ダークエルフ エルフの王の責務
『北の山の悪いエルフ』エルフ王家の長子、邪竜の血を受け継いだ者。美しきエルフ、、、ザーララ。
ザーララが山岳城から出てきた!
あ、城から出れたんだ。でも、、、
ザーララ。彼女がそこに立つだけで、周囲の景色が一変してしまう。空気が激しく沸騰しているようだ。
大戦士であるレウラーイとピラウロウが石になってしまったように動け無い。ザーララの影響か!それともザーララが抑え込んでいるのか!?
ザーララがユーカナーサリーの結界に歩み寄り、そのまま歩を進める。
雨によって半球状態に浮き上がって見えていた、ユーカナーサリーの結界など何も無いように歩み続け、ザーララが触れた途端、音すらし無かったが、パリンッと飛び散った。
ザーララは落ちている大剣に手を伸ばそうと、屈み込んだダークエルフを後ろから蹴り飛ばした。
ザーララに蹴られたダークエルフは文字通り吹っ飛んだ。
ザーララはそのままユーカナーサリーに歩み寄る。
エルフの里国の王、女王ユーカナーサリーはブルブルと震え、両腕を体に回し、まるで自分で自分を支えているようだ。
「ユーカナーサリー」
「あ、姉様、、、」
ザーララはいきなり右腕を伸ばすと、ユーカナーサリーの胸ぐらを掴み軽々と持ち上げた。
ユーカナーサリーの両足は地面から離れ、宙に浮いている。
「あ、姉様」
ユーカナーサリーは涙を流しているようで、その顔はぐちゃぐちゃだ。
「我は、、、我は王など、、、王など嫌じゃ、、、」
ユーカナーサリーは弱々しく、何かをつぶやいたようだ。
「あっ!」
ユーカナーサリーは地面に叩き付けられる様に投げ飛ばされた!
「ギャっ!」
地面に投げ飛ばされたユーカナーサリーはバウンドして雨に濡れる地面に這いつくばった。
「立て!」
ザーララがユーカナーサリーを叱り付ける様に荒げた声で叫んだ。
(あー、エルフの言葉なので、私は判りません)
ユーカナーサリーはよろよろと立ち上がると、再びザーララに胸ぐらを掴まれ、引き上げられた。
「お前はこの里国の王ぞ。他に誰がいる!」
ザーララはまたも、ユーカナーサリーを投げ飛ばした。
「あうっ!」
投げ飛ばされたユーカナーサリーは泥の地面を滑って行った。
「立て!」
ザーララは叫んだ。
ユーカナーサリーはふらふらと再び立ち上がった。
そして三度、ザーララに胸ぐらを掴まれ引き上げられた。
「お前がこの里国の王だ。だからこいつがお前に向かって来た。ユーカナーサリー、お前も分かっていたろう!」
「ううぅぅ、、、」
「こいつはエルフとしての理性が飛んだ。もしやするとそれが悟りとなり、高みに行き着いたのやも知れん。こいつは自身の決着をお前に求めた。お前はそれを分かっていたはずだ」
「ううぅぅ、、、」
ユーカナーサリーはもがくでも無く、ザーララに掴み上げられたままだ。
「お前だ、お前がやるんだ。王としての責務を果たせ!」
ユーカナーサリーはその場にドサリと落とされた。
そしてふらふらとと立ち上がる。
「我は、我はエルフの里国の王ぞ、、、」
「エルフの王の責務とは、、、我が民達を救い導く事、民達の抱えた問題を解決する事成り!」
弱々しい声と共に顔を上げ、背を伸ばす。
そして落とした大剣を拾い上げた。
ザーララに蹴り飛ばされたダークエルフも立ち上がった。
そしてユラリとユーカナーサリーに振り返った。
ザーララさんが来たけど、結局、あの大剣を使うのか、、、ザーララさんの登場は何か別の解決策があるのかと期待してしまったんだが、、、。
「ユーカナーサリー、ダークエルフの首を切り落とすのか、揺らす木の者は救え無いのか、、、」
私は無力だ、、、正視出来ない。そして凄い敗北感に襲われている。
当然さくらも見るべきでは無い。
「さくら、見るな」
でも、、、エルフの初代王ファウスは、ダークエルフの首を落とした後、その姿を消した。ユーカナーサリーも同じ道を進むのでは無いのだろうか、、、どこかへ。
ユーカナーサリーも消えてしまう?
