生命が持つ魂の色
アパートの引越しを契機に、奮発してセミダブルベットを購入した。
セミダブルベットの納品と組み立ては購入先の業者の方が行なってくれたが、お店では感じなかったのだが(値段ばかりに気が向いていた)いざ実際に部屋に設置となったら、何だか恥ずかしさが込み上げて来た。
このベットの組み立てを行なっている方達は『こいつらココで寝る(致す)んだ』と想像されているに違いない。
きゃー恥ずかしい。
そんな私の思いとは無関係に、淡々とセミダブルベットは組み上がった。
ダブルベットの購入、、、さすがに大き過ぎる。でも私とリーザはそれぞれ178cmぐらいで、ひとつのベットで一緒に寝るには、そこそこの大きさが要りよう、、、ではセミダブルベットにしちゃいました。
でも実は失敗が多くあった。
先ず当たり前の事だが、ダブルベットでは無く、セミダブルベットだとしても大分大きい。当然部屋は狭くなる。
まあ、ある程度の予想出来る範疇だ。
他にもあった。
マット、シーツ、毛布、掛け布団、、、全てセミダブルベットサイズになる。
そりゃそうだ。普通の布団やベットサイズに比べて土台が大きくなれば、その上の物を合わせたくなる。
ベット本体以外の周辺の物も大きさに合わせた物になろう。
そう、私は舞い上がっていたのだ。認めよう。
2LDKのアパートの一室の殆どのスペース占める事となったセミダブルベット。
やはり『やり部屋』に見えてしまうか。この部屋は誰にも見せたく無い。来客は呼べないな。
でも失敗ばかりでは無い。
おかげで私はリーザとベットの上に一緒にいる時間は、たぶん長い。
そして私達はベットの上で多くを話す。
と言っても、リーザと並んで寝ると必ずと言っていい程、エルフの世界、社会について質問責めをしてしまう。
そして、リーザから得たエルフ社会の情報をこれも必ずと言っていい程、人間社会、自分の周辺とあてはめ比較してしまう。
余り褒められる事では無いのは分かるが、そうなってしまう。
決して人間社会とエルフ社会との優劣を決めるモノでは無いと考えていても、比較して考えてしまう。
そしてどこかで、私たち人間社会の豊かさ、便利さを鼻に掛けている感じに思わずにはいられないのが正直なところだ。今の生活に軍配を挙げてしまう。
しかし私はそんな世界で生まれ、そんな社会で育った。
「美味しいものが食べたい。キレイな服を着たい。いい車に乗りたい、、、」
豊かさと自分に都合のいい利便性を求める生活、環境にどっぷりと浸かっている事は否めない。
それはもはや現代人のDNAに固定されてしまっている。とも考えてしまう。
リーザからもこちらの世界、人間社会の知り得た事、知った情報について聞かれる事は多い。
だがどちらかと言うと、今の実生活に直結する確認事項的な事がほとんどだ。
リーザは、エルフは比べたり批判をしたりしない。
基本的には中立のスタンスを取り、それは正に達観した姿を彷彿している。
実際この世界、人間社会については、私よりリーザの方がよっぽど知識を持っているだろう。
短い時間で本当に多くの事を学び、理解してしまう。
例えば、コンセントを教えた時。
簡単な電気知識(私の持つ知識程度)と使い方、注意点などを教えたが、翌日にはインターネットを振る活用して、コンセントの部品構成からその材料・材質、製造メーカー。電気の発生から発電、送電、受変電、電力会社の株価指数まで、、、ハード面もソフト面もプロフェッショナルも専門家をも越えていると思った知識を有していた。
初めは別の世界、人間社会で見知った珍しさからだったのかも知れないが、リーザは実は根本的なトコで『知る』事に貪欲なのかも知れない。勉強家、知識人とでも置き換えておこう。
しかしそれは、凄いを通り越して、、、恐ろしい、、、とも感じてしまうぐらいに。
