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ハーフエルフの父  作者: タマツ 左衛門


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新婚旅行 リーザ海に行く 海水浴場

先程の海の家で浮き輪をひとつ借りて来た。

「リーザ、ごめんね。リーザが泳げるかどうか聞いて無かったよ」

リーザを浮き輪に乗せ、少し砂浜から、私の胸ぐらいの深さまでの沖へ出た。

「私もつい嬉しさで術を出すのを忘れました」

術!?

「リーザ、術で泳げるの?」

「泳ぐと言うよりは、水から身を守る為に体の周りに膜を作り水面に浮いたり、潜水を行います」

結局の所、どうやら泳げないようだ。

「術を使わなかったら?」

「ダメですね。先程のままです。失態でした」

「別に失態なんかじゃないよ。それに『海水は塩辛い、しょっぱい』が実体験出来たじゃん」

「意地悪ですわ、トキヒコさん」

リーザは少しムクれた。

「海に本気で泳ぎに行くのでは無いと言いつつ、いきなり飛び込んじゃったからなぁ〜。それは私の失態」

私はどちらかと言うと、泳ぎは得意な方。決して競泳選手みたいな泳ぎ、タイムは出せないが、海でも川でもプールでも泳ぐ事は苦にならない。好きな方だな。

「リーザ、泳ごうか?術無しで」

「術を使わずにですか?」

「うん、泳ぎ方を教えるよ」

「はい、お願いします」

二人共、足が届く深さだったので、浮き輪に座るリーザを海面に降ろした。

バシャンと水飛沫は立ったが、胸の下辺りの高さの海面に二人して立った。

「リーザ、先ずは私を全面的に信頼して下さい」

「はい。何時もそうしてます」

「ありがとう。でも水は危険だからね、私に身を信頼して預けるつもりでいてね」

「はい」

私はリーザの後ろに周った。

「リーザ、ゆっくりと体を倒して下さい。後ろ向きに。少し顔に水が掛かるかも知れないけど我慢して。手足を大の字に伸ばして、背を伸ばして海面に寝るような感じで」

体を後ろに倒すリーザの頭と首を支え、海面で仰向けの体勢になるように促した。

「おわわ、、、」

リーザは海面に寝る体勢が取れた。

「顔に水が掛かるけど、そのままグッと顎を上げて頭を海の中に入れる感じで伸ばして」

私はリーザの首元から手を離した。

「トキヒコさん!私浮いてます!泳げてます!?」

少しジタバタしながらもプカプカと海面を漂うリーザの肩に手を当てた。

「先ずは第一歩、合格」

リーザは嬉しそうに顔を横に向けて来た。エメラルドグリーンの瞳が輝く。

リーザを再び海に立たせ、私は足元を蹴り、リーザが今取った状態を再現して見せた。

「リーザはこんな風に海に浮いていたんだよ」

「はい、太陽が眩しかったですが、体が軽くなり不思議な気持ちになりました」

ではもう一つ、次の段階だな。

「リーザ、ちょっと見ててね。次の段階に行きましょう」

「はい」

私は先程の背泳ぎ状態を取ったまま、180度くるっと顔を水面に付ける格好を取った。そのままバタ足で少し進んだ。

「リーザ、出来るかな。息を止めて、あっ、目だけ術で海水から守る事は出来るかな?海の中で目を開けると、目が凄く痛くなっちゃうから」

「はい」

どうやらリーザは顔の周囲を水から守る術を掛けたようだ。

「トキヒコさん、見てて下さいよ!」

私は背泳ぎ状態で海に浮かぶリーザの側に立ち見守った。

リーザは私に言われた通り、クルッと180度回転すると、そのままバタ足を行った。

行ったが、そのバタ足、尋常じゃない速度なんだが!

