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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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リーザ、ピクニックの森を行く

 森に入ると、リーザは自然界に有るのか、目には見えない何かしらのパワーを吸収するかのように、元気さが増す。

 エルフって私達の世界観、まあ空想の物語の中だけど『森の住人』とか言われているが、リーザはそれを体現している。

 誰かが私の知る『エルフの里国』に行き、そこでエルフ達を見た人がこちらの世界に帰って来て、何かに綴ったのかなぁと。それが今現在も色々な形となって誰かが継承しているから『エルフ』って存在が架空であっても存在するのかなぁと思ってしまう。

 私にとって、エルフ達と接した事の有る“先輩”が存在するのだろうか。


「リーザ、私以外の人間の誰かが、エルフの里国に訪問した事って有るの?」

 エルフの永き歴史。具体的にエルフ誕生(先に“ヒト”為る存在が在ったと聞いてはいるが)から今の時代まで、どれだけの時を刻んだのか、具体的には知らないが我ら人類よりも多くの月日が流れたのだろうと、想像と聞かされた体験がある。

 だからエルフの里国の外の世界、私の様に人間との接触はあったのかも知れない。と思ってしまう。

「トキヒコさん、私の知る限りでは聞き及んでおりません。トキヒコさんが私達の里国への人間、人類ですかね、来訪者第1号だと思われます。今度ユーカナーサリーに伺ってみましょう」

 私が栄えある訪問人類の第1号!なんか嬉しい。


 でも正直な所、多くの人間がエルフの里国に行って欲しくは無い。

 それは私の身勝手な我儘であるが、多くの人間がエルフの里国に入る事によって、あの場所を荒らされたく無い。

 人間は身勝手で我儘で強欲だ。私自身がそうだから良く判る。

 私は強欲な人間だ。だから私だけの秘密の場所にしたい。


 今日はリーザ、さくらと揃って家族三人、森の中にピクニックに来た。

 私達の住む町は片田舎とは言え、舗装された道路、コンクリートの建物、自動車の排気ガス、、、今現在の一般的な生活環境に囲まれている。

 時々そんな世界を離れないと、リーザに変な影響を及ぼしてしまうのでは無いかと、何時も心配している。

 もっと田舎に越せばいいのだけど、さくらを人間社会で育てる、我が国の一般教育課程を受けさせたいので、私が今の仕事を続け賃金を稼がなくてはならない。別段資格や特技も持って無い。

 まあ、私自身が今の生活を続けたいだけ、便利さ都合の良さを捨てられないだけなんどろうけど、今はそうしていたい。弱いのよ私、ズルイのよ私。


 『森林浴』かどうかわ分からないけど、街の喧騒から逃れると落ち着く。私は田舎育ちだからどこかで土の匂いや川の流れ、池や森の空気を求めている。

 さくらも森の中や小川の辺は好きみたいで、一緒に昆虫や小さな生物を探したりしてくれる。

「ママ~、リスさんはいないの?」

 森の中。木々が生い茂れば、そう思うかもしれない。

「へぇーリスか。さくら、絵本かテレビで観たの?」

「うん、両方!」

 そっかそっか。

「でもなぁリスさんはどこにでも居るとは限らないから、この森に住んでいるのかどうかは、分からないなぁ」

「トキヒコさん、探しましょう」

 探すって?

「リーザ、木に登ったりして探すの?」

「ええ、そうしましょう」

 と、言い終わるが早いか、リーザはスルスルと近くの木に登ってしまった。猿だ、猿が出た!でも猿よりも美しい猿だ!

 私とさくらはリーザが登った木を見上げる。

 リーザは枝の付け根や幹を観察し、リスの痕跡を探しているようだ。

 あ、降りてきた。スルスルと。

 今度は地面にへばり着いた。

 四つん這いになり、草をかき分け匂いを嗅いでいる。

 このエルフ、本気だ!狩猟心が出て来たのか!?

「この辺りではダメですね。木の実や小生物を食べた痕跡や糞尿が確認出来ましたら良かったのですが、ここに何かが居たという形跡、痕跡が辿れませんでした」

 糞尿って、、、本気度が怖い。

「さくら、少し待ってなさい」

 あっ、リーザ行っちゃった。

 リーザは肩に布袋を下げ、森の奥へと駆けて行った。ボクのお嫁さんが獣にでも成っちゃったみたい。

 さくらとドングリを拾ったり、大きな落ち葉を集めたりと15分程、リーザ帰って来た。肩に下げた布袋が大きく膨らんでいる。

「さくら、残念ながらリスさんはいませんでした。ですがちょっとお仲間を連れて来ましたよ」

 お仲間?

