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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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憂鬱なトキヒコとダークエルフ

「ねえ、ロウ」

「はい、トキヒコ殿」

トキヒコはザーララの居城内に与えられたロウの部屋に居た。

ロウのベットにゴロンと横になり、窓の外の景色を見るとも無しに眺めていた。

部屋の窓からの景色は良く、遠くに霞んで淡いピンク色の壁に見えるモノは国境沿いの結界だそうだ。


「もしもさ、もしも」

トキヒコは何か落ち込んだ空気を漂わしていた。

「あの時、あのままロウが人間界で神と成る存在になったとして、想い描いた世界、人間の新たな世界ってどんなのだったの?」

「トキヒコ殿、何か有りましたかな?」

「いや、、、うん」

テレビのニュースを観たり新聞を読む都度、毎日毎日、国家間の争いやテロ行為による犠牲者が出た、無差別殺人や通り魔的な事件、無責任な行為と思われる事件等で世界は怒り、悲しみ、憎しみ、もろもろが溢れ返っている。多過ぎる。

私は決して善人では無い。だけど今の世の中って何か酷く無いか?うんざりだ。

「そうですね、戦争の無い、争いの無い社会です」

ロウは一度、人間同士の戦争に巻き込まれた。その時にかけがえの無い存在を失った。

「ごめんロウ。嫌な事を思い出させちゃったな。無神経だった、すまない」

ロウは別段悪い顔をしなかった。それはエルフが感情表現や表情を表す事が少ない為なのか、私に気を使ってくれたのか分からない。


「あー、、、ロウがあのまま神となった方が人間社会にとっては良かったのかもなぁ」

まあ現実問題としては、多くの犠牲の上での話しだったけど。

「ねえ、エルフ達って争わないの?」

エルフ達は平和に暮らしていると感じるし、数度こちらに訪問させて頂いているが、そう思う。

『戦士』に見える出で立ちの者も見たが、決してどこかと争う為の準備をしているように見えなかったし、何処かが攻め込んで来た、攻め込んで行くような戦争事が過去にあったとも聞いていない。私が知らないだけかも知れないが。

「いえトキヒコ殿、我らも当然争いますし、戦います。ただ、、、」

ロウは一呼吸置いた。


「トキヒコ殿、オオカミ知ってますよね?」

「ああ、知ってるよ。オレが一番好きな獣だ」

残念ながら、ニホンオオカミは絶滅しちゃったが。

「オオカミ同士が闘いとなったら、どうなると思います?縄張争い、雌をめぐる闘い」

「猛獣だからな、どちらかが倒れるまで、死ぬまで殺り合うんじゃない?」

「確かに獣同士の闘いです。あの牙で、その爪で傷付け合います」

血を流し合う、激しい闘いになるんだろうなぁ。

「しかし、どちらかが死ぬまではやり合いません」

へえ

「そうは言っても勝ち負けは着きますが」

まあ、決着は何らかの形で、、、最悪、死でもって、、、着くだろう。

「どちらかが動けなくなるとか?」

殺し合いに近い闘いだったら、当然どちらかが倒れ、敗れ、死んでしまうのではないかな。

「まあ、そんな状態になる事も有るでしょう」

ロウは続けた。

「負けた方のオオカミは、自分の急所であり弱点でもある首を相手に曝します。さあ、噛めよとばかりに」

敗者は自ら死を選ぶのか。

「勝者は今まで争った相手が曝して来た急所に決着をつける為にも噛み付きに行きます。でも、噛みません。噛めないんです。」

え?