リーザのバタ足が止まり、顔を上げたがトキヒコがいない。

「トキヒコさん?」

リーザはあっという間にバタ足で海岸と並行方向に30m程泳いでしまった。

「リーザー!」

手を振るトキヒコはすぐに見つかったが、いつの間にかやや離れてしまっていた。

「リーザ、びっくりだよ!直ぐに泳げるようになっちゃた」

「はい、上手く行きましたね」

その後、リーザと二人で青空を見ながら手を繋いでプカプカと海面を漂ったりした。


「リーザ、お腹減った?」

「はい、沢山泳いだので、お腹ペコペコです」

こう言った時のリーザの食欲は恐ろしいモノが有る。

海を上がって体を軽く拭いて、リーザには着て来た薄手のパーカーを着てもらった。

気温は高かったが、やはりこの海岸にいる他の男共からリーザの肉体に注がれる視線が嫌に思った。まあ自意識過剰なんですが、熱いが許せリーザ。

ビーチパラソルを借りた海の家に向かうと、さっきのアルバイト男子がいた。

店内はお昼のピーク時間は過ぎたようだが、疲れたおっさんが多くいた。

この海岸まで家族を乗せて運転して来た者、強い日差しに照らされて少し参っちゃった者、単に泳いで疲れた者、、、平和な風景だ。

でも席は無事に確保出来、アルバイト男子が注文を取りに来た。

「何か食べる物できる」

「はい、あちらのメニューの物ならなんでも」

メニューが掲げられている方を見ると別のアルバイト男子が焼きそばを作っていた。

「リーザ、メニューを見に行こう」

「はい」

リーザはすでに焼きそばが作られてる匂いにフラフラと釣られている。

「焼きそば、タコヤキ、お好み焼き、、、粉物ばかりだけど、海の家って感じがしていいね」

リーザはメニューの文字情報からはイマイチ想像が付かないかも。

「すみません、メニューの右から、、、焼きそば、タコヤキ、お好み焼き、イカ焼きを二つづつ、フレンチドックも二つ、オレンジジュースとコーラを下さい」

リーザ、足りるかなぁ

フレンチドックとジュースを持って席に戻った。他の物は出来次第持って来てくれる。

「リーザ、カラシはどう?少し付ける?」

フレンチドッグを乗せたプラスチックトレーに絞り出したカラシをリーザに勧めてみた。

「匂いが辛そうですね、では少し、、、」

いや、ちょっと多かったんじゃない?