 リーザは布袋を降ろすと、袋の中から獲物を取り出す。

 一匹、二匹、三匹、、、全部で五匹。え、猿も!

 出された獲物は血なま臭く無く、どうやらリーザの術で眠らされているみたい。

 エルフは無駄な殺生はしない、自然の収奪をしない。


 もう驚くしか無いのだが、よくぞこの短時間でこれほどの、、、。

「リーザ、大猟?」

「いえトキヒコさん、この程度で申し訳ございません。私の技量の結果と受け止めて下さい。もっとこの地域の地形的な面、生息している生物の生態系や植物の分布、、、調べました後、改めて出ます。ただ今回は食用ではございませんので、お許し下さい」

 この女、エルフの狩猟の本気モードを出そうとしてるな。

「リーザ、これでOKです、再出発は無しで。それよりさくらにリーザが連れて来た動物を教えてあげて」

「はいトキヒコさん!さくら、こちらに」

 さくらは並べられたリーザの獲物を見て、喜びと興味深々が顔に現れている。

「今この者達は少し眠ってもらっています。この眠る者達は、この森の住人です。ここに住み食べ暮らし生きています。今の私達は、この者達の生活圏に足を踏み入れている事を自覚する必要が有ります。それらを踏まえまして。さくら、先ずは注意すべき事からです。野生に暮らす者に安易に触れてはなりません。彼らは病原体や寄生虫等を持つ機会が多々有ります」

 リーザ、4才児にする講義には難しそうだなぁ。

 さくらはリーザの術により、結界を体にひと膜付けてもらった。

「ではこちら、イタチの雄雌です。ネコ目、イヌ亜目クマ下目のイタチ科イタチ属となります。少し気性の荒さが有り、強い悪臭の分泌液を噴出しますので、生け捕りとなる時には注意を要します」

「こちらはニホンザル。哺乳綱霊長目オナガザル科マカク属に分類される霊長類ですね。成長しますと顔と尻の体毛が減り、部分が赤く見えるのが特徴ですね。食する物は木ノ実、植物、キノコ、昆虫等様々でどちらかと言うと人間に近い雑食ですね」

「次にヤマバト。鳥綱ハト目ハト科キジバト属に分類される鳥でキジバトが正式な名称ですね。もう少し北部が生息地とされてますので、この地区では珍しいのかもしれません。もしくは越冬を見越して、早めの南下を行ったのかも知れませんね」

「そしてタヌキ。哺乳綱食肉目イヌ科タヌキ属に分類されます。極東にのみ生息されていて、この地球上としては珍しい生息地の分布となります。また、体躯、体毛の色等の個体差が大きい事も特徴かも知れません。こちらはまだ成長が十分で無い、子だぬきの部類ですね」

 さくらはリーザの講義を聞いているのか聞いていないのかは、分からない。

 でも並べられた動物達を興味深く撫ぜている。その目が輝いているのが分かる。

 リーザのおかげで大変貴重な講義を体験している。


「ママ、この子たちはいつ起きるの」

「直ぐにでも起こせますよ。ですが彼らは起きた途端に逃げ出すでしょう。いいですか」

「うん!」

 さくらの返事を受け、リーザがブツブツを言った後に、柏手をひとつした。

『パアァァン』

 並べられて動物たちは一斉に意識を取り戻すと右往左往して慌てて散り散りに逃げていった。

「どうぶつさん~バイバーイ」

 手を振るさくらをお構い無しにリーザの獲物達は散って行った。

「リーザありがとう。さくらに良い体験となったよ」

 私も楽しかった。イタチをこんなに真近で見たのは初めてだった。いつも遠目で見て、サッと逃げて行く姿しか見た事無かった。


「日本には四季が有ります。ですので秋以降の11月初旬から半ば辺りで、冬眠を意識し出し脂肪を体内に多く含み出した動物達が狙い目ですね」

 ありゃ、リーザ。食用の狩りをイメージし出した?