「大きく口を開き、急所の首に迫り噛み付き、食い破りに行くんですが、、、行けないのです、噛めないんです。噛みに行きアゴを広げ口を開いたまま、、、その状態で動けず、唸り声をあげながらも二匹共に動かない状態がしばらく続きます。そしていつしか二匹は離れて行きます。それがオオカミ達の決着です。自慢ではないのですが、我らエルフも似たような感じですね」

手加減無しに闘った相手を殺すまで、死に至らしめるまでは傷付けない。

「人間はどこかで野生を手放した時に、それと一緒に失くしてしまった行為なのかもですね」

野生を失った、、、どれぐらい前のご先祖様なんだろう?人類が他の種族と一線を画して“人間”となった時なのかな。

「しかしそれと引き換えに多くの事が得れたのかも知れません。知性と知識、文明、社会組織、科学技術、、、野生と現代、人間にとってどちらが良かったのかは誰にも分かりませんし、比べる事でも無いのかも知れません」

「人間、、、そろそろオレは辞める時かなぁ」


再びゴロンと窓側に寝返ったら

「よう、トキヒコ」

すぐ真横にザーララが肩肘を着いて寝転がっていた。

いつの間に?!

慌てて体を離そうと動き出したが、腕を掴まれ、体は彼女の長い足でがっちりとロックするように抱えられ掛けられた。なんつーう力強さ!

「どうしたトキヒコ、何か悩みか。人間を辞めるのか」

体を逃れるのは、、、観念した。

ザーララはいつものような丈の長い上着を羽織っておらず、上下セパレートの活動的な衣装を身に纏っている。そのおかげで、ギリギリ下着を連想させるモノは見ずに済んだ。

いつもあの格好だと、エロ感覚が麻痺しちゃうよ。

「あー、単なるグチですよ愚痴」

若い頃は社会情勢にもっと客観的で言い替えれば冷淡だったのになぁ~やっぱ歳かな?

「最近は人が殺されたり、傷つけられたりするニュースばかりで、、、いつからこんな世の中になっちゃったんだろうと」

まだ直接自分自身やリーザとさくら、家族に降り掛かってはいないが、何時、事件や事故の当事者になってしまうかの不安を抱えてなくてはならない社会って、何なの?

「トキヒコ、そんなの昔からだよ。トキヒコが生まれる前の方が、もっと酷かったよ。自分の国の中でさえ、歴史を習い学んだだろう。戦国時代以前からの権力闘争、百姓一揆、近い時代だと世界大戦。人間が人間誰かに殺されない、安全な時は一刻も無かっただろう」

ザーララさん、人間社会、それも日本の歴史を良く知っているなぁ。

「私も知識を積み重ねる事は好きだわ。それが別世界の事であっても、知る機会が有れば有効に利用する」

私は(学校、学生時代の)勉強キライ。でもザーララさんが別世界の事を知る機会って、、、まあ私なんかでは計り知れない存在だからなぁ。


「トキヒコ、人間を辞めてどうする?」

「私はエルフには成れませんし、以前ユーカナーサリーに言われました。どうしましょうね」

何か投げやりな気分だ。

「何故エルフになれなければならない。人間として、トキヒコとしてここ、エルフの里国に来なさい。わたしはトキヒコがココに住まう事を許しているわ。やはり部屋を準備しましょうか、欲しい物は有る?何でも揃えるわ」

「そんな悪魔の囁き、止めて下さいよ」

もう、そんな優遇を聞かされちゃうと、直ぐにでもなびいちゃいそうな自分が怖い。

「わたしは悪魔より強いかもよ?」

そう言ってザーララさん微笑むけど、マジで言ってるのかふざけているのか分からん。

「ザーララさん、どうしてエルフ達は殺し合うような争い事をしないんですか?」

人間は地球環境での弱肉強食のピラミッドの頂点にいる。なのにピラミッドの頂点内で、もうひとつピラミッドを作って争っている。

個人間、組織間、国家間、地域間で。それは経済的だったり、思想や宗教的が主な原因だったり様々だが、エルフの世界を知ると、どれも人間のエゴに起因している様に思えてしまう。

「エルフはね、人間に比べると個人志向が強いわ。でもね、それは集団を守り集団で生きる方向に使われる。お前の社会で“自分事化”などと言い使われている語句に近いな。

里同士、州同士での大きな争いも発生するけど、そこで憎しみや恨みは産み出されないわ。

感情を抑えられた者達の子孫である事の利点かしらね」

『感情』だけなのだろうか。確かに人間の感情は言葉で表現仕切れない程多種多様で人種や国、地域や宗教やそれこそ個人の数だけ有ると言っても過言では無いだろう。

血を分けた兄弟であっても、それぞれが持つ感情は違う。置かれた立場や状況でも変わるモノだと思う。

『感情』言い替えれば人間の場合は思考や思想とも言えるかな。

それに戦争となると人は理性を失うと。人殺しや相手を蹂躙する事が当たり前になり、むしろ誉れとなるって。戦争に駆り出された戦士達は悩む『オレは勇者なのか、ただの人殺しなのか』と。