「カラーい!」

リーザの反応に他のお客さんが反応しちゃってる。

「リーザ、リーザ、水を」

やっぱ少し多かったか。

「トキヒコさん、辛いです。でも美味しいです」

食事をするリーザの顔はその顔を見た者を幸せにする。

「ではリーザ、コレは?」

リーザにコーラを渡した。

「なんですか?この飲み物は?」

「まあまあ、一口どーぞ」

リーザはコーラをゴクっと飲んで、すかさず舌を出した。

「わわぁ、何ですかコレは!甘くてシュワシュワして、喉が痺れました!」

「これはね、炭酸飲料と言ってね、そうシュワシュワする飲み物」

リーザは目を丸くしながら、コーラの入ったコップをまじまじと見ている。

「嫌いでは無いですが、ちょっと苦手かも知れません」

リーザに改めて水と合わせてオレンジジュースを渡した。

そうしてる間に焼きそばが届いた。

「コレは?いい匂いがします」

「焼きそば。音を立てて食べちゃっていいよ」

リーザは一口パックとすると、音は控えめにスルスルっと口の中に運んだ。

もぐもぐもぐ。

リーザの顔がパッと輝く。

「美味しいですー!」

リーザのリアクションに他のお客さんとアルバイト男子も反応しちゃってるな。

リーザの食は止まらない。

続けてお好み焼きとタコヤキ、イカ焼きも来た。

もぐもぐ、美味しー、もぐもぐ、美味しーを繰り返すリーザは店内を幸せな雰囲気にした。

で、私が食べたフレンチドッグの1コ以外、リーザは一人で全部食べちゃった。

アルバイト男子はそんなリーザと私を見ていたのか

「たくさんご注文を頂いたのでサービスです」

とイカ焼きを一本持って来てくれた。

「いや、そんな、いいのに」

「いえいえ、店長からです」

ふぅ~ん、では遠慮無く頂きまーす。ガブリ。

「リーザ、何が一番美味しかった?」

「う~ん、全部ですが、しいて選ぶのならイカ焼きですかね」

「イカ焼き一本追加してー!」

とアルバイト男子に注文した。


この食事の後、砂浜に寝転がったり、貝を拾ったり、再び海に入ったりして午後も過ごした。

だんだんと砂浜に人が居なくなり出した。

「リーザ、そろそろ旅館に行こうか」

「はい」

砂浜の借りていたビーチパラソルを抜き取り、荷物を手分けして海の家に向かった。

シャワーを順番に借りた。シャワーの水は冷たかった。

例のアルバイト男子がいた。

「今日は世話になったね、ありがとう」

男子アルバイトはペコリと頭を下げた。

「この夏はずーとバイトに入るの?」

彼の顔、腕、足と見えている所はすっかり日焼けしていた。

「はい、お盆までですね」

短期アルバイトかな?

「海の家でのアルバイトって、ナンパとか美味しい出会いってあるの?」

ちょっと下世話だが、若い男子ってそうじゃなきゃ!

「いえいえ、なかなかそう上手く、思ったような出来事はありませんよ」

「そっか、でも色々と頑張ってね」

「はい、私もあなたの彼女さんのような素敵な女性を捕まえてみせます」

私は彼の肩に腕を回した。

「ありがとう、頑張れ」

ちょっとお兄さんぶってみた。

「明日も来るかもしれないから、その時はよろしく。ああ、店長さんにイカ焼きのお礼言ってないや」

「私から伝えておきます」

海の家でバイトする男子って、もっとチャラ男だと思ってたのに、彼、好青年だったな。名前聞いてないや。

リーザと手を繋いで、宿へ歩いて向かった。

10分程度の道のりだが、道路は帰宅に向かう車の渋滞が始まりつつあった。

そんな渋滞の始まりを横目で見つつ、私はこの後、車を運転して帰る必要が無かったので気が楽だったし、なんと言ってもリーザとゆっくり過ごせそうだしな。

夕飯が楽しみ。


予約した宿はそこそこ古くから有る旅館なんだそうだが、最近リフォームと一部建て替えを行ったばかりで、リニューアルオープンしたそうだ。そのオープン記念もあり、特別割引きもあったし、夕飯等の食事がちょっと豪華なんだそうだ。