「ただし『鳥獣保護区』と『休猟区』などの指定区域か否かの確認を事前に行う事が必要です。自治体独自の狩猟禁止区域等が設定されていましたら勝ち目もございませんし。日本では禁止されております狩猟道具も有ります。矢が指定されている事は痛手です。少し癪ですが従わなくてはなりません」

 リーザ、、、矢の禁止が『癪』って、、、。

「さくらと狩を行う事は、この日本に置きましては難しいかも知れませんね」

 さくらを連れての実戦は、エルフの里国で行いましょう。


「ママ~お腹空いた~」

 さくらが空腹を訴える。

「そうですね、トキヒコさんお昼にしましょう」

 私達は先ほどの森を抜け、小川の河原に出ていた。ある程度の上流なので、河原自体は5m程の幅のスペースで川幅は広い所で3m程。飛び越えるには遠いし、周囲は大きな石や岩が目立つ。

 河原の大きな石の上で持参したお弁当を広げる。

 リーザが朝から作ってくれたお弁当は彩色豊で美味しそう。揚げ物は少な目で煮物も有る。

 おにぎり多い。リーザは日本のお米が大好きだ。

 ペットボトルのお茶も持って来たが、粉末の緑茶をお湯で溶く物、インスタントコーヒーも持って来た。お湯は保温できる水筒を持参している。

 太陽の下での食事は美味しく感じるし、実際美味しい。

「おいしいね~」

 さくらは余り好き嫌いもせずに何でも食べる。母親であるリーザはさくらの食事に関して気を使っている。

 と言っても、必ずも無農薬野菜を選ぶとか、自然食品を使う傾向が有るとかの、私から見て特別な事はしていないと思う。肉や魚、野菜とのバランスや動物系の油や砂糖の量を少なくするといった具合。

 油っこい物、甘い物が好きな私はリーザに咎められてしまう事もしばしばだが、リーザの作る食事は全面的に大変好ましい、全部好き。


 あ、この川の上流の木陰に鹿がいる。

「さくら、鹿がいるぞ」

 私は指差し、さくらに教えたが、さくらが振り返って見た時には、駆け出した鹿が見えたのか否か。

「どこ~シカさんいない」

 見れなかったか。

「直ぐに走って行っちゃったよ。さくらのごはんの邪魔をしたく無かったのかもよ」

「ふぅ~ん」

 さくらは納得していなかった。

「ママ!シカさん捕まえに行こう!」

 あー、さくらダメだ。

「さくら、自然に生きる者はそれぞれの生活が有ります。今いた鹿、ニホンジカですね。哺乳綱偶蹄目シカ科シカ属に分類される偶蹄類であり、65kgぐらいでしょうか、若い雌鹿でしょうね。無暗に生活を脅かしてはいけません。特に狩猟対象が大型のモノ、、、自身と、さくらと比べてですね。危険が伴う事を理解しなければなりません」

 うんうん、リーザ上手くさくらをなだめてよ。

「そういった危険を鑑み心得、、、行きますか!」

「リーザ、ストープッ!ストップ」

 危ないなぁ

「トキヒコさん、どうされました?」

「いやいやリーザ、ダメです。さっき『鳥獣保護区』と『休猟区』とか言ってたでしょ」

「はい、ですが、、、」

 鹿を追ってこの森、山の奥へ向かって行ったら私は追い掛けられないよ。

「今日は狩猟目的では無いから準備もしてないし、そもそも私は狩猟経験が無いので、リーザについて山奥へ行けないと思う」

 肉体的、体力的な面も有る。

「トキヒコさん、大丈夫ですよ。何事も初めから上手くは行きませんし、経験を積む事により上達する物事は多き事でしょう」

 私がリーザをなだめなくっちゃ。

「どちらにせよ、日本国内での狩猟は何かと問題に引っ掛かりそうなので、狩猟を実際に行う時は向こう(エルフの里国)で私とさくらに指導をお願いします」

「はいトキヒコさん、そうします」

 ふぅ〜、リーザは素直で聞き分けが良いで助かる。

「もう少し奥まで進もう。そうしたらまた、鹿さんに会えるかもな」

 お弁当を片付け、ゴミを一切出さず荷物をまとめた。まあ最低限のマナーだな。

 天候はこのまま保つそうだし、陽もまだ高い。

 4才児を連れたピクニックだから、急斜面や険しい岩場などには向かいません。森の散策を続けます。













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