女王ユーカナーサリーのお仕事 カルタ対決
ユーカナーサリーとの帰り道、家には自転車が有り、どうやらリーザとさくらの方が先に帰宅していた。
「ただいまぁ〜」
「お帰りなさ〜い」
ユーカナーサリーと二人揃って玄関に入ると、さくらが出迎えてくれた。
「女王様、可愛い服です。どうされたんですか?似合ってます!」
あ、ユーカナーサリー術、解除してなかった。
「さくらよ、お菓子を買って来たぞ。一緒に食べようぞ」
「わー女王様ありがとう」
リーザも顔を出して来た。
「ユーカナーサリー、そのお召し物、、、外出されていたのですね。何事もございませんでしたか?」
ユーカナーサリー、術を解いた。
「うん、アイスが無かったんで、コンビニまで買いに行ってた」
「ああ、アイスでしたか。昨日さくらと二人で食べましたので、先程買って来ましたよ」
アイス切れの原因は、リーザとさくらだったのか。でもそれならユーカナーサリーは文句を言い難いだろうな。
「さくら、お菓子じゃ」
「わーい、でもどうしたんですか?」
「うむ、トキヒコ殿にゲームで勝ったからの。その勝利者賞じゃ」
「えー、お父さんにゲームで勝つとお菓子買って貰えるの!」
「ちょっとユーカナーサリー、さくらをケシ掛け無いで下さい」
破産しちゃうよ。
「まあ今回は特別じゃな。そうしとこうぞ」
そう、特別、特例です。
「しかしなぁコンビニ成る小売店、侮れんぞ。あの取り扱う商品の種類、量、並べ具合、脅威だったわい」
なんか驚きを秘めた感動をされていたからなぁ
「この様な環境下で生きるお主達を少し見直したぞ」
本当にこの世界、この世の中は誘惑だらけですから。
ユーカナーサリーが買った、もう一つのアイスは冷凍室に入れ、リビングに入るとテーブルに買って来たお菓子を広げた。
「エルフは皆で分け合う。トキヒコ殿はエルフでは無いがの」
ユーカナーサリーはニヤリとした。
あ、女王様ちょっと意地悪言った。何かますます人間ぽくなって来てる気がするけど、大丈夫かなぁ
リーザは「お茶を入れましょう」とキッチンに向かった。
リーザとユーカナーサリーは紅茶を好んだ。私はインスタントコーヒーでさくらは牛乳だ。
「あっそうそう、さくら、雑誌出しっ放しだぞ」
「はぁ〜い」
なんかゴソゴソと無理矢理テレビ台に雑誌を押し込み出した。
「あれ、お父さん懐かしいの出て来た」
さくらが、テレビ台からカルタを引っ張り出して来た。懐かしい。
「あ〜そのカルタはリーザが言葉を覚えるのにいいかなぁと思って買ったけど、1回やったら読みまで全部覚えちゃって。さくらの方が良く使ったよ」
「うん、冬休みとかお正月にやった。でも絵柄は覚えていても読みの中身は覚えてないよ」
さくらも懐かしんでいる。
「うむ、カルタとな、我も知っとるぞ。だがの、やる、プレイした事は無いのう」
「カルタをプレイ、してみますか?」
あ、待てよ。
「リーザ」
台所でお茶の仕度をしてくれているリーザを呼んだ。
「どうされました、トキヒコさん」
リーザがリビングにやって来た。
「うん、お茶の準備してくれてたのにごめんね。リーザ、久し振りにカルタをやらない?」
「ああ、少し懐かしいですね。さくらと良くやりました」
時間の流れが我々人間と違うエルフであっても、今よりもっと幼かったさくらを思い出したかな。
「トキヒコさん、皆でやりましょうか」
リーザとユーカナーサリーと一緒にやるとなると何も出来なく、ただ座ってるだけで終わっちゃうだろうし、動作のとばっちりが来るかも知れない中に飛び込んでまでカルタをやる覚悟は無い。
「いや、実は女王様とリーザのカルタ対決が見たい」
「対決、、、ですか」
「うん。頭脳も反射速度も早い二人の対決が見たい」
カルタでの対決とは言え、凄く壮絶でカッコいいのが見れると思う。
「リーザ、一丁やるかの」
ユーカナーサリーありがとうございます、乗って下さるのか。
「はい。しかし我が王が相手とは故、手加減は出来ませんよ。対決ですからね」
「何を申す。我が王たる所以の力を見せようぞ」
マンガだったら、二人の間で対峙した火花が散ってそうだ。
適度に並べたカルタを挟み、二人のエルフが対峙した。
読み手は私で、さくらには審判を頼んだ。
「ハウスルールになりますが、お手付きは1回休みです。ですから慎重に行って下さい。良いですね」
リーザとユーカナーサリー、コクリと頷く。
「では始めましょう。犬が西向けば~」
「はい!」
やっぱ早いなぁ
先手はリーザが取った。ユーカナーサリーはピクリとしない、、、なんか不気味だ。