チェックインを済ませ、部屋を案内して頂いた。

海の見える側の部屋だった。

この旅館を予約する時に『朝日が見える』側か『夕陽が見える』側の部屋の選択が有り、『夕陽』側を選んだ。自ずと海が見える側になるとの目論見だったが。

「リーザ、さっき泳いでいた所はあそこ辺だよ」

窓際に立ち海を見下ろした。

「波のプロセスは知りましたが、実際に見ると興味深いですね。正に寄せては返しが繰り返し繰り返し、尽きる事無く行われています」

観察者リーザ。

「トキヒコさん、明日も海に行きますか?」

「行きましょう。明日は水中メガネを借りて、潜りますかな」

「潜水、ですか?」

「そう、小魚やイソギンチャックなんかが見れるかもね」

リーザわくわくしてくれてる。

あっ、そしてこれが『部屋風呂』か。何かヤッターって気分。


「リーザ、ちょっとこの旅館の中を探検しましょう」

「はい」

私達は旅館のスリッパを履き、部屋を出た。

地下1階までエレベーターで降りた。

リーザはエレベーターには慣れておらず、不安を隠す為か私にくっついて来た。

建物内は空調が効いていたが、私は良い暑さとなった。

地下1階は大浴場がある。

「リーザ、ここは大きなお風呂。男湯女湯それぞれ別々に入ります」

「はい」

「見知らぬ人と一緒に入る事となりますが、リーザ大丈夫?」

うーん、とリーザは少し考え中。

「はい、問題無いと思います。トキヒコさんも一緒ですよね?」

「いや、それだと男湯女湯に別れてる意味が無い。成人男子が女湯に入ると、しょっ引かれます」

「そうでした。建造物侵入罪です。場合によっては公然わいせつ罪も上乗せされてしまいますね」

公然わいせつ罪、、、これで捕まったら格好悪いよなぁ

「今日は泊まる部屋にお風呂が有る特別な部屋なので、大浴場は入っても入らなくてもどっちでもいいよ」

「はい」

まだ大浴場を使っている人は無さそうだ。脱がれたスリッパが一つも無い。

「リーザ、今は誰も居ないみたいだから中、見て来なよ」

「はい」

リーザはのれんをくぐりスリッパを脱ぎ、女湯の奥へ消えて行った。

お、戻って来た、

「トキヒコさん、私このお風呂に入ってみたいです。お風呂、すごく大きいんですよ!」

リーザの反応は素直なストレートな感想が多いが、それが新鮮に感じ私はいつも嬉しい。


続いて受付のフロアが有る1階に上がった。

ここには売店やお土産物売り場が有る。

売り場を見て歩いた。

「ここはね、この地元の特産品やお菓子が売ってる。普通の物もあるよ」

「普通の物、ですか?」

「あー、言い方は悪いかも知れないけれど、比較的どこでも買える物も置いているって事」

お店の人が聞いて、気を悪くされても何だから、少し小声で言った。

「はい」

リーザも汲み取ってくれたみたいだ。

「リーザ、何か興味が湧いた物、欲しい物ある?」

リーザの興味をそそる物は食べ物かな?

「トキヒコさん、これは?」

リーザが手に取った物はキーホルダーだった。意外だ。

「これはキーホルダー。色々な鍵をまとめておく物だよ」

そう言って私の持つキーホルダーを見せた。

「家の鍵、車の鍵、、、こうやって使うんだ」

昔乗っていたバイクと原付のスペアキーや実家の鍵も付けているので、少しジャラジャラしている。

「鍵って小さいから鍵だけを持っていたら落として失くすかもしれないので、紛失防止で使ったりする実用面から、カッコいいデザインや気に入った物を持ち物に付けてファッション面も有るかな。気に入った物をカバンに付けてアクセサリーにする人もいるよ」

「私は鍵を持ってませんので」

「そうだリーザ、帰ったらアパートの鍵を渡すよ。それ用のキーホルダーをここで買う?」

リーザは嬉しそうな顔をした。

「私が選んでいいんですか?」

「どーぞ、どうぞ。でもね『コレ』って言うのが無かったら、別の場所、別のお店で改めて探してもいいよ」

リーザはうーんと唸りながらキーホルダーを選んでいる。真剣に取り組んでるその姿が微笑ましい。

「この機会は何かの縁です。選ぶのであれば、この中から、、、コレです!」

リーザが選んだのは、透明樹脂の中に小さな貝殻とヒトデが収まった物。裏面にはここの地名が印刷されている。

「どうでしょう!」

リーザ得意顔。

「いいと思う、可愛いし。海に来た思い出にもなるね」

思わずリーザの頭をナゼナゼしてしまった。

リーザも嬉しかったのか、体を寄せて来た。

嘘や隠し事をしない(苦手な)エルフの行動は、人目をはばからないので嬉しい反面、外出先だとちょっと困ってしまう時も有る(単に私が恥ずかしいだけだが)。

日本人が持つ習慣や日常における仕草や性質は、エルフらしさを尊重しつつも、おいおい覚えて欲しいなぁ〜と思うトコも有る。

『トイレのドアは閉める。人前でオナラをしない。座る時に股を広げ無い、、、』なんて、どの本にも書いて無いから。

支払いを済ますとリーザはキーホルダーを手に取り、眺め直した。

「うふふ」

すごく嬉しそう。

「トキヒコさん、ありがとうございます。私のキーホルダーなんですね!嬉しいです」

キーホルダー一つでこんなに喜ばれるなんて、こっちが戸惑っちゃうよ。

「リーザが気に入ったのが見つかって良かった」

「はい」

本当にリーザ、嬉しそう。



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