今となって思うと、リーザが人間の男性、雄を選ぶ選択肢は無かった。
それは人間社会において、人間の男性には私しか会っていないかったから。
今の資本自由経済社会において、優秀な雄とはズバリ金を多く稼ぐ者、金を多く持つ者だ。
力が強くても、容姿が端麗であっても、それだけでは腹は膨れないし、キレイな服も着れない。
欲しい物を手に入れたいのであれば金が要る。
リーザはこちらの社会情勢、我が国が自由経済社会に属している事も理解しているので、以上のような内容をやんわりと教えた。
そうすると現代社会における私の雄としての値打ちの説明にもなった。なってしまった。
そう、私はこの世界で劣等種です。
でも私がこの自由経済世界において、劣等種である事を理解してもらわないと、後々の生活に問題が発生すると思った。
単純に、欲しい物が買えない、美味しい物が食べられない、、、手に入らない、入れられない事に対する不満が爆発しちゃったら大変だからな。
私の経済事情の現実をそれなりにも分かってもらえたら、そんな不満も少しは抑えられるかなぁ〜との希望。
ホント希望。言い訳を先にしているのでは無くて、、、いや、どんな言い方をしても一緒か。
私は高給取りでもないですし、決して裕福では有りません。
リーザ、こんな私を見捨てないで下さい。願望です。哀願です。
そんな経済が支配する人間の現代社会と比較して、エルフの求める、望む価値・価値観って何だろう?
コレは興味深いし、リーザ(エルフ)の連れ合いとして知らなくてはならない事と思った。
「リーザ、エルフ達の価値観、求めるモノは何が有るの?」
「はい。今現在の私達エルフは進化や発展を望みません。貨幣文化も有りませんし。
しかし皆、気持ちや心、精神、魂と言いましょうか、それらの高みを目指しています。
これが私達が望む、求むる『価値』なのかも知れません。
宗教的と思われるかも知れません。またどうすれば、何を行えばその高みに近付けるのか、
行けるのか、そもそも高みとは何なのか?誰も分かっていません。
ですが、漠然とした中でも皆、救心してます。
日本人ですと『徳を積む』、極楽浄土に行けると諭される宗教的な行為かもですね。
ですが、それに近いかも知れませんね」
とリーザは微笑んだ。
結局の所、物質よりも個々の精神に価値を求める事なのかなぁ、、、う~ん、私では、理解するのは難しいかも。
「そんな私達も少しだけですが、心の高みとは別の価値観を感じるモノが有ります。
オーブ、、、魂ですかね。生命体、命を持つ者達は独特な色を発する瞬間があります。
ユーカナーサリー程の力が有れば自身が見ようと思えばいつでも見れるのかも知れません。
それぞれの者が自身には見えない自分の色。その色を持ちたく思ってます」
リーザは真正面から真っ直ぐに、私の目を見た。
「トキヒコさんが婚姻の申し入れをして下さった時に、見えたんです。トキヒコさんが放った色が。
私は惹かれました。強烈に惹かれました。ああ、この人の側に近付きたい、
一緒に居たいと。この色に包まれたいと」
リーザはそう言うと目を逸らし赤らんだ。
私はリーザの手をぎゅっと握った。
「リーザ好きだ、ずっと一緒に居て下さい」
この言葉に嘘も飾りも無い。何でこんなにもリーザに好きだと言ってしまうんだろう。
だけどリーザの前だと不思議と素直になれるし、嘘は遠い存在となる。
リーザに見つめられた。
そしてリーザから優しく抱きつかれた。
「トキヒコさん、その色です」
私もリーザを優しく抱き返した。
「ねぇリーザ、それどんな色なの?」
リーザが見た私の色って何色?どんな色?そんな話しを聞いちゃうと気になるよなぁ
「トキヒコさん、ナイショです。私だけのモノです」
私達のもう一つの夜が始まる。