「エルフの間で争いがあったって、でも殺し合いにはならなかったんでしょ?」

殺した人間の数を競い合う戦国時代の戦や敵の撃墜数で評価される戦争とは違うんだろうな。

「人間は特殊だな。地球上で行われている食物連鎖の頂点にいると自分達は思っている。それと頂点に立つ者ならば、弱き存在を蹂躙し好き勝手に食って良いとも思っている」

あ、弱肉強食のピラミッドだ。

「そのくせ食物連鎖の頂点にいるとしながら、同族を殺す。地球上で同族殺しをするのは人間だけだぞ」

えっ?まさか、そんな事、、、

カマキリの雌が産卵後に雄を食べる『共食い』は有名だ。産卵中にその卵を食べて(これも共食いかな)栄養(精力)を付ける魚も居るが『共食い』はそういった特殊で何か決まったメカニズムの中で発生する。何か決まり事のような状況だと思う。でも共食いは同族殺しとは違う。

同族を殺す種族、、、確かに人間だけかも知れない。

人間が人間を殺しても『共食い』は起こらない。

食べる為に相手の命を奪うのは、地球上で生命を維持する為の行いだが、人間は人間を食べ無い。


紀元前から人間同士、種族間や国家間での争い(戦争、殺し合い)は歴史書が記している。

現在の日本国内で起こった殺人事件の半数は身内による物らしいし。

人間が人間を殺す理由は感情やそれこそ思考、思想を持つからでは無いのか。理性はそれを制御するモノだろう。

でも、理性を持っているのに、、、人殺しは行われている。

『同族を殺すのは人間だけ』、、、言葉が出ないぐらいのショックを受けたが、考えれば考えるほど反論の余地が無い事も分かった。

「でもどうしてザーララさんは、別の世界の事を知る事が出来るんです?それとユーカナーサリーも。何かズルい」

「なんだよ、トキヒコも魔力なり高位の術を使えよ」

「いや、出来ませんよ!単なる人間ですもん」

出来てたら、人間辞めてますよ。

「よし、教えてやる」

え?

「トキヒコ、目を瞑れ」

「はい」

トキヒコは目を瞑った。

「よし、先ずは想い浮かべろ」

「はい、ですが何を?」

「そうだな、では手始めに、う~ん、何が知りたい?」

そこからか。

「そうですね~ザーララさんの幼少期の姿を見て見たいです」

悪戯心が沸いて出た。ちょっと、困らせちゃえ。

「よし、手の平を広げ両手を真っ直ぐに突き出せ!」

「はい!」

「そして、掴め!」

「はい!」

ぼょ~ん

私はザーララのオッパイをしっかりと揉んだ。

「どうだトキヒコ、見えたか!」

騙された。悪戯をしたのはザーララの方だった。

「もう、ロウ!横で見てて分かったのなら止めてよ!」

「いえトキヒコ殿。我が姉とは言え、ザーララは私では測り知れぬ存在。私の想像も予測も敵わぬ存在故」

何だよ、想像も予測も敵わぬ存在故って!まあ、そうなんだけど。

「まあトキヒコむくれるな。エルフによるエルフ殺しは、実は有った」

「!?」

エルフ殺し。

「トキヒコ、エルフの永きに渡る歴史の中でもエルフ殺しは2回あった。一部古参の老エルフは覚えているかしら?ロウもユーカナーサリーも知らぬ事でしょう」

2回!たったの2回。いやいや、日常的に殺人事件が報道されている私達の世界が異常なだけか。でもさっきのロウの話しからすると、エルフはエルフを殺さないって、、、。

「教えあげようか、エルフ殺し、ダークエルフの事を」

、、、ダーク・エルフ。



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