい!~はい、友美も選んで選んで」

友美はさくらと同じアイスにした。


日除けの屋根で上手い具合に日陰となっている、店の外に有るベンチに二人並んでアイスを食べ出した。

「あれ?さくらお金は?」

「へへっ、ツケです」

ツケって、高校生なのに。



ベンチでアイスを食べてる二人の前に、自転車が停まった。


「さくらちゃん、お帰り。次の試合はいつだい?」

(あ、この人見た事有る。)

友美は先週の試合会場で手を振り応援している姿を見た気がした。


「うん女将さん、ただいま。今度の日曜日の10時キックオフだよ」

と、さくらは言うと友美をチラ見した。


「そ、そう、10時キックオフです。市民グランドの第1か第2コートです」

パン屋の女将さんも外に出て来た。


「日曜日試合かい?勝つ?」

「うん、勝つよ!初優勝が掛かってるからね。ねっ友美」

「ええ、勝ちます。必ず勝って優勝します!」


「よく言った。じゃあ、1点に付き好きなパンを3つプレゼントだ」

「やったぁー!」

さくらは試合で、もう点を取ったつもりだ。


「パン屋、渋いなぁ〜。もうちょっと出せないのかい?」

「じゃあ5個だ。1点に付き5個サービス!」

「うん、じゃあ10点取るよ!好きなパン50個だよ!」

パン屋のおじさんも出て来た。


「おいおい、そんな事勝手に決められたら破産しちゃうよ。さくらちゃん本当に10点取るかも知れないぜ」


サッカー競技において、10点という二桁得点は発生しづらい。

女子高生の試合と言えども決勝戦で有る。両チーム合わせて2〜3点が妥当なスコアだろう。



アイスを食べ終わり

「そうだ、ジュースも貰って行こう。ウチってジュース置いてないの。お茶と牛乳しか無いから、お客さん用にジュースを持って帰ろう!うんうん」

さくらは一人で納得して、再びパン屋の店内に入って行った。


紙パック1リッターのアップルジュースを選んだ。

私の独断と偏見で決めました。


「女将さん、ジュースも一本持って帰るよー」

「はいはい。家までの帰り道、気をつけなよ」

「はい!」



さくらの漕ぐ自転車は、2人乗りとはいえ速い。

スイスイスイ~と自転車は走る。



「ただいまぁ〜。ママ〜お友達を連れて来た」

「はいはい、お帰りなさい」

母リーザはいそいそと、奥から出て来てさくらを出迎えた。


「こんにちは、お邪魔します。あれさくら?お姉さんが居るって聞いて無いんだけど」


エルフのリーザはトキヒコと出会ってから約18年、その容姿は変わっていない。


(さくらのお母さんは“エルフ”だって聞いていたけど、初めて見た!すごくキレイ。でもジロジロと見るのは失礼だね)


「嫌だなぁ、私のお母さん。こっちは桜井 友美さん。私達サッカー部では『サクラコンビ』なんだよ」

実際に友美も2年生ながら、部活のサッカー部ではスタメンのレギュラーとして名を連ねる。



さくらの部屋は二階だ。


「何さくら、この本!」


さくらの部屋の壁の1面は本棚が並び、ビッシリと多種多様な本が詰まってる。その上、並び切らない本が床に横積みされている。少し飽和状態で散乱している。


「あー、半分以上、ううん殆どがママの本。ママって本を1回読むと、内容全部覚えちゃうから貯まる一方。ウチって広く無いでしょ、だから私の部屋、本置き場にもなってるの。下の方に横積みなのは、お父さんのマンガ」


「え、さくらのお父さんってさくらの部屋に入って来るの?」


「うん、普通に入って来るよ。でもドアに鍵が掛からないからノックは最低するけど」


友美は少し驚いた。自分の部屋に父親が入って来るのは、何か嫌だった。そんな年頃だ。


「さくらってさあ、小学校ぐらいから変わって無いんじゃないの?」

友美はさくらが学業ではトップの成績なのに、男女隔てなく話し、対応している姿や言動、クラスや部活での仕草や態度が天然?とも思ったが、何かそれとは違う純粋さ、幼さを感じていた。