「次行きますね。スズメの」
「おう、我じゃ」
これ、多分最後まで読む事なさそうだ。
「夏」
「はい!」
「か」
「おう!」
「や」
「はっ!」
やっぱ1文字目で読みは終わる。二人共、絵札の位置は覚えちゃってるだろうしな。
そんなこんなで、半分くらい経過した時
「セミの鳴く〜」
あれ?動きが無い。リーザが手を伸ばした状態で止まった。
「おう、我じゃ」
ユーカナーサリーがゆっくりと(それでも凡人に比べたら高速で)絵札を取った。
そして、ニヤリと笑ったように見える。
「えー、次行きますね。タヌキのお腹は〜」
ん?二人の動きが少し遅い。ユーカナーサリーが困惑しているように見える。
「はい」
リーザが余裕を持って絵札を取った。
この二人、何かやってるな。
「ストーップ、ストップ。二人共、何かやってますね?」
ユーカナーサリーが答える。
「我は絵札をすり替えてやった」
得意顔だ。
「私は、手にした絵札を場に混ぜ込みました」
リーザも答える。
嘘が付けない(付きにくい)エルフは、こう言った時に素直に答えてくれるのはいいんだが、問題有りだ。
「トキヒコ殿、ルール違反は侵してないぞ」
まあ、ハウスルール的には違反では無いが、倫理的にダメです。
「二人共、ダメです。『術』の使用も認めません」
リーザとユーカナーサリー、少し残念そうな顔をして、笑わせられた。
「二人一度目を瞑って下さい。では審判長、絵札をシャッフル、位置をかき混ぜて下さい」
さくらが絵札の位置を変える。
「では、私が読み出したら目を開けて再開です」
これで少しはカルタっぽくなるかな。
「ウグイス〜」
「はい」「おう」
あー、先程のシャッフル、余り意味無かったみたい。でも今回はほぼ同時に思うが。
「審判長、お願いします」
さくらにうながした。
「う〜ん、ママ」
さくらはリーザに手を向けた。
ユーカナーサリー、悔しそうだ。
「では続けましょう。タコ」
「おう!」
「ハッ!」
もう、1文字目での取り合いに戻っちゃった。
そして残すところも後3枚。大体二人の取り札数は同じぐらいだ。
「ちょっとルールの追加変更です。次の1枚を取った方が残りの3枚分を取れる事とします。お二人共、大体同じ数の取り札ですから、これを取った方が勝ちですかね?」
「ですね」
「うむ、どうやらそのようじゃ」
対峙する二人が改めて気合いを入れたようだ。何か変な熱が伝わって来る。
「では審判長、最終決戦です。ジャッジの方を引き続きお願いします」
さくらも審判長の役を与えた事で、最後まで付き合ってくれた。
「では、最終決戦です」
「ネ」「はい!」
「、、、コに小判」
リーザが私が読み札を読むと同時かそれとも早くに絵札を取った。
「審判長?」
「セーフ」
リーザが勝った。
「何故じゃ。リーザよ、何故読み札が分かったのじゃ」
ユーカナーサリー、負けた悔しさより、リーザの行動、読み札より僅かに先に動いた事に困惑しているようだ。
「それは、、、ユーカナーサリー、勘です」
エルフが判断するより先に勘を働かした?!
「勘じゃと!?」
「はい」
「リーザよ、『勘』と申すか」
「はい」
エルフであるリーザが勘を頼りに行動した事に私も驚いているが、ユーカナーサリーはそれ以上のようだ。
「トキヒコさんは『一発勝負』とか『出たとこ勝負』『成るように成る』などの思考を使う時がまま有ります。聞く私はハラハラとさせられる事も有りますが、今回はそれを真似て従ってみました」
いや私、そんなに危なっかしい判断ばかり?
「う〜む、何かのぉそれを聞かされるとリーザに負けたと言うより、人間的な思考に敗れた思いじゃ。納得は行かんが、次なる対決の機会があらば、検討する事項となるな」
いやいやユーカナーサリー、女王様、深く考え過ぎですよ。
そんな幕切れとなった、エルフによるカルタ対決であった。
「審判長、ご苦労さまでした」
お行儀良くカルタの審判をしてくれたさくらを労った。
「ところでさくら、途中の反則気味だった二人の行為、気付いた?」
まあ、エルフ同士でもお互いが気付かぬ反則スレスレの技。
「うん、気付いたよ」
え?
「でもルールはお手付き1回休みだったから、二人共お手付きのルール違反してなかったもん」
「さくら見えてたの?」
「ううん、見えては無かったよ。でもママと女王様がやったのは分かったよ」
何で?エルフ同士でも気付か無かったのに。
強力な魔力を持つエルフの王やハイエルフとも呼ばれるリーザより、さくらが上なの!?