ダメだ、そんなのはダメだ!
ユーカナーサリーとダークエルフの距離が縮まって行く。
ダメだ!ユーカナーサリーにダークエルフといえどもエルフを殺させる事はダメだ!
逃げろ、揺らす木の者!
やはり今、この場でオレが何か出来る事は無いのか、、、たとえ女王ユーカナーサリーが振り下ろす剣を止めたとしても、何の解決にもならない、、、。
ん?ボケットの中に何か?
あっ!何か汚ったねー
ポケットの中から出て来たのは、萎れて乾燥したペラペラの茶色くなった、何か。
今、緊迫の場面なのに、オレってなぁ~
?!コレ、ガガーザンの実だ。何で?
昔、黒きトゥクルトッドドゥー、ブラック・ボスに貰ったガガーザンの実だ!でもポケットから出し忘れて、何十年経ってるの〜?
リーザのお母さんから頂いた三着の上着の内、最近は青色と黄色のばっか着ていたからなぁ、、、シミになっちゃってる?
希少なガガーザン、その種は幸運の種、、、!
私は茶色く萎びてペラペラとなった物の真ん中の膨らみ部分を裂き、ガガーザンの種を取り出した。
奥歯で慎重にカリッと噛み割り、口から出すと右手に包んで駆け出した。
「ぐぐぐ、、、グァぁぁ」
少し舐めちゃった。
「ユーカナーサリー!ダメだ!」
トキヒコはダークエルフに飛び掛かると、その口に奥歯で割ったガガーザンの種をねじ込んだ!
「こいつを喰え!そして思い出せ!揺らす木の者!」
トキヒコは力ずくでダークエルフの口を閉じた。
しかし一瞬でダークエルフに投げ飛ばされてしまった、
「うわぁーあーぁー」
投げ飛ばされたトキヒコをロウがしっかりと抱き止めた。
リーザとさくらも直ぐ側で手を広げていた。
「ロウ、ありがとう。リーザとさくらも。さくら、やっぱ速いな」
ダークエルフは、、、揺らす木の者はどうだ、ガガーザンの種を食ったのか?
ダークエルフの方へ目をやると、ダークエルフは自分の両手を口の中に突っ込み、もがいている。
そして膝から地面に崩れるように屈むと、土を集め口に入れだした。
「ガガーザンの種を食ったな」
だけど果たして、ガガーザンの種でダークエルフは、揺らす木の者は理性を取り戻せるのか?いや思い出せ!幸運の種の力を示せ!
ダークエルフは地面に這いつくばり、雨で湿った土や泥でガガーザンの種の味を洗うように口の中に入れ、もがき苦しんでいる。
もがいていたダークエルフの動きが止まった。
あの強烈な苦味、酸っぱさ、辛さ、、、リーザはエルフが食べると死んじゃう事がある刺激って言ってたっけ、、、死んじゃった?あれ?オレがエルフ殺し?
ダークエルフはまるまる様に泥の上に体を横たえた。
「ユーカナーサリー!」
私はエルフの女王に駆け寄った。
ザーララの姿は消えていた。
「あっ!」
ダークエルフの色が、黒いマダラの体の色が薄れて行く。
駆け寄った先に立つユーカナーサリーは泥だらけで、顔はクチャクチャだ。結界の外に出たので強くなりだした雨に濡れビショビショになり、その顔は涙なのか雨なのか区別がつかなく濡れていた。