「何よー、背もこんな伸びたし、オッパイもブルンブルンだよ!」


(それが小学生レベルなんだって。)

友美はこんなに純で無邪気で明るいさくらが大好きである。



「ん?何かいい匂いして来た」

「うん、ママの趣味、お菓子作りなんだ」

「へぇ~いいね」

「さくら~、降りてらっしゃい」

母リーザが階段下から、さくらを呼ぶ。

「ほらね。はーい」


階段を降りると、キッチンからの甘い匂いが広がって来ている。


「さくら、クッキーが焼けました。これを二人で召し上がりなさい。でもですね、友美さんが食べて下さるのか、それと食べられるのか。アレルギーをお持ちかも知れません。自分が大丈夫だからでは無く、先ず相手を思いなさい」

「はい」


「ですので、友美さんの趣向の違いやアレルギー等の問題がありましたら、別の物を用意します。よいですね」

「はい」


「それと、、、」

母リーザの顔色が少し陰る。さくらも、リーザの雰囲気が変わった事を察知した。


母リーザは、さくらが持ち帰ったアップルジュースのパックを指差し

「さくら、お店の方の了解を得ていたとしても、お金を持たずにお店の商品を先行して頂く行為は褒められる事では有りません」

(「うへぇっ」)


「友美とアイスも食べました」

「そう言った報告は早く、きちんと行う事。後でお金をお渡ししますから、友美さんを駅に送り届けられる際の帰りに、お支払いを済まして来なさい」

「はい、ママありがとう」


「それとですね」

(「あ、やばい。始まる、、、。」)


「私達は自由資本経済の中で暮らしてます。わが国の一般小売り市場は、商品と金銭とが同時に交換される事で商いが成り立っています。ですので、さくらの行為はそれに反します。あくまでも駅前商店街の方達の特別な配慮であり、ご好意であります事を認識しなさい。どこでも通用する事では有りません」

「はい」


さくらも分かっている。良くない事も分かっている。


「まったく“ツケ”だなんて、さくらは良くない事を学んでいます」

「お父さんです」

さくらは胸を張った。


「分かってます。ですので悩ましいのです」

エルフは悩み事を抱え込んだり、長く持たない。


エルフたれど悩みは持つ。しかし、ひとりでそれを抱え込む事はしない。悩みや問題を解決する為に、問題を解析し最適な解決策を導き出す。

一人では解決策に至らない場合は誰かの手を借りる。ひとり、二人、、、皆で解決案を出し合い模索し解決法を見付ける。多くの者が問題を共有する事により『十人寄れば文殊知恵』を実践している社会である。

人間トキヒコは、そんなエルフを悩ませる存在である。


「さくら、金輪際“ツケ”為る行為は禁止とします」

「ええ~」


「さくら、自動販売機で品物を購入しようとした際、手元に持つお金が足りなかったらどうしますか?」

「買えません。だから、見送るなり諦めます」


「それです。分かっていると思いますが、それが一般的であり、常識と言える行為です。」

「はぁ~い」


「ですので、禁を破りましたら、罰を与えます」

「ええっ!エルフに罰は無いって、、、」

もにょもにょと、さくらは小声になる。


「さくら、ここはエルフの里国では有りませんし、さくらはエルフですか?」

「多分、半分です」

「よろしい。禁を破りましたら、お小遣いを減額とします。一般的な措置ですね。減額の額面や期間については、その時に考えます。トキヒコさんの意見もお聞きします」

(「お父さんも加わってから決めるんだ」)


母リーザの独断でなく、父トキヒコが加わると聞いて、さくらは少し安堵した。

(「お父さん、私の味方だもんな」)


