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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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ダークエルフ 揺らす木の者が至った訳

「女王様、ユーカナーサリー!」

私は女王様の肩を掴み、体を揺すった。

「トキヒコ殿、、、か、、、」

正に心ここに在らず。

エルフの里国の王、ユーカナーサリーは、疲れ切った顔をしていた。髪も泥だらけだ。

同族を殺生する場面となった、どれだけの嫌悪感と罪悪感を持ち、王としての立場との間でその心は激しく揺さ振られたのだろう。私などが想像出来る範疇では無い。

ユーカナーサリーはその右手に大剣を握り絞めてはいたが、両腕を垂らし、その表情も立つ姿も力無かった。

リーザが『左に立つ者』レウラーイが『右に立つ者』ピラウロウがユーカナーサリーに駆け寄る。

「王よ!」

ユーカナーサリーは無言のまま、リーザに視線を移す。

ユーカナーサリーを抱き支えようとするリーザを振り払い、背筋を伸ばすと大剣を自身の前に立て支え、ダークエルフだった者に向き合った。

ダークエルフの黒くマダラだった皮膚の色は、もう殆んどが落ちていた。

「起きよ、揺らす木の者よ」

エルフの里国の王、ユーカナーサリーは魔力を言葉に乗せ、目の前で丸く倒れているエルフに問うた。

倒れているダークエルフだった者、揺らす木の者はゴソゴソと体を動かし出した。

「ガハッゴホゥッ、ガハッ、ゴホォッ、ゴホッゴホッ、グェ、ゲボッ、ゲボッ、ゲー」

(あっ、吐いちゃった。でも、生きてる、、、揺らし木の者は生きてる!)

ユーカナーサリーの言葉はこのエルフへと届き、意識を取り戻したようだ。

瞬きを繰り返し、顔や頭を擦る、上半身を起こすとふらふらと立ち上がった。

しかし、目前に王が居る事を認識すると、空かさず両膝を地に着け両の手を体の前で合わす様にし、畏まった。

「我が王よ」

揺すり木の者は意識を取り戻し、本来のエルフの姿に戻ったようだ。

(良かった。本当に良かった)


「お前に問おう」

王としての姿がそこに有る。

「お前は何故、ダークエルフと至ったのだ」

「我が王よ、正確には覚えておりません」

「ただ、私は見てしまったんです」

「何を見た?」


ダークエルフだった者、揺らす木の者の告白が始まる。

「木々に成る実を採取して、獲物を追い北の山岳地帯に赴いた時、深追いをしてしまいました。ここは本来私が余り入らぬ森。そうする内にこの地には、誰もが辿り着けない、行ってはならない城がある事を思い出しました」


「そして、私は自身の興味から北山の城を探しました。大変険しい道のりでした。何がそうさせたのかは分かりませんが、私は捜索を続けました」

「私は、北山の城を探し、そこへ辿り着く事を望み決めました。そして深くなる山へ進む事を迷わず、奥へと進み続けました」

(さくらの通訳越しで、ニュアンスは分かるが、細かくは分からないが)

エルフの『自分で決めて、自分が行う』事が仇になった?


「今思いますれば、あの時、私は身も心も共に疲れ果ててしまっておりました。そして、見たんです!」

見た!って何を?


「特定されない目的地です。本当に存在するのか否か定かでない存在を探し、求め、道中を迷っていたのと同意であったと思われます。道筋も定かでは無かったのです。しかし私はどうやら北山の城前に到着したと思います。私の見た北山の城は、二本の塔を掲げ、暗く寒々しい外壁でした。そして、二本の塔の間を渡る場所とおぼしき空間で私は見たのです!」

ロウかザーララを?

「それは美しいエルフでした。私は狩りを行う者。美意識などは持ち合わしておりませんでしたが、しかしあの時は、身も心も凍るようでした」

ザーララ、、、だな。

「そして気が付くと、私は北山の麓にいました。その時は気力も体も弱っておりましたが、なんとか家に帰り着きました。しかしあの姿が脳裏を離れません。私は体を戻すと、いてもたっても居られなくなり、再び北山に向かい、あの城を目指しました」


「しかし二度と、再びあの城へは見る事はおろか、辿り着く事も叶いませんでした。私は、私は、何とも自身からいずる感情が抑えられなくなり、落ち込みました」


「感情が、何とも理解出来ぬ感情が暴れ出し、私は我を忘れてしまった様です。抑えられない感情は凄まじいモノでした。抑制が効きません」


「そこから今までの記憶が定かでは有りません。ただ、私は輝く光と黒き何かに支配されました。その感情の記憶だけが残されております」


ダークエルフの出現はうぶなエルフの恋患こいわずらいであった。

えぇ?

そしてその恋恋慕こいれんぼの相手はザーララ、、、。

はあぁ?


空間が歪み青きイナズマが暴れ出す。

周囲の空気が沸騰する。

ザーララは音も無く再び現れると、ダークエルフであった者、揺らす木の者の後頭部へ指を一本、右の人差し指を向けた。

そして、『トンっ!』と指先で揺らす木の者の後頭部をひと突きした。

揺らす木の者は、その場で糸の切れた操り人形のようにガクッと崩れ落ちた。

倒れたエルフをザーララが見下ろしている。

「この者の記憶は消した。それと二度とわたしの城を探せないまじないを掛けた」

ザ、ザーララ、いきなり現れた!

周囲の空間は、先程現れた時と変わらずにザーララを中心として歪み、周囲に嵐を吹き回す。

でも、さっきより少し抑えている?

「ユーカナーサリーよ、わたしの美しき魅力が罪な故、ダークエルフが生まれたと成るのか。お前も身に付けるが良い」

オホホホ、と勝ち誇った視線をユーカナーサリーに向けた。

だが、その視線に怒りを乗せるとトキヒコを見、ズカズカと歩み寄り、トキヒコの胸ぐらを掴んだ。

「どうしてお前には私の魅力が届かん!」

エルフの言葉なので何を言ったのか、どうしてザーララが怒っているのか分からない。

私、何かやらかした?

「リーザ、さくら~何で私、怒られてるのー!」

あ~。

雨は止んでいた。





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