「さあさくら、長くなってしまいました。先ずは友美さんに確認を取る事を忘れずに」

「うん、はい!」



「ごめ~ん、ちょっと怒られた」

さくらはそう言うとアップルジュースを指さしパックの端をトントンとした。


「あ~ツケね。しょうが無いね」

「はい、おやつだよ~」

母リーザが焼き上げた大判のクッキーがお皿に山盛りだ。


「わー大きいぃ、いい匂い、美味しそう」

「あ、友美ごめん。アレルギーとか有った?それとクッキーは友美の趣味趣向や宗教的な側面、家庭の事情や生活背景等で食べちゃいけないとか無い?」

「何それ?無いよ」

「ではでは、頂きましょう」

「はーい、頂きます」


さくらと友美ははそれぞれ母リーザの焼いたクッキーを手に取ると、パリっと口にした。

「あっ、ちょっとしっとり感があって美味しい!甘すぎ無くて丁度いい感じ!」

「うん、焼き立ての出来立てだ!」


「さくらは何時もこういうの食べてるの?」

「うん、ママは甘過ぎるの、砂糖が多過ぎるのはダメだって。だから自分で作るようにしたんだって」

いや、砂糖の量を抑えていると聞かされても、十分しっかりと甘さは有る。美味しい!


「さくら、さっきアイス食べたじゃない。でもコレ売れるんじゃない?私だったら買っちゃうな」

「へへっ、ありがとう。私がアイスを食べて帰って来た事なんて、ママはお見通しだよ。このクッキー売れるのか~友美が褒めてくれたって、ママ喜ぶと思うよ」



「ねえさくら、さくらのお母さんの事は見れたんだけど、さくらのお父さんって、どんな人」

(エルフって不思議!すごくキレイで、だからさくらもキレイなのか。いいなぁ~何か羨ましいぞ!)


う~ん、とさくらは腕組みをして、何かを考え出した。


「う~ん、お父さんね『傷は男の勲章だ』とか『転ぶ時は上手に転べ』とか『ケガを恐れず思いきってやれ』『ケンカをする時は1体1で素手でやれ、それで絶対勝て、負けて帰ってくるなっ!』とか、私、女の子なんですけど」

さくらはトキヒコの声真似をして、自分で言って、呆れている。


友美はトキヒコを知らない、会った事も無い。だけどさくらの真似する口調から、なんとなく人物像を感じた。


「ああ、それと『困った時はオレに言え。ケツは拭いてやるから思い切ってやって来い!』って、ケツって、、、ホント私、女の子なんですけど。あっそれと『でもお金以外の事な』って必ず付け足すのよ~変でしょ」

「変ねぇ~、でもいいじゃない」

「そお?」


友美はさくらが羨ましかった。自分は中学生になって以降、ろくすっぽ父親と話しなんてしてない。それに誰かに父親の事をこんなには話せない。もっと、ううん、少しだけ父親と話そうと思った。

(そうだ、さくらのお父さんの事を教えてあげよう。お父さんは何んて思うかな。変な人って思うかな。うふふ。)


「ん?友美どうしたの」

「何でも無い。さくらの天然はお父さん譲りなのかな。クッキー美味しいわ、さくらのお母さんにお礼言っておいてね」

「天然って何よっ!うん、でもジュース甘い。ダメだ、牛乳取って来る」



その後もクラスの事や男子生徒の事、テレビ番組に始まりネットの話題。

そして決勝戦に向けた意気込みや、二人だけの作戦会議も行って、あっという間に時間は過ぎて行った。


「さくらのお母さん、ご馳走さまでした。またお邪魔してもいいですか」

「はい、ウチはどなたでも何時でも歓迎させて頂きますよ。是非またいらして下さい。お待ちしておりますよ」

(はぁ~何か響く口調だなぁ~いいなぁ~)


母リーザの姿が見えなくなってから、さくらと友美は来た時と同じように自転車に二人乗りした。


「さくら~!また遊びに来てもいい?」

「うん。いいよー!でも今度は友美のウチに遊びにいかなくっちゃー!」

「嫌よー!」

「なんでよー!」

「だって、何か恥ずかしい!」

「ダメー!順番ね!」

大声で話す女子高生の二人乗り自転車が夕日に傾く田舎道を疾走した。



「あ、友美に本、貸してないや」